『ツーリングのつぼ』

ヘッドライト(3)

掲載日:2012年06月19日 タメになるショートコラム集ツーリングのつぼ    

Text/Kosuke KAWAI

現在はラインナップから外れているが、ペツルの 『マイクロ』 は小型軽量で、説明書が必要ないくらい取り扱いが簡単だった。ちなみに、バンドを頭に巻かずに首にかけると締めつけ感が少なく、長時間つけていても疲れにくい。老人でも使いこなせて、3歳児なら口に入れてしまうだろう。

取り扱いは、電池を入れてスイッチをいれるだけ。ライトの類は、このスイッチ部分が最初に壊れやすい。『マイクロ』 はマグライトと同じように、ライトバルブのあるケースをぐるぐる回転させることで、点灯スイッチと焦点調節を兼ねているシステムだった。その構造が良かったのだろう、5年間ほぼ毎日使っても、壊れることはなかった。

オーストラリアの原野で野宿をしていた時のことだ。夜間にキジを打ちにテントからしばし離れ、用を終えて戻ろうとした時、テントの位置が分からなくなったのだ! テントから離れたといっても10メートル程度、振り向けば見える距離という意識も焦りを生んだ。周囲には低い草が生えているだけだ。目標物がないと、こんなにも簡単に迷子になってしまうのか!

テントにはカモフラージュ柄のレインフライを使っていた。そのためヘッドライトで照らしても、見事なまでに原野とテントが同化していたのだ。自分の足跡や記憶を頼りに歩き、バイクの反射板がキラリと光った瞬間を今でも忘れない。

ヘッドライトの価値は光量にもあるだろう。明るいにこしたことはないが、例えばテントの外でガサゴソ気配がしたのでライトで照らしたら、そこにライオンやアナコンダが見えたとして、どう対処すればいいのだろうか? 私には、ヘルメットをかぶるくらいしか回避方法が浮かばない。

単3電池を直列に2つ並べて3Vしかない 『マイクロ』 は、お世辞にも明るいとは言えない。しかし5年間の放浪で、ライトが暗くて困ったのは、このオーストラリアでの1夜くらいだ。とくに昼間に困ったことはない。

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