掲載日:2023年03月16日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/野岸“ねぎ”泰之
KYMCO AROMA150
台湾のバイク普及率は人口100人当たり65台以上になるといい、世界一のバイク大国と言っても過言ではない。そんな台湾で新車販売台数19年連続トップという実績を持つのがキムコだ。台湾でナンバーワンなのはもちろん、ヨーロッパ各国をはじめ世界でも高い評価を得ており、今ではグローバルなブランドとして日本でもおなじみとなっている。そんなキムコが新たに発売したのが、今回紹介するアローマ150だ。
外観はところどころにメッキパーツをあしらったエレガントな雰囲気だ。パッと見はクラシカルなのだが、丸みを帯びたフロントシェイプとシャープなラインで構成されたリア部分がバランスよくマッチしており、懐かしさと現代的なイメージが融合した、まさにレトロモダンと呼ぶにふさわしいスタイルとなっている。
このアローマ150はイタリアで「LIKE」の名ですでに販売されているモデルを、デザインはそのままにフレーム等を新設計として主にアジア市場に向けて新たに発売したもの。最大の特徴はそのシート高の低さで、数値は760mmだ。これはキムコジャパンによれば2022年12月現在の150ccクラススクーターの中では最も低いものとのこと(国内メーカーおよび正規輸入車の現行モデル)。またシート高が低いだけでなく、車両重量も128kgと軽めで全幅が675mmと、非常にスリムで軽いスペックとなっている。ちなみにこのクラスの人気モデルであるホンダのPCX160はシート高764mmで車両重量は132kg、全幅は740mmという数値なので、それに比べてもアローマ150の軽量コンパクトさがわかってもらえるはずだ。
レトロな外観と扱いやすいボディに加え、LEDの灯火類や多機能メーター、シガーソケットタイプのアクセサリー電源など、現代的なアイテムも備え、高速道路にも乗れるとなれば、かなり便利な存在のマシンであることは間違いないだろう。
アローマ150の実車を目の前にすると、スペックから受ける印象よりもかなり小さい。タイヤサイズが前後12インチということもあり、125ccクラスと言われても納得してしまうサイズだ。スリムで車重も軽いため押し引きや取り回しも当然楽なので、マンションなど狭めの駐輪場でも気をつかわずに済みそうだ。
跨ると、やはり760mmというシート高は低いなと実感する。身長170cmで短足気味の筆者だと両足べったりとはいかないが、しっかりと足が着くし、車体が軽いため股の間でマシンを転がすように左右に揺すっても不安感は全くない。というより、いつでもきちんと足が着けるという安心感が大きい。
走りはかなり軽快だ。ゼロからのスタートでは、加速感はそれほど強烈ではなく125ccクラスと同じぐらいながら、スピードが上がるにつれてトルク感が増し、排気量から来る余裕が感じられる。特にそれがわかりやすいのが登り坂だ。電動アシスト自転車ではちょっときついかな、と思うぐらいの坂でも、グイグイと力強く走ってくれるのは、さすが150ccクラスだけのことはある。サスペンションのバタつきや外装パーツの噛み合わせの甘さからくるであろうビビり音が少々気にはなるが、12インチタイヤと軽い車体、それに低いシートのおかげで混雑した都市部でスイスイとストレスなく走れるのはとても気持ちがいい。
その反面、軽さやタイヤの小ささが高速道路ではウイークポイントにもなり得る。パワーに関しては80km/h巡航は普通にこなせるので、都市高速や普通の高速道路でも走行車線を流す分には問題ない。ただ、路面が少しうねっていたり、風が強いなどの際には、車体を安定させるのに気をつかうことは確かだ。シート高が低いため大型トラックと並ぶと圧迫感もある。慣れればそれほど気にならないかもしれないし危険というほどではないが、ホンダのPCX160などの走りを想像していると、ギャップを感じる可能性はありそうだ。
そうはいってもやはりいざという時に高速に乗れる、というのは原付2種にはない大きなメリット。ふだんの日常では125ccプラスアルファの機動性を享受しつつ、たまには高速でワープ、なんて使い方ができるのが、このアローマ150の魅力だろう。150ccクラスのスクーターが欲しかったが体格に自信がなかったり、今風のデザインには食指が動かなかった、なんてライダーにもお勧めできるマシンだ。
曲線的なフロント部分はメッキパーツがいいアクセントになっている。ヘッドライト、ウインカーともにLEDを採用。写真はハイビーム点灯時の様子だ。
メーターパネルはアナログの速度計と液晶表示を組み合わせている。デジタル部分は燃料計や電圧計、時計や外気温などが表示できる多機能タイプだ。
左側のハンドルスイッチ。ライトの上下切り替えボタンにはパッシング機能もプラスされている。
右側のハンドルスイッチはスターターボタンのみとシンプル。高速に乗れるモデルなのでハザードが欲しいところだ。グリップのパターンはレトロかつスタイリッシュなイメージ。
イグニッションスイッチにはイタズラ防止のシャッターが装備されている。キー操作でシートのロックを解除することが可能だ。
レッグシールド裏側には開口部の大きなグローブボックスを備えている。ハンドルロックと連動してこちらもロックされる仕組みだ。
給油口は足元中央で、カバーを手で開くと内部には鍵付きのキャップが備えられている。
シートは広く前後ともにクッション性は十分だ。滑り止めの溝加工やパイピングが施されるなど、凝った作りとなっている。タンデムグリップも握りやすい形状だ。
シート下のラゲッジスペースは帽体の大きなヘルメットは入らないが容量はけっこうある。側壁には12Vのシガーソケット電源、前側ヒンジ脇にはピンタイプのヘルメットホルダーを備える。
試乗車のラゲッジスペースに入っていた車載工具。10/14mmのスパナとドライバー、プラグレンチという内容だ。
シート前端には格納式のフックを装備。耐荷重は最大3kgまでとなっている。
フロアボードはほぼフラットで乗り降りしやすく、前側に足を出せるスペースもある。センターの微妙な凸部に足の親指側を押し付けて締めると、走りの安定感が若干増す感じだ。
引き出し式のタンデムステップは剛性感が高く、滑り止めも刻まれており安心感がある。
サイドスタンドも標準装備となっている。ちなみにサイドスタンドを出してもエンジンは止まらない仕様だ。
リアサスはスタンダードなツインショックタイプで、プリロード調整が可能となっている。
フロントのタイヤサイズは110/70-12で、ABS機能付きのディスクブレーキを装備している。
リアのタイヤサイズは130/70-12で、前後ともチェンシン製のタイヤを履く。ちなみにリアブレーキにもABS機能がついている。
フロントに比べるとシャープでモダンな雰囲気となっているリア周り。灯火類はすべてLEDで十分な被視認性を確保している。
テスターは身長170cmで足は短め。アローマ150のシート高は760mmでこのクラス一番の低さだ。片足ならべったり、両足でも母指球までしっかりと接地するし、車体も軽くスリムなので不安はない。
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