『ツーリングのつぼ』

キャンドルランタン(1)

掲載日:2012年05月15日 タメになるショートコラム集ツーリングのつぼ    

Text/Kosuke KAWAI

夜間のツーリングは危険がいっぱいだ。陽が傾くと危険な動物(ライオンや強盗など)の活動が活発になるし、ヘッドライトの光にカンガルーが飛び込んでくるかもしれない。私は慎重なA型だから、ブラジルとアフリカとオーストラリアで、女の子との待ち合わせのためにしか夜間走行はしていない。

一般的には太陽の出ているうちにキャンプ地を見つけてテントを張りたい。目安として、バックミラーに太陽が写り込む時間になったら、テントを張る場所を探し始めよう。

そして寝場所を見つけたらゴソゴソとテントを組み立て、おもむろにバーナーやコッフェルを取り出して、すばやくコーヒーをいれる。夕陽を眺めながらの一服は格別だ。

赤道に近いと太陽は真下へスコンと沈み、そこから離れるにしたがって横に転がるように沈む。もしツーリング先が真夏のアラスカやアルゼンチンなら、何時になっても太陽が沈まないので問題は少ないが、それ以外の地域では、暗くなる前に何かしらの明かりを取り出しておく。

そうしないと手探りで物を探す事になり、砂糖と塩を間違えてコーヒーに入れてしまい、暗闇の中でひとり苦しむおそれがある。それぞれを似たサイズの台所用ジップロックに、砂糖と塩を入れていたのが原因かもしれない。

キャンプ用の明かりとしては、ガソリンや灯油、簡単なガスカートリッジや電池式のランタンがある。しかし、ランタンのホヤは転倒で割れやすいし、毒キノコのようなマントルも振動で崩れやすい。その崩れたマントルのカスが原因で、ニップルが詰まることもある。

どんなに明るくて便利でも、あまりに繊細で壊れやすい道具は、バイクツーリングには向かない。そこでロングツーリングでは、フタ付きの空き缶にローソクを立てて明かりに使っていた。単なる空き缶やローソクを “キャンプ道具の逸品” と呼ぶには少し無理があるかもしれないが、それは実際に壊れず、ほぼ5年間の世界一周の夜を、ほのかに照らしてくれた。

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