掲載日:2020年04月03日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/野岸“ねぎ”泰之
LAMBRETTA V200 Special
ランブレッタは1947年にイタリアで誕生したスクーターブランドで、1950年代にはベスパとともに人気を博し、イギリスで流行したモッズカルチャーの象徴となるなど、長年にわたりファッションに敏感な若者の支持を得てきた。90年代に生産を終了したものの、2017年にブランドが再興された。この新生ランブレッタのラインナップはV50 Special、V125 Special、V200 Specialという、同じボディとフレームを持ちながら排気量が異なる3種類。それぞれにフェンダーが固定式のFixと前輪に合わせて可動するFlexというバージョンが用意されている。今回は高速道路に乗れる、軽2輪カテゴリーのV200 specialのFlexモデルを紹介しよう。
ランブレッタV200 Specialのスタイリングは実に優雅だ。テールの長い伝統のフォルムを活かしながら、LEDの角型ヘッドライトや灯火類、薄型シートなどを取り入れ、トラディショナルなデザインと現代的なスタイルの融合を図っている。そのたたずまいはどこか懐かしさを感じさせつつも洗練されていて美しく、新生ランブレッタとしてのオリジナリティを十分に感じさせてくれるものだ。
スタイリングを担当したのはKTMやハスクバーナをはじめ、Atomicのスキー板などのデザインも手掛けるオーストリアのKISKA Designとのこと。ランブレッタ専用のチームを組んで、高い実用性と美しさの両立を目指したという。その結果、シート下のラゲッジスペースのほか、ロックのできるグローブボックスやラゲッジフックなど、デザイン性を損ねることなく収納力も充実させることに成功している。さらにはアナログとLCDを組み合わせたメーターパネルの採用や、USBソケットを装備するなど、時代に合わせた利便性もしっかりと確保している。
ボディの特徴として挙げられるのは、スチールモノコック形式のフレームを採用していることだ。これはベスパなども含め、イタリアン・スクーターでは伝統のフレームで、一般的なパイプフレームに比べて高い剛性を誇るもの。新生ランブレッタでは航空材の技術を駆使し、超薄型の鋼板を効率よく配置するなど現代のテクノロジーを注ぎ込むことで、軽量化と剛性感のアップを両立させている。
ランブレッタV200 Specialのシート高は770mm。これはヤマハのNMAX155の765mmとわずか5mm、ホンダPCX150の764mmと比べても6mmの差だ。実際に跨ってみると幅広シートのためか、数値よりは高く感じるものの、信号待ちなどではシート前端にお尻を持ってくれば、このクラスとしてはごく標準的な足つきで、原付2種クラスと変わらないんだな、ということがわかる。取り回しに関しても同様で、ボディ後部がボリューミーなことからどうしても大きく感じてしまうが、実際の数値はNMAXやPCXよりもむしろ小さいのである。
ライディングポジションは背筋をすっと伸ばして乗る感じでアイポイントが高く、遠くを見通しやすい。シートは見た目が薄いので期待はしていなかったが、クッションは硬すぎず柔らかすぎずで、予想外に座り心地がいいものだった。
加速感は国産の通勤快速系スクーターのようにグイッと出る味付けではなく、回転数アップにともなってマイルドかつ素直に加速していくタイプだ。実は200という数字が車名に入っているものの実際の排気量は168.9ccで、150cc程度のマシンに比べてそれほどアドバンテージがあるわけではなく、むしろ最高出力は低いぐらいなのだ。しかし40~60km/h付近の街中でよく使う速度域においてはとても力強さを感じる走りが可能で、実用上は何の問題もない。それを踏まえてあえて言えば、信号ダッシュで先を争うマシンを相手にせず、余裕をもって優雅に走るという乗り方が似合っていると思う。
そんなV200 Specialは、郊外など流れの速い道路ではまた違った一面を見せてくれる。スピードが乗った状態の安定感がすごいのだ。直線はもちろん、中高速コーナーに突っ込んで行った際、車体がよじれたり不安定な挙動を示すことはなく、カッチリと狙ったラインをトレースしてくれる。少し大げさにいえば、スクーターに乗っているというより、スポーツバイクで攻めている感じに近い(バンク角は浅いので実際に攻められるわけではなく、あくまでイメージ)。これはやはりスチールモノコックフレームの高い剛性がもたらした効用だろう。
さらに、リアのサスペンションがほかの排気量が1本なのに対し、V200 Specialのみツインタイプとなっているのも要因かもしれない。路面のギャップを乗り越える際に、もちろんスポーツバイクに比べれば突き上げはあるものの、「ガタガタ」といったものではなく「ストトン」と軽くいなすような軽いショックが伝わってくるイメージだ。前後のサスはコーナーリング時にもよく粘ってくれるので、エレガントな外見なのに中身はなかなかスポーティだな、という印象を持った。
高速道路でも安定性は際立っていて、横風の強い状況でもラインを乱すことなく、路面に張り付くように走ってくれたのは心強かった。ただそれほどパワーに余裕がないのでトラックなどをガンガン抜いていく、というアグレッシブな走りは難しい。100km/h巡航も出来なくはないが、80~90km/hで優雅にクルージングを楽しむほうが、ライダーにもマシンにも優しいはずだ。何よりも「高速に乗れる」という排気量を持っていること自体が、V200 Special最大のアドバンテージといえる。