
掲載日/2014年4月30日
安全で耐久性の高い
個性的なカスタム
ガレージT&Fは愛知県の大府市にある。隣は東海市、そして大都市名古屋へと続く、かつては太平洋工業ベルト地帯と呼ばれたエリアで、現在でも数多くの金属加工業等が盛んな地域だ。上のメインカットの一番右に写っている社長の船橋俊博さんは、そんな地元で育ち、以前はクルマ関係のスペシャルショップで腕を振るっていた経歴を持つ。大好きな乗り物をカスタムする上で、とても環境が整っているのがこの東海地区の特徴である。
「20代はクルマ関係だったのですが、自分でバイクを購入し、カスタムしているうちにショップを立ち上げようと考えたんです。最初はごく簡単なパーツだけを知り合いの工場に頼んで作っていたんですよ。でも自分が欲しいと思うパーツって、他のライダーも欲しいわけです。それでだんだん扱う商品が増えていって、規模が大きくなっていった。だから以前は、国産アメリカンカスタムのパーツを製作するショップだったんですよね」
そして3年前からコンプリートカスタムバイクを製作するようになった。そのほとんどがホンダのスティードやヤマハのドラッグスターといった国産アメリカンの400ccモデルだ。ノーマルの外装を取り外し、専用設計されたガソリンタンクやシート、ハンドル等を装着。様々なシルエットのカスタムを手掛けるが、フレームはノーマルで、いわゆるカスタムビルダーが製作するショーモデルのようなバイクは製作しないという。
「カスタムビルダーさんの仕事はまったく分野が違うと思っていますから、僕らはいっさい手を出しません。でも汎用パーツで作るカスタムは誰がやっても似たものになって個性的ではなくなるので、専用パーツを製作します。試作をするのは国内で、量産は海外ということも多いですね。でもFRP製品は専門のスタッフが製作する完全にT&Fのオリジナルです。そうすればフィッティングの問題もありませんから、丈夫で耐久性のあるカスタムが製作できるし、ウチの個性を主張することもできる。購入したお客様がさらに独自のカスタムを望めば、僕らのできることならば相談に乗るし、もっと自由にカスタムを展開したい場合は、ウチのカスタムがその素材になれば良いとも思います」
T&Fが製作するオリジナルパーツは、FRP製のガソリンタンクをはじめとして、ハンドルバーやフェンダー、エアークリーナーボックス、そしてシートなど、数多い。社屋の2階はそれらのパーツストックが並び、次々に出荷されているのだ。つまりここで製作されるカスタムバイクは、T&Fカスタムのデモンストレーションバイクという意味合いも強い。ユーザーがベース車両を所有していれば、パーツを購入して自分の手でT&Fカスタムを作り上げることも可能なのである。もちろんパーツの中には、完全にボルトオンのものもあれば、汎用性のある小加工が前提のものもある。そのようなパーツ販売を軸として行いながら、ここで製作されたカスタムバイクは3年間で200台以上というから驚きだ。
「コンプリート製作して販売する場合も多いですが、ユーザーからの注文でワンオフ製作する場合もありますね。それでも使用するパーツは我々が設計製作したものばかりだから、作業はスムーズ。あまりお客さんを待たせるようなことはありません。基本的にコンプリートカスタムのカラーはブラックで製作することが多いのですが、カラーは自由に選んでもらっています。それでも販売価格は同じなんですよ」
最近はヤマハSRのカスタムも手掛けるようになり、やはりまずは専用のパーツ製作から開始したという。その方針は、製作するバイクの種類にかかわらず、T&Fのコンセプトなのである。店内にはプライスタグを付けられたカスタムバイクがずらりと並んでいた。そして奥の作業スペースでは、分解されたベースバイクに着々とカスタムを施すメカニックの姿がある。確かに、ここはショーモデルを製作するようなカスタムビルダーがいるショップではない。しかし生みだされていくモデルは、走行性能をスポイルすることのない、安全で耐久性の高い個性的なカスタムであることは間違いない。
YAMAHA DRAGSTAR CLASSIC 400
ベース車両は、ヤマハドラッグスタークラシック400である。従来のドラッグスターからの派生モデルで、前後16インチホイールにファットタイヤを装着。そして深くてクラシカルなディープフェンダーやサドル型シートなどの装備でビンテージアメリカンのイメージを狙ったモデルだ。
外装はほとんど取り払って、専用のスポーツスタータンクキットを装着。アップライトなロボットハンドルに変更し、軽快なボバーカスタムとなっている。マフラーはブラックアウトされた短いショットガンタイプ。ステップボードもミッドコントロールステップに変更され、シンプルなシルエットとなっている。
短いショットガンタイプのマフラーは、艶消しブラックの耐熱塗装が施され、エンドバッフルはアルミ製。サイレンサーももちろん装着されている。
ハーレーのスポーツスタータンクキットは、ノーマルフレームにボルトオン装着できる専用設計のFRP製。違和感なく装着することができるのだ。
YAMAHA DRAGSTAR CLASSIC 400
こちらのベース車両もヤマハドラッグスタークラシック400だが、まったく違うイメージのカスタムとして製作された1台だ。外装をすべて取り払うのはもちろんだが、ノーマルの持っているクルージングイメージを、現代的に少し方向転換させたシルエットで製作されたカスタムである。
最も特徴的なのは、8度レイクさせたトリプルツリーを使用してフロントフォークを寝かせ、そこにロケットライトを装着。ロー&ワイドなイメージのクルーザーとして生まれ変わった。ホイールはノーマルのままで生かし、装着するタイヤはクラシカルなものを選ばず、BS製のクルージングモデルを選択している。
マフラーは、ロングドラッグタイプという名のオリジナル。引き締まったシルエットを演出している。もちろんサイレンサー内蔵である。
エアークリーナーはクラシカルイメージのSUタイプ。キャブレターやインシュレーターなどはノーマルのままで装着できるようになっている。
数多くのオリジナルカスタムパーツを製作し販売するガレージT&Fの現在イチオシのパーツを選りすぐって紹介する。基本的にほとんどのパーツがボルトオン装着可能で、ハンドルバーなどの汎用パーツも高い品質と耐久性を誇っている。そしてフィッティングのしやすさが特徴である。次々と生み出される新作パーツはT&Fの開発スピードがいかに早いかという証でもあり、人気パーツはストック量も多く、すぐに発送できる体勢を整えている。