掲載日:2019年12月16日 フォトTOPICS
写真/磯部孝夫 取材・文/後藤 武
テイスト・オブ・ツクバは、土日の二日間で行われる。サンデーレーサーにとってテイストは年に2度の大イベントという事もあり、木曜あたりからサーキットに泊まり込んでいるチームもある。これがまた楽しそうなのだが、我がチームは残念ながら仕事の関係で日曜早朝入りとなった。
ゴトーの参加するD.O.B.A.R1クラスの予選は朝一番。サーキットに到着したら受付、車検と大忙し。
無事車検をパスしたら混合ガソリンを作って、すぐに暖気場で暖機運転。マッハが白煙を上げ始めると見物人が集まってくる。最近では応援してくれる人も少しずつ増えてきた。マッハは殺人バイクとか、メチャクチャ速いとか、色々な伝説があるのだけれど、実際に快調でサーキットを走っているバイクは皆無に近い。「マッハって本当に速いの?」なんて言う人も少なくない。
マッハ乗りとして、これは我慢できなかった。全開でサーキットを走る姿を見て欲しいと考えてレースをするようになったわけで、だから関心を持ってくれる人が少しでも増えてくれるととても嬉しい。
予選は8割のペースで走った。信頼性が上がったとはいえ、空冷2ストロークエンジンはシビアだ。「調子が良いから」などと全開で走り続けていると突然ピストンに穴が空いたりすることもある。現在のエンジンは信頼性がとても高くなってきているけれど、今の仕様でのデータは集まり切っていないから油断できないのである。
若干濃いめのセッティングで、しかもペースを落とし気味にしていたが、それでも1コーナーやヘアピンの立ち上がりではフロントが浮きそうなくらいパワーも出ていてニンマリする。やっぱりマッハはこうじゃなきゃいけない。
予選の途中、このクラス常勝のザッパーが抜いていったので、少しペースを上げて様子を見る。ストレートでは向こうのほうが速いけれど、以前のような速度差はなくなっていた。これだったら決勝はトップ争いができるかもしれない。
予選が終わったらシリンダーヘッドを取り外してピストンやシリンダーの状態を確認。空冷のマッハは、数分でヘッドが分解できてしまうからこういう整備も簡単だ。異常がないことを確認してエンジンを元に戻し、細かい調整を行ったら後はやることもなし。ノンビリと決勝の時間を待つことにした。
事件が起こったのは決勝直前の暖気。エンジンを始動した瞬間「カツン」という金属音がしてエンジンが止まってしまった。ゴトーとメカをやってくれている友人達全員真っ青である。決勝まで30分くらいしかない。
最初に疑ったのはキックギア周辺。キックの戻りが悪かったからギアの歯が欠けて噛み込んだのではないかと思った。しかしここは問題なさそう。
次に分解したのはヘッド。友人達と手分けして3気筒のヘッドを外す。タンク、シリンダーヘッドが数分でバラバラになる。
ヘッドが外れた瞬間「アー」という悲鳴のような叫び声が。真ん中のピストンとシリンダーの間に金属片が挟まっている。
シリンダーまで分解してみるとそれは燃料ホースーを固定するクリップだった。シリンダー、ピストンのダメージは大きく、出走不可能と判断して決勝を棄権することになってしまった。
不完全燃焼に終わってしまったが、これもレース。車体もエンジンも良い状態に仕上げられたのだから、次のレースで頑張ることにしよう。取り敢えず、今回のトラブルを教訓として燃料ホースのクリップは、針金ではなく、スチールの板を曲げたものに交換する。落としてもすぐ分かるように。