『ツーリングのつぼ』

温泉ツーリング(2)

掲載日:2014年01月14日 タメになるショートコラム集ツーリングのつぼ    

Text/Kosuke KAWAI

温泉は、日本だけの専売特許ではなく海外にもある。長旅だと風呂は貴重なので、世界1周では温泉を目指して走っていたが、最初に訪れたアメリカやカナダだと、25メートルプールがあるスポーツ施設や、ジャグジーがあるような高級リゾートになっていることが多かった。そのため料金も高く、ワイルドで貧乏な旅人が目指すべき温泉ではないだろう。しかし南米に入ると、アンデス山脈があるので急に温泉天国になる。人里離れた野趣あふれる露天風呂があったり、内湯の横にキャンプ場や安宿が併設されていたりして、そのほとんどが、我々のイメージする温泉なので嬉しい。ペルーのマチュピチュ遺跡のある村にも露天風呂があった。そのためスペイン語で“温泉”という単語を覚えたくらいだ。

オーストラリアでは、ジャングルの中に温泉が湧いていた。気温が高い時期だと、温泉が熱すぎて冷たい水に入りたい気分でいっぱいになるが、映画『クロコダイルダンディ』のように、ワニに気をつける必要がないので安心だろう。そしてヨーロッパだと、温泉は治療として、いわゆるサナトリウムのような病院に併設されていたりする。受付で「キミは、どこが悪いのか?」と聞かれたが、日本からバイクに乗って来きていて、体が悪いもないものだ。「ただ温泉に入りたいだけです」と答えると「30分だけ許可します」との診断だった。そして我がアパートの風呂のような狭い個室で入浴していると、本当に30分で出るように呼ばれたが、病人には毒なのだろうか。

アフリカの砂漠では、オアシスに湧いているのが温泉だったりするが、入浴の習慣が少ないので、主に農業や生活用水なのが残念。コンクリート製のお湯溜まりに無理やり入ることもできるが、家畜の水飲み場だったりすると、通りすがりの村人に笑われるので気をつけてほしい。そんな中でも極めつけは、サハラ砂漠のど真ん中の温泉だった。村の生活用水に使われるのだが、くみ上げポンプの管理人に頼んだら、バルブを開けてお湯を出してくれた。360度、見渡すかぎり地平線に囲まれて入った温泉は、忘れがたい思い出だ。

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