掲載日:2020年10月14日 プロが造るカスタム
取材協力/S-SHOP DESIGN 取材・写真・文/ガスグラフィックス
現在でもビッグスクーター業界で活躍しているショップは、専門のカスタムショップだけではない。ブーム当時からこの業界の活性化に協力してくれていたペイントショップも、ビッグスクーターカルチャーの根底を支えてくれている重要な存在だ。今回紹介するのは、大阪池田市にて今でも精力的に活動しているペイントショップ、S-SHOP Design(エスショップデザイン)が手掛けたマグザムだ。この車輌は、2008年にトランスクーター誌(休刊)が主催したカスタムコンテストでベストオブアートワーク賞を獲得。今ではなかなかお目にかかれない、この唯我独尊のアートワークをじっくりとご覧いただきたい。
外装には赤富士、鶴、桜といった日本をイメージするモチーフのエアブラシペイントを施工。シートに至っては美しい着物を着せたような、バイクとして使用するにはもったいないと感じてしまうほどの豪華な装い。金箔も貼りつつ、さらに外装インナー部は、本物の屏風のようなグラフィックを採用。マグザムを、乗り物としてではなくアート作品として捉えて完成したこのスタイルが、ペイント部門で優勝した当時の理由だと充分に理解できる。
エスショップデザインの代表である齊藤さんは、エアブラシによるペイントワークを得意とするペインターだ。繊細な技術が認められ、某専門学校の講師なども担当しながら、ビッグスクーターやバイク全般、ヘルメット、そしてラジコンなど、幅広くペイントを手掛けている。最近では外装に貼るフィルム技術が進化したことで、複雑なデザインなどはフィルムを貼るラッピングの方が、4輪業界では主流になりつつある。さらに、塗装は手間がかかりコストもかかるため、今ではここまでの作品に挑戦しようというオーナーが減ったことも事実だ。しかし、車両全体は無理だったとしても、どこか一部に、センスあるワンポイントのグラフィックを入れることができたらどうなる? そういうアイデア探求の素材として、ぜひこの和風マグザムを記憶に留めておいてほしい。
赤富士、鶴、松など随所にちりばめられた絵柄はエアブラシによるもの。絵を描くことと塗装技術というこの二つの才能が無いと、こういった表現は絶対に不可能。ちりばめられた金箔も、1枚ずつ丁寧に張り付けられているからこそ、この繊細な雰囲気が表現されている。
リア周りにもアサガオ、五重塔、毬、桜などを塗装。どれかひとつだけでも手間がかかる作業なのに、これだけのモチーフを1台で表現したのは、なんとも贅沢の極みだ。この塗装作業にかかった労力はどれほどのものか、想像してほしい。
この当時は、今主流となっているFRPシートという素材は生まれてなかった。そのため、ペイントではなくこうして着物を使って表現したことは、この時代ならではのアイデアかもしれない。
屏風をイメージしたインナー部分。何気ないデザインに見えるが、見よう見まねでできるほど容易いものではない。技術だけではなく、塗料の性質も理解して初めて完成するものだ。なお、ステップボードに至るまで、和風表現は徹底されている。
美しいメッキが印象的なフロントホイールとフロントサスのボトムケース。この深みあるメッキ感はRIZEによるもの。外装の雰囲気を損なわないようにするためには、メッキのクオリティも重要だった。
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