【ヤマハNMAX155 試乗記】第2世代で改めて実感した、スポーツライディングに対するヤマハのこだわり

掲載日:2023年01月05日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文/中村 友彦 写真/富樫 秀明

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YAMAHA NMAX155

近年になって激化している
ホンダとヤマハの戦い

1948年に創業したホンダと1955年から2輪事業への参入を開始したヤマハは、お互いを高めあう好敵手として、古くからいろいろなジャンルで熾烈な戦いを繰り広げて来た。その原点は1950年代後半の浅間火山レースで、敵対視がピークに到達したのは1979~1983年に巻き起こったHY戦争。もっとも昨今では、両社が突出した立場で争うことはほとんど無くなったのだけれど、そんな中で久しぶりに“ホンダvsヤマハ”の気配を感じるのが、センタートンネル構造&大径ホイールを特徴とする、125/150~160ccクラスのちょっと高級なスクーターだ。

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この分野の先駆車は2010/2012年にホンダが世に送り出したPCX(125cc)/PCX150で、2台の兄弟車は2014年に第2世代に進化。一方で2010年代前半のヤマハは、スクーターの定番と言うべきフラットフロアのシグナスX(125cc)やマジェスティS(150cc)などが好セールスを記録していたものの、2015年からはPCXに真っ向勝負を挑むセンタートンネル構造&大径ホイールの高級スクーターとして、NMAXを市場に投入した(日本デビューは、125cc:2016年、155cc:2017年)。そんなNMAXに驚異を感じたのだろうか、ホンダは2018年、さらには2021年にPCXの大幅刷新を敢行し、対するヤマハは、2020年から第2世代のNMAXの展開を開始している(日本デビューは、125cc:2021年、155cc:2022年)。

ヤマハ NMAX155 特徴

基礎体力を大幅に高めながら
多種多様な新機軸を導入

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第2世代のNMAX155の新機軸として、ヤマハがプレスリリースで強調しているのは、①スマホと接続してさまざまな機能が楽しめるYコネクト、②燃焼効率を高めて平成32年排出ガス規制に適合したBLUE COREエンジン、③スムーズな始動を実現するスマートモータージェネレーター、④低燃費に貢献するストップ&スタートシステムなど。それらに加えて、表示面積を拡大した液晶メーターや容量を6.6→7.1L拡大したガソリンタンク、キーレスエントリーシステム、リアタイヤの滑りを抑制するトラクションコントロールも、第2世代の特徴だ。

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もちろんそういった内容を見たら、PCXへの対抗意識を感じる人は少なくないだろう。何と言ってもPCXは、初代の時点で③④、2018年型からキーレスエントリーシステムを導入し、2014年型以降は8/8.1ℓの燃料タンク容量を公表しているのだから。とはいえ、ダブルクレードルタイプのフレームや4バルブの動弁系、リアのディスクブレーキに関しては、PCXはNMAXを追いかける形で採用したのである。言ってみれば近年のホンダとヤマハは、ライバルの美点を積極的に取り入れているのだ。

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なお第2世代のNMAXは、もともと優れていた運動性能に磨きをかけるべく、車体とパワーユニットの改善も行っている。まずフレームや前後ホイールは最新技術を投入した新作で、前後ショックやブレーキも見直しを実施。そしてパワーユニットに関しては、厳しい排出ガス規制に対応しながらパフォーマンスを落とさないため、シリンダーヘッドやピストンなどの設計を一新している。

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ヤマハ NMAX155 試乗インプレッション

ライバルのホンダPCXとは異なり
“操る楽しさ”を重視した造り込み

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ここまでに記したように、NMAXはPCXを多分に意識して生まれたモデルである。では第2世代のNMAX155が、最新のPCX160(排気量の数値が150→160に変更されたのは2021年型から)を凌駕する資質を備えているのかと言うと、それはなかなか微妙なところだと思う。

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もっとも初代と比べれば、第2世代のNMAX155はきっちり進化しているのだ。場面によって硬さや唐突さを感じた初代とは異なり、第2世代はエンジンも車体も滑らかで優しい。でも万能性や利便性では、すでに3度のモデルチェンジを受けたPCX160に分があるような……?

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ただしだからと言って、NMAX155はPCX160に劣るモデルではない。と言うより僕としては、不特定多数のライダーにオススメするならPCXなのだが、スポーツライディング好きの視点では、運動性能に磨きをかけた第2世代のNMAX155にかなりの魅力を感じているのだ。

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今回の試乗で僕が最も感心したのは、乗り手の入力に対するシャシーのしなやかでわかりやすい反応である。この点に関しては初代も好感触だったのだけれど、第2世代は車体から伝わる情報の鮮度が明らかに上がっている。それに加えて、フロントフォークのしっかり感やエンジンの高回転域の伸びのよさも、初代とは一線を画する要素。いずれにしても第2世代のNMAX155を体感した僕は、ホンダとは方向性が異なる、操る楽しさに重きを置いたヤマハの姿勢に、改めて感心することとなった。

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なお歴代PCXとNMAXを語るうえでは、維持費が安く済む125ccにするか、高速道路を走れる150~160ccにするかが、なかなか悩ましい要素になる。第2世代のNMAXの価格・最高出力・メーター読みの最高速は、125:36万5000円・12ps・約110km/h、155:40万7000円/15ps/約120km/hで、この数値から考えると、何となく125ccのほうがお得のような気がしないでもない。とはいえ今現在の僕は、気軽に遠方に出かけられる、行動範囲が広げやすい155cのほうが、このモデルの本質が味わえる機会は多いのではないか、と感じているのだった。

ヤマハ NMAX155 詳細写真

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初代のイメージを継承しつつも、外装類はすべて新作で、スクリーンは大型化。LEDヘッドライトは2眼6灯式で、ロービームでは上段4灯、ハイビームではすべてが点灯する。

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ハンドルはスクーターの定番となるカバードタイプ。右側スイッチボックスには、スタート&ストップシステム用のスイッチが備わる。グリップラバーはYZF-R1/6と同様のデザイン。

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液晶メーターは丸→変形角型に変更。専用アプリのYコネクトをインストールしたスマホとペアリングすれば、SNS/E-Mailの着信を上部のインジケーターに表示できる。スマホ側では、エンジン回転数やスロットル開度、車両の最終駐車位置情報などを見ることが可能。

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イグニッションはキーレスエントリー式。メインスイッチの下部にはシートとフューエルリッドのロック解除ボタンが備わる。

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初代では左側のみだったフロントトランクは、新型では左右に設置。ペットボトルの収納を意識した左側は開放型だが、右側はリッドを装備。

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左側フロントトランクに備わる電源は、昔ながらの12Vシガーソケット。ちなみにPCXの電源はUSB Type-Cである。

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765mmのシート高は、現代の125cc/150~160ccスクーターではやや低い部類に入るものの、車重が決して軽くないうえに、構造的に足が左右に開くので、身長が170cm以下のライダーは足つき性に不満を感じそう。

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シート下のトランクスペース容量は23ℓで、最大積載量は5kg。ライバルのPCXが30ℓ/10kgという事実を考えると、ちょっと物足りなさを感じるけれど、NMAXの数値はスポーツ性を考慮した結果なのかもしれない。

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センタートンネル左右のフットスペースは自由度が高い構成で、さまざまなライディングポジションに対応することが可能。

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年を経るごとに厳しくなる排出ガス規制への対応を念頭に置いて、可変バルブ機構のVVAを備えるBLUE COREエンジンはシリンダーヘッドやピストンなどを刷新。圧縮比は10.5→11.6:1に高められた。

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大幅な軽量化を果たした前後13インチのホイールは、初代と比較するとスポーク部がかなり細くなっている。フロントフォークはφ30mm正立式。

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ブレーキは前後ともφ230mmディスク+片押し式1ピストンキャリパーで、ABSは2チャンネル式。純正指定タイヤは初代と同じダンロップ・スクートスマート。

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リアサスはオーソドックスなツインショック。第2世代ではバネレートを見直すと同時に、工具不要で調整できる2段階のプリロードアジャスターを追加。

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