

掲載日:2007年11月14日 試乗インプレ・レビュー
構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
90年代の名車が再登場
チョッパーテイスト溢れる人気モデル
今回紹介するFXSTCソフテイルカスタム、実はこれ2世代前のエンジンが現行だった1993年から1999年までラインナップされていたモデルだ。2000年にラインナップから消えた後も人気は衰えず、復活の声が切に上がっていたモデルなのだ。FXSTCについて紹介する前に、まずはこのモデルはハーレーの中でどういったポジションにあるモデルなのかについて触れたい。ハーレーはエンジンやフレームなどから大きく5つのファミリーに分けられる。FXSTCはその中の“ソフテイルファミリー”に属するモデルだ。ソフテイルファミリーの特徴は、リアサスペンションが取り付けられていない“ように見える”フレーム形状にある。実際はエンジン下部にリアサスペンションが装備されており、乗り心地に何も不満はない。そうでありながら、戦前、戦後のハーレーの名車たちのような“リジッドマウント(リアサスペンションを装備していないモデル)”風フレームを装備しているのがソフテイルファミリーの魅力の1つだ。
また、ソフテイルファミリーはFL系とFX系に分けることができる。FL系は重厚感溢れるツーリングモデルで、FXSTCの属するFX系はいわゆる“チョッパー”テイストのモデルだと思って欲しい。60、70年代に生まれたロングフォークのチョッパーの魅力を、メーカーの技術力を持って表現したモデルなのだ。FXSTCはそんなメーカーのカスタムバイクとも言えるFX系モデルの1つであり、その中でもっともチョッパーテイストに溢れるモデル。メッキパーツも豪華に奢られており、再登場2年目にして、ハーレーを代表する人気のモデルとなっている。
これぞハーレーダビッドソン
憧れのスタイルがここにある
FXSTCのファーストインプレッションは「これぞハーレー!」というもの。一般的なライダーが「ハーレー」と聞いて思い浮かべるイメージにもっとも近いスタイルだ。エイプハンガーハンドルにスポークホイール、シーシーバーにグラマラスなタンクといういでたちで、これから自分がハーレーに乗るということを強く意識させてくれる。「憧れのハーレー」そんな言葉がよく似合う、堂々とした美しさがFXSTCをはじめソフテイルファミリーの大きな魅力だろう。ハーレーらしいスタンダードなスタイルだが、これこそハーレーに乗りたいライダーが求めるスタイル。細身のフロントタイヤに極太のリアタイヤ、エンプハンガーが演出するチョッパースタイルと足を前に投げ出すフォワードコントロール、極上のすわり心地のダブルシートはまたがってみても、ちょっと離れて眺めてみても、“ハーレー”なんだということを強く実感させてくれた。見ているだけで深い満足感に思わず口元がゆるんでしまうほどだった。
細かい部分の造形についても納得の仕上がりだ。タンクオンのスピードメーターに、各部にメッキがほどこされた1584ccのツインカム96Bエンジンの存在感はもちろん、シートについているハーレーの刻印入りボタンなど、デザインにおいてスキが無い。ここからのカスタムも可能だが、ノーマルでもこれほどの雰囲気を醸し出すモデルは、他のメーカーではなかなかお目にかかれない。これぞまさしくハーレーダビッドソンのモーターサイクル。乗る前からいやが上にもテンションが高まってくる一台だ。
エイプハンガーが演出する
魅惑のチョッパースタイル
ハンドルはチョッパースタイルを演出するエイプハンガーバーを採用。見た目ではハンドル位置が高そうに見えるが、実際にのればちょうど良い高さ。ウインカーはハンドルマウントだ。
すわり心地は抜群
快適仕様のダブルシート
一体型のシーシーバーが付いたダブルシート。クッション性は高く、すわり心地は良好だ。タンデムシート側もなかなか快適。デザインされたボタンはこだわりを感じさせるポイントだ。
極太のリアタイヤで
迫力と安定性を両立
車格に負けない200mm幅・極太サイズのリアタイヤを採用している。この太さのおかげもあり、FXSTCの直線安定性は抜群で、長時間のクルージングでもストレスのない走りが可能。
所有欲を満たしてくれる
美しいデザイン
ハーレー全般に共通して言えることだが、クロームパーツの質感は格別。乗って楽しいのも当然で、所有するというよろこびを十分に満たしてくれる。また、ボディ全体の流麗なラインとエンジンの美しさも見逃せない。
ゆったり、快適、軽快
極上のクルージングマシン
ゆったりとしたダブルシートに腰を沈めセルを押すと、両足の間にあるエンジンが大きく震え、始動する。体に伝わってくるバイブレーションはかなりのモノで、初めてハーレーのエンジンに火を入れた人なら驚くほどだろう。だが、体中に響くこの始動の瞬間もハーレーの楽しみ。これから自分がハーレーに乗ることを強く意識させてくれる儀式のようなもの。いざ走り出そうとして驚くのは、クラッチが非常に軽いことだ。以前のハーレーのクラッチは重いのが当たり前だったのだが、近年のハーレーはこんなところまで心配りを忘れていない。国産の大型アメリカンに比べても明らかな軽さが感じられる。「大型バイクだからクラッチが重い」という心配は一切無用で、その他スロットルや各種スイッチ類の使いやすさは格別だ。走り出した瞬間から乗りなれてきたバイクのようにハンドルまわりのコントロールができる、これは意外と実現するのが難しいポイントになるのだが、FXSTCはこともなげにこなしてしまっている。
走り出してしまえば余計な緊張を強いないコントローラブルな特性と、大排気量ツインエンジンが生み出すトルクが車体のサイズや重さをあまり感じさせないライディングを実現していることにまた驚く。特に操作系の軽さは効果抜群で、街中のような極低速域においてもストレス無くライディングを楽しむことが可能だ。そしてひとたび高速道路などの広い道に入ればまさに極楽。クッションの効いたシートに体をゆだねてゆっくりとスロットルをひねるだけで、余裕という言葉では言い尽くせない快適なクルージングタイムの始まりとなる。ただ、一つだけ気になったことがフォワードコントロールになっているステップの位置。身長173cmの筆者にとってハンドル位置に問題はないものの、ステップは少し遠めに感じてしまった。より小柄な人の場合、ここは少し不満に感じてしまうポイントかもしれない。
ハーレーに憧れるなら間違いない選択
ロングツアラーにも向く快適性能
FXSTCをオススメしたいのは、やはりハーレーに乗りたいという人に、だ。特にハーレーらしいハーレーというものにこだわりがある人なら、FXSTCは有力な選択肢の一つになるはず。そしてもう一つ、クルーザー系のバイクでツーリングしたいライダーにもおすすめしたい。大きな排気量と安定感ある車体はまさにロングツーリングにうってつけで、心地よい鼓動とストレスのないライディングフィールもあいまって、どこまでも走ってみたくなるモデルだ。また、ゆったりとしたシートとシーシーバーはタンデムツーリングにも向いている。見て、乗って、走って楽しめる1台といえるのではないだろうか。
ハーレーの懐深さを知る
価値あるスタンダードモデル
バイクは乗るまでその実力はわからない、というがハーレーこそその最たるものではないだろうか。高いネームバリュー、ブランドイメージ、迫力のあるスタイルや豊富なバリエーションを誇るカスタムの面が取り上げられがちだが、スタンダードなバイクとしての実力の高さは思ったほど知られてはいない気がする。今回試乗したFXSTCは乗ってみて初めてわかる作り込みに深い感動を覚えた。走るというバイクの本質においてストレスとならないよう細部まで心配りが見えるだけでなく、それをカスタムテイストのあるルックスの中にまとめているところなど、昨今のハーレー人気の根の部分を見た気がする。伝統的なスタイルに対し敬意を払いつつも、変えることでよりよくなる部分については積極的に進化させていくという、当たり前のようでいて難しいことをさらりとやってのけるハーレーには、奥の深さを感じざるを得ない。乗ればこの道をどこまでも旅してみたくなる…FXSTCはそんな気持ちにさせてくれる魅力的なモーターサイクルだ。
価格(消費税込み) = 227万1,000円
2007年モデルで復活した、90年代に人気を博したFXSTC。チョッパーテイストが溢れるスタイルから、再登場後2年目にして多くのハーレーユーザーの心を鷲掴みにしている。“これぞハーレー”というスタイルのモデル。
■エンジン = 空冷OHV 45°Vツイン 1,584cc
■最大トルク = 110N・m/2,750rpm
愛車を売却して乗換しませんか?
2つの売却方法から選択可能!