クリーブランドサイクルワークス ヘイスト250
クリーブランドサイクルワークス ヘイスト250

クリーブランドサイクルワークス ヘイスト250 – 250ccクラスの小さな本格的ボバー

掲載日:2012年02月16日 試乗インプレ・レビュー    

クリーブランドサイクルワークス ヘイスト250の試乗インプレッション

クリーブランドサイクルワークス ヘイスト250の画像

リジッドなのに走りを楽しめる
完成度の高いシャシー

エンジン始動はセルモーターで行うため難しいところはないが、空冷 OHV 229cc の心臓が目を醒ますまでには儀式が必要だ。燃料コックを開き、チョークを引き、スターターボタンを押し込む。全てがオートマティックな、インジェクション車に慣れた身には少々面倒に感じるかもしれないが、少し前までのバイクは皆こうだった。そんなことを考えながら、そのエンジン始動という行為自体を楽しんでいる自分に気付く。

キャブレターが強制開閉ということもあるのだろうが、エンジンが冷えている間は不用意なスロットルの開閉ではすぐにストールしてしまう。環境問題対策として2次エア導入システムを採用しているのだが、あわせて燃調も薄めにセッティングされているように感じられる。このエンジンは、本来もっと多くの燃料を要求するのかもしれない。試乗を行ったのは厳寒期、空冷エンジンということもあり、エンジンの温度が安定するまでには少々時間がかかったが、エンジンがまともにレスポンスするようになるのを待って走り出す。

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容量が十分に確保されたマフラーのおかげで、排気音はジェントル。同クラスのマシンと比べても静かな部類に入るだろう、耳に優しいのは有り難い。ただし、音質はパルス感が弱く、単気筒らしい歯切れの良い音は期待しないで欲しい。音と同様に鼓動感も希薄なのだが、これは排気量を考えればやむを得ないことだ。また、振動も見かけのワイルドさから想像されるほど大きくはない。これは良い意味で拍子抜けした。走行時はハンドルへの微振動が継続してあるので、長時間の走行はバイクを降りた後も手に痺れが残るかもしれない。

パワーは正直なところ物足りない、なにしろ最高出力は14馬力ほどしかないのだ。気持ちよく流せるのは 60~70km/h といった速度域。高速道路でも 80~90km/h といったところだろう。そこから上は、振動が極端に増えたりはしないものの、メカノイズが凄まじくて回す気になれない。スペック上の最高速度は 110km/h とのことで、一応 100km/h は確認したが、あまり気持ちの良いものではなかった。また、シフトフィーリングが少々気になる。操作時の感触がソフトで、ダイレクトな感触に欠けるのだ。フォーワードコントロールを採用するため、シフトロッドが長く剛性を確保しにくいのは解るが、もう少し節度が欲しいと感じた。と、ここまでエンジンへの不満を並べ立ててしまったが、それには理由がある。実はこのヘイスト、シャシーの出来がかなり素晴らしい。そのせいで、車体以外の部分が気になってしまったのだ。

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正直なところ、走り出す前は一体どんなバイクなのかと警戒していた。見た目はカスタムメイドのチョッパー、しかもリアがリジッドである。あまりに安い価格も、どんな安普請なのかと猜疑心を煽っていた。だが、乗ってびっくりである。まず、きちんとまっすぐ走る。バカにしているわけではない、これは意外と大切なことで、バイクの走りの基本だ。ホイールベースが長いから、直進安定性が良好なのは当然と考えるかもしれないが、しっかりとディメンジョンが考えられていなければ、こう気持ちよくは走らない。ブレーキもことのほかしっかりしている。フロントの制動力は甘いが、その分リアがしっかりと効く。クルーザーのブレーキの定石を押さえたバランスだ。

そして気に入ったのがコーナリングである。ここまでキャスターが寝ているバイクは、ハンドリングになんらかのクセが出てもおかしくはない。だが、ヘイストはクルーザースタイルのバイクとしては、異例なほどにハンドリングが自然でニュートラルなのだ。交差点などでの小さな旋回も、高速道路の緩やかなカーブも、違和感なく曲がってしまう。キャスターを寝かせたバイクは、フロントタイヤが車体の動きと異なるリズムで寝たがったり、長いフロントフォークの先でタイヤがゴロンと転がっているような感じを受けるマシンが多々ある。だが、ヘイストからはそういった違和感はほとんど感じられない。コーナリングが楽しいもので、走っていくうちに段々とコーナーでのペースが上がっていった。そういうバイクではないのにも関わらず、もう少し攻めてみようかなと思わせるものがあるのだ。だが、そこで、リアがリジッドであることを思い出して自重した。なにしろ、リアタイヤが滑った場合の危険性が違う。

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そう、ヘイストについて語るのならば、リアのリジッド構造に触れないわけにはいかない。サスペンションを持たないため、当然乗り心地は固い。サドル形状のシートにはショックユニットが設けられているが、だからといって快適な座り心地とはいえない。シート自体、薄くて固いということもある。長時間ライディングするのなら、その後の尻の痛みを覚悟しなければならないだろう。そういったデメリットもありつつも、ヘイストのリジッドフレームはかなり面白い。聞けばヘイストを生み出したクリーブランドサイクルワークスは、長年ハーレー用のパーツ生産を行ってきたメーカーで、リプレイス用フレームでもかなりの実績を持っているとのこと。なるほど納得だ、リジッドフレームとはどういったもので、どうあるべきかが解っているからこそ、こういうシャシーを構築できたのだろう。

ヘイストはラジカルなルックスや、驚異的な価格ばかりがクローズアップされているが、実は乗って楽しいバイクであった。ストックのまま乗っても十分に注目を集められる存在だし、カスタムのベースとしても面白いだろう。自分ならば、ヘイストをベースにダートトラッカーを作ってみたい。素性の良いフレームは、土の上でもバランスが良さそうだし、アンダーパワーも扱い易さに変わるはずだ。そんなことを考えていると、どんどん楽しくなってくる。乗り手を楽しくさせる、それこそがヘイストというバイクの本質なのかもしれない。

クリーブランドサイクルワークス ヘイスト250の詳細写真は次ページにて

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