ハーレーダビッドソン FLSTSB ソフテイル・クロースボーンズ
ハーレーダビッドソン FLSTSB ソフテイル・クロースボーンズ

ハーレーダビッドソン FLSTSB ソフテイル・クロースボーンズ – 現代の技術で蘇る、古き良き姿

掲載日:2008年12月11日 試乗インプレ・レビュー    

構成/バイクブロス・マガジンズ編集部

現代の技術で蘇る、古き良き姿
唯一のスプリンガーフォークモデル

FLSTSB “ソフテイル・クロスボーンズ”は2008年2月に登場したまだ新しいモデルだ。スプリンガーフォークを採用したモデルは過去にも複数あったが、どれもヴィンテージテイストを最新のエンジンで演出するモデルで、このFLSTSBのように「ヴィンテージ+現代的なデザイン」にチャレンジしたモデルはなかった。近年、XR1200やソフテイル・ロッカーシリーズなど、これまでにない斬新なデザインのニューモデルが登場しているが、メーカーが手がけたカスタム車両として登場するからにはデザインだけではなく、その乗り味も気になるところ。デザインの評価が高いFLSTSBのを味わうべく試乗を行った。

ハーレーダビッドソン FLSTSB ソフテイル・クロースボーンズ 特徴

ソフテイルFLシリーズでありながら
FXシリーズのデザインも取り込んだモデル

ハーレーダビッドソン FLSTSB ソフテイル・クロースボーンズ 写真クロスボーンズの最大の特徴は、現在のハーレーラインナップの中で唯一スプリンガーフォークを採用している点だろう。ヴィンテージハーレーテイストを現行モデルに加えるため、現代に甦ったスプリンガーフォークだが、ヴィンテージハーレーで採用されていたのはナックルヘッドと1948年式の初年度のパンヘッドのみ。FLSTSBは60年以上も前のヴィンテージモデルのデザインをモチーフに開発されているのだ。バイクメーカーが過去のバイクをモチーフに新モデルを開発するのは最近では珍しいことではないが、そういった場合は1960~70年代の車両を参考にすることがほとんど。多くの場合、その理由はバイクメーカーとしての歴史が浅いことが、100年を超える歴史を持つハーレーは膨大な車両デザインの財産を持っているのだ。また、単純にヴィンテージモデルのコピーに留まらず、そのテイストに斬新なデザインを融合させているところに、デザイナーの気概が感じられる。

エンジンの不快な振動を収束させるバランサー搭載のツインカム96Bエンジンを搭載しているのはソフテイルファミリー全体の共通点だが、その他の装備についてはFLSTSB独自のものが多い。2段階のポジション調整が可能なサドルシートが純正で装備されているのはFLSTSBのみ。フェンダーやオイルタンクにピンストライプがあしらわれているのも独自仕様だ(オイルタンクのスカルロゴは2009年モデルから)。また、伝統的なハーレーのスタイルが特徴のソフテイルFLシリーズ(以下、FLシリーズ)ではリアタイヤを深く覆うリアフェンダーを装備するのが一般的だが、FLSTSBはカスタムテイストが強調されるソフテイルFXシリーズ(以下、FXシリーズ)の特徴であるボブテイルリアフェンダーを採用。リアタイヤもFXシリーズと同じ17インチ200mmのワイドタイヤを履かせている。FLシリーズでありながら、FXシリーズのテイストをうまく取り込んでいるのもFLSTSBの特徴と言えよう。ハンドルも一風変わったチョイスだ。ヴィンテージ風にするのであれば低くワイドなものを装備するのが定番だが、あえてミニエイプハンガーハンドルを採用。ほどほどの高さで快適な乗り心地を実現している。その他、ヴィンテージモデルのタンクパネルに似たキャッツアイタイプのタンクコンソールや、ブラックで統一されたリム、エアクリーナー、フェンダーレールなど、細かなところにもデザイナーのこだわりがうかがえた。

FLSTBのスプリンガーフォークは見た目の古さとは裏腹に最新の技術をもって開発されており、高速巡航が珍しくない現代の道路事情にも対応する実力を持つ。メーカー純正だけあって信頼性が高い。

唯一のスプリンガーフォーク採用モデル

FLSTBのスプリンガーフォークは見た目の古さとは裏腹に最新の技術をもって開発されており、高速巡航が珍しくない現代の道路事情にも対応する実力を持つ。メーカー純正だけあって信頼性が高い。

FLSTSBにはデザインのアクセントのため、タンク、前後フェンダーにピンストライプが施されている。ペイントはもちろん熟練のスタッフによる手書き。1本1本丁寧に描かれたラインが美しい。

各部にあしらわれたピンストライプ

FLSTSBにはデザインのアクセントのため、タンク、前後フェンダーにピンストライプが施されている。ペイントはもちろん熟練のスタッフによる手書き。1本1本丁寧に描かれたラインが美しい。

全モデルで唯一サドルシートを採用。シート下に設けられたスプリングは路面からの衝撃をしなやかに受け止める。シートレザーは複数のレザーを丁寧に縫い込んだもので、縫製部分は防水性も高い。

純正唯一のサドルシート

全モデルで唯一サドルシートを採用。シート下に設けられたスプリングは路面からの衝撃をしなやかに受け止める。シートレザーは複数のレザーを丁寧に縫い込んだもので、縫製部分は防水性も高い。

ヴィンテージテイストなモデルでは珍しいスラッシュカットマフラーを採用。スラッシュカットマフラーはエンドの形状からか、他のFLシリーズのマフラーより若干元気な排気音を奏でる。

スラッシュカットマフラー

ヴィンテージテイストなモデルでは珍しいスラッシュカットマフラーを採用。スラッシュカットマフラーはエンドの形状からか、他のFLシリーズのマフラーより若干元気な排気音を奏でる。

ハーレーダビッドソン FLSTSB ソフテイル・クロースボーンズ 試乗インプレッション

予想以上に走るモデルだが
Fブレーキの利きが少し甘い

ハーレーダビッドソン FLSTSB ソフテイル・クロースボーンズ 写真カタログスペックでは676mmとFLシリーズではもっとも高い加重時シート高だが、跨ってみると身長178cmの筆者だと両足はベタベタでかなり余裕がある。これは先端がかなり絞られたサドルシート形状のおかげだ。身長に自信がない人でも、ローダウン無しで乗ることも可能ではないだろうか。イグニッションをONにしエンジンを始動すると、他モデルより元気な排気音を奏ではじめる。やはり、このマフラー形状が純正マフラーでは一番いい音がする。うるさ過ぎず、排気音の歯切れがいい。昨今の厳しい騒音規制の中でも、これだけ上質なサウンドを実現させているのはさすがハーレーというところか。走り出す際にウィンカーをつけて見たものの、エイプハンドルが邪魔で点灯状況が少し見えづらい。しかし、面白いのはヘッドライトがかなり上に位置しているため、ウィンカーの点滅がヘッドライトに映っていること。ウィンカーの確認はヘッドライトを見れば済んだ。フロント16インチ、リア17インチのホイールサイズ、しかもリアは200mmのワイドタイヤを採用しているため、乗る前は「走りにくいかも」と思っていたが、これが思いのほか素直に曲がる。もちろん軽快なスポーツライディングは望めないものの、以前試乗した同じホイールサイズのFLSTFよりこちらの方が走ってくれるモデルだ。リアサスがフレーム下に配置されたソフテイルフレームにスプリンガーフォークを採用したモデルがこれほど素直に走ることができるとは、正直期待していなかった。

ハーレーダビッドソン FLSTSB ソフテイル・クロースボーンズ 写真ただ、これからFLSTSBに乗る人に注意して欲しいのが、スプリンガーフォークはスプリングが硬く、フロントがあまりストロークしないこと。停車状態でブレーキを握り、前後に揺さぶってもほとんどフロントが沈まない。そのため、フロントブレーキの利きが少し甘いので、リアブレーキやエンジンブレーキをうまく使いながら走って欲しい。タイヤサイズ以外にもう1点不安だったミニエイプハンドルでのラインディングは、これも予想に反する快適ぶりだった。ちょうど肩の高さほどになるハンドルポジションは、車両の取り回しこそ少々重いが、走行中のハンドル操作に何ら不満はない。タンクとフットボードにしっかりと体重をかけて曲がってやれば、ハンドル操作にまったく力は必要なかった。ただ1点、不満点をあげるならばサドルシートのスポンジが少々柔らかいこと。長時間の走行で少しお尻が痛くなりやすいのが気になった。もう少し固めのスポンジを採用していたら、ロングツーリングは快適になるように思える。

ハーレーダビッドソン FLSTSB ソフテイル・クロースボーンズ こんな方にオススメ

唯一無二の個性的なスタイル
気になる人は買うしかない

スタイルが気に入った人は間違いなく買い、だ。FLSTSBはハーレーどころか、他メーカーを見渡しても他に似たモデルもなく、このスタイルに憧れるならばFLSTSBを選ぶしかない。ソロ専用のサドルシートを採用したモデルのため、タンデムを考えるならば購入後にカスタムしなければならないが、そこはハーレー、カスタムパーツは豊富に用意されている。スプリンガーフォークは他のテレスコピックフォーク採用モデルに較べると、スポーツ性ではやや劣るものの、他には無い個性的なフロント周りはそれを補って余り得るキャラクターとなっている。そもそもハーレーのビックツインは峠などを攻めるバイクではなく、周囲の景色を楽しみながらのんびり走るもの。そういったバイクライフには理想的なパートナーとなるだろう。走って楽しく、眺めても楽しい、それが FLSTSBだ。

ハーレーダビッドソン FLSTSB ソフテイル・クロースボーンズ 総合評価

ハーレーがなぜ今人気なのか
それを実感させてくれるモデル

世界中のあらゆるメーカーのバイクを見渡しても、FLSTSBと似たバイクを見つけ出すことはできない。現代のバイクでスプリンガーフォークやサドルシートなどを装備するバイクなどあるはずがないのだ。そんなクラシックテイスト溢れるFLSTSBだが、乗り味は操るのに癖があるヴィンテージバイクのそれではない。いつもながらハーレーが上手いと思うのは、伝統的なスタイルを持ちつつ、現代の道路事情に即したモノに仕上げてくるというところ。ハーレーの大型二輪市場での人気に陰りが見えないが、その理由はこのバランスの良さにある。現在、ハーレーは30種類以上ものラインナップがあるが、このFLSTSBこそが、ハーレーのそういった魅力を体現しているモデルのように思える。見ても良し、乗っても良し、ハーレー嫌いの人にもぜひ試乗してみて欲しいバイクだ。

SPECIFICATIONS - HARLEY-DAVIDSON FLSTSB SOFTAIL CROSS BONES

ハーレーダビッドソン FLSTSB ソフテイル・クロースボーンズ 写真

価格(消費税込み) =
221万円(モノトーン)

現行モデルで唯一スプリンガーフォークを採用するモデル。単なるヴィンテージに留まらない、現代的なデザインとの融合が人気だ。

■サイズ = 全長2,330×全幅960×全高1,255mm
■ホイールベース = 1,630mm
■最低地上高 = 125mm
■加重時シート高 = 676mm
■タンク容量 = 18.9L
■エンジン = TWIN CAM 96B

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