ヤマハ TMAX530(2017)

TMAX530 DX/SX
YAMAHA

ヤマハ TMAX530(2017) – 熟成の手を緩めることなくこのカテゴリーをけん引

掲載日:2017年05月16日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/田宮 徹

ヤマハ TMAX530(2017) 試乗インプレッション

よりスムーズな加速感と
洗練されたコーナリング性能

ヤマハ TMAX530(2017)の試乗インプレッション

これまで、スポーツ性を主題に開発が続けられてきたTMAX。この2017年型でコミューターとしての機能性も向上したが、走りを優先させるその姿勢に揺らぎはない。おかげでシートポジションは高く、身長167cmの筆者がバックレストに腰をつけたまま足を出すと、片足がようやく接地する程度。シート最前部に座っても、やじろべえ状態である。

欧州市場をメインターゲットとする機種ということもあり、大柄なライダーが乗ることを想定したようなコクピット設計。バックレストに腰をつけて足を前に投げ出すと、筆者の場合は完全に膝が伸びる。膝を軽く曲げ、フロアボードに足をつくと、大きなフロアトンネルがふくらはぎの内側に不快感のない程度に当たり、ホールド感を得られる。

ヤマハ TMAX530(2017)の試乗インプレッション

排気音は、ややこもった音質で力強い。またがるまでは大柄な印象だったが、ハンドル越しのフロントまわりは意外とスリムで、それほど大きさは感じられない。さらに、走り出すと印象はがらりと変わる。車重そのものも、今回試乗したDXでも先代より4kg軽いが、新作フレームによるエンジン搭載位置の見直しや、リアまわりを中心としたバネ下重量の低減は、その数値以上に効果を発揮している。軽快さは先代をさらに上回り、おかげで走っているときに極端な大きさや重さを感じることはない。

電子制御スロットルを採用したパワーユニットは、滑らかなフィーリングがプラスされたが、Sモードでガバッとスロットルを開けると十分すぎるほど元気よく加速。頼もしさは継承されている。TモードとSモードでは、俊敏性に大きな違いがあり、TからSに変更したことを忘れてスロットルを開けると、ちょっと驚かされることもある。ただし、どちらの状態でもまるで問題なく常用できる味つけだ。

ヤマハ TMAX530(2017)の試乗インプレッション

フロントフォークそのものは2015年型から継承されるが、足まわりも刷新。リアアームやリアショックなどの足まわりは新作され、前後タイヤの軽量化も施されている。これまでもスポーティで上質な動きが感じられたが、2017年型はさらに上。良い意味でスクーターらしくなく、スポーツバイクのように旋回できる。首都高速などでギャップを通過しても、あるいはハードにブレーキングしても、サスペンションがしっかり仕事をしてくれるので、安心してコントロールできる。

ブレーキは、前後ともコントローラブル。両仕様に標準装備されているアンチロック機構は、リア側の介入がやや多めに感じられたが、これは乗り方やスピードレンジや走るフィールドによっても、印象が変わる部分だろう。なんにせよ、頼れる足まわりとブレーキのおかげもあって、スポーティに駆けるのが楽しく、日常の移動にも安心して使える。

ヤマハ TMAX530(2017)の試乗インプレッション

安心といえば、この型でトラクションコントロールが新採用されたことも見逃せない。残念ながらというべきか、今回はウェット走行ができなかったので、未舗装の路面で作動を試してみたが、その制御は非常に繊細で、介入による不具合は感じられなかった。路面状況が刻々と変わるツーリング時などに、大きな安心につながるアイテムだ。

DXの場合、スクリーンは電動調整式。一番上にセットすると、前側からの走行風はかなりカットされる。ただしこの状態で筆者の座高だと、負圧による気流の乱れがカラダに感じられ、その点では快適ではなかった。せっかく無段階で調整できるのだから、闇雲に一番上側とか下側とかで使うのではなく、自分の背丈と優先する快適性を考慮して、自分なりのベストセッティングを見つけることが大切である。

発表されている最高出力では、先代よりも2馬力ダウンとなったが、Sモードでスロットルを開けたときの加速感は、その差をまったく感じさせず、むしろスムーズさが増したことで、シュイーンと加速していく気持ちよさがある。コーナリング性能はさらに磨かれ、ワインディングでは車体のどこかを擦るようなこともほとんどないまま、スロットルとブレーキの操作に集中したスポーティなライディングを楽しませてくれる。

まるでライバル車とし烈な競争を続けるスーパースポーツのように、大ブームが去ってからも改良と熟成を繰り返してきたTMAX。芯は変えず、時代に合わせて進化した2017年型のDXは、機能性も大幅に向上されたが、やっぱりスポーツバイクだった。

TMAX530(2017)の詳細写真は次のページにて

こちらの記事もおすすめです

この記事に関連するキーワード

新着記事

タグで検索