『ツーリングのつぼ』

テントについて(6)

掲載日:2012年04月03日 タメになるショートコラム集ツーリングのつぼ    

Text/Kosuke KAWAI

ファスナーが壊れるトラブルが心配だったので、世界一周の出発時はマジックマウンテンの冬山用テントを持って行った。これはファスナーの凍結を防ぐために、出入り口をヒモで縛るようになっていた。しかしそれは冬の北海道ツーリングでは重宝したが、常温の毎日では手間が多かった。また保温を重視した構造のため通気が悪かったので、気温40℃を越えていたデスバレーでのキャンプは思い出したくもない。

そのマジックマウンテンは1年半ほど経ったチリで盗まれ、現地で買ったドイテのテントは普通のファスナーだった。とても便利だったが、アフリカでファスナーが閉まらなく(または開かなく)なってしまった。

テントの入り口が開きっぱなしだと、砂漠地帯では湿度に敏感なアリやヘビなどが寄って来てしまう。一度なんか、ネズミがテントに入り込んで大騒ぎだったぞ。

「やっぱり捕まえて食べたんですか?」

確かにネズミはおいしい。しかし、なにか勘違いをしているようなので誤解のないように言っておくが、私は紳士的でスマートな旅行者だとエクアドル人に言われたことがある。少なくとも、彼らは食用にしているネズミを「フライド・ミッキーマ●ス」と呼ぶのは、やめておいた方がいいと思う。

それよりも、野ネズミを捕まえようとして噛まれたら、狂犬病の危険もあるぞ。

「ネズミなのに狂犬病ですか?」

そう。狂犬病は、ほ乳類全部が感染する。たぶん日本では主に犬が感染したから、こういう言葉になったんだろう。実際には、寝ている間にネズミやコウモリに噛まれる被害が多いと聞く。小指ほどの大きさのネズミに噛まれたら、痛くないから気がつかないと思う。まあ、そんなトラブルはまれだから、気にしないでキャンプを楽しんでくれ。

適度に空気が動くので心地よく、ちょっと入り口を開ければ、すぐそこに太陽が見える。赤道に近いと太陽は垂直にスコンと沈むが、緯度が高いとなかなか沈まず、いつまでも横に転がる太陽が見られる。そして夜に顔を出せば星空が広がり、それが南半球だと日本とは上下が逆なので、サソリ座がしっぽから昇ってきたりする。そんなことに気がつかせてくれたのは、テントだけだ。

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