アディバ ADトレ
アディバ ADトレ

アディバ ADトレ – 開閉式ルーフ機構で知られるイタリアンブランドの一台

掲載日:2014年03月05日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/田宮 徹

アディバ ADトレの試乗インプレッション

アディバ ADトレの画像

二輪的でもあり新感覚でもある
独特なハンドリングを楽しみたい

排気量は約200ccだが、開閉式ルーフや大型リアトランクをはじめとする豪華装備に加えフロント2ホイール機構を備えた車体は、かなりの重量がある。エンジンが停止した状態での取り回しは、少し慎重に行いたい。またがると、シートは高さ740mmの設定ながら、幅がかなり広いため、前方に座った状態であっても、身長167cmの筆者だと足の裏が1/3ほど接地している感じ。また、フロントサスペンションのロック機構は備えていないため、停車時には基本的に、足を着く必要がある。

ただし、3点支持による安定感から、慣れてくるとかなりの高確率で、足を着かずに止まっていることができた。もちろん、その状態であってもライダーが少し動けば車体が傾いてしまうため注意が必要だが、バランス感覚に自信のあるライダーは、ぜひ挑戦してもらいたい。

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フロント機構がかなり大きいため、フロアボード前方には足を投げ出せるようなスペースはない。しかし、ライダー側のシートは前後長があるため、タンデムライダーがいない状態でシート後方に座れば、まったく窮屈な印象はない。一方でタンデム時も、多少はライダーの座る位置が限定されるが、とは言え200ccクラスとして考えればかなり快適である。タンデムシートも、バックレストとサイドサポートのおかげで居住性は良い。ルーフを使用した状態では、タンデムライダーとルーフが干渉しやすいが、ルーフを折りたたんでおけばとにかく快適に乗れる。

ちなみにライダー側は、筆者の身長であればルーフから受ける圧迫感は皆無である。またハンドルは、やや幅が狭く、シートに対してはやや近め。その前方には、非常に大きなウインドシールドがあり、サイドにラウンドしながらライダーを守る。防風性に優れる一方で、視界の歪みが気になるところだが、かなりうまく設計されていて、実際には視界に対する不快感は皆無である。

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ハンドリングは、ルーフの有無によっても少し変わるが、ルーフを装着した状態で言えば、フロントが2輪化されていることによるどっしり感と、ルーフがあることによる高い重心位置、そして独自のウイッシュボーンがもたらす影響により、これまで体験した3輪スクーターとは異なる、やや不思議な印象がある。

浅いバンク角では、フロントまわりに重さを感じる一方で、実際に車体を寝かせるのは拍子抜けするほど軽快。低速時にはとくに、ややハンドル舵角が多めの印象がある。またルーフなどによって重心が高めになっている影響から、寝た状態を保とうとする力も強めではある。とはいえ、一般的な二輪スクーターと、あまり変わらないフィーリングの部分も多々あり、慣れてしまえばまったく問題なく楽しめる。

ただし、この機種でそこまでのことをするライダーは少ないだろうが、かなり深くまで寝かせてコーナーを駆け抜けようとするときは、少し注意が必要。あるバンク角を境に、車体がかなり独特な動きをして、ライダーが意図するような倒し込みができないシーンがあるのだ。このあたりは、オーナーとなってからじっくりと慣れてもらいたい。

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また、アディバのフロント2ホイール機構が持つアドバンテージのひとつに、フロントブレーキを掛けたままコーナーに進入しても、ライバルメーカーの3輪スクーターのような立ちの強さがでない点が挙げられる。ハンドリングにはクセがあるが、この点では普通の二輪スクーターと同じように操っていける。もちろん、フロントタイヤの接地面積が倍になったことから、フロントブレーキはかなり強く掛けられる。ウェットなどの滑りやすい路面でも、安心感は増す。

エンジンは、このクラスとしてはパワフルだが、さすがに車体がかなり重いことから、瞬発力という点ではそれほどでもない。とくに出足はマイルドだ。ただし、市街地や高速道路を普通に走る限り、とくにダルさがあるわけでもない。中速域では伸びも感じられ、シティコミューターとしては十分なレベルにある。

アディバ ADトレの画像

開閉式ルーフと大型のウインドシールドにより、ADシリーズは全天候型ともいうべき快適性を備えている。今回の試乗は気温5度の真冬に行ったが、この状況ですら夏用グローブが使えるほど、防風性も高い。複数個ある広大な収納スペースは、日常の利便性を高めている。

この特徴に、独自のフロント2ホイール機構を組み合わせることで、ADトレには走る楽しさもプラスされている。同じアディバの屋根付き二輪スクーターシリーズと比較すれば、クセは強い。ただし、このクセを「楽しい!」と感じられれば、いつものシティランを退屈な移動という位置づけから変えることができる。これは、大きな魅力のひとつだろう。そしてもちろん、フロント2輪による安全性の向上、何より目立ち度アップというのも、忘れてはならないアピールポイントである。

アディバ ADトレの詳細写真は次ページにて

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