
掲載日:2012年02月14日 タメになるショートコラム集 › ツーリングのつぼ
Text/Kosuke KAWAI
ドイツには、店頭に各種サンドラダー(車がスタックした時に、タイヤの下に敷く板)が並んでいる変なショップがある。アフリカ専門の冒険屋といった感じだ。
そこで扱っているアルミ製パニアケースは、指で押しただけで凹むくらい薄い素材を使っている。カメラのライカと同じように、円い筒を潰して四角い本体を成型して、上下のカバーを取り付けてある。溶接部分を少なくすることで剛性を高める仕組みだ。
バイクは転倒する乗り物だ。聖なる牛が飛び出してきたり、カーブの先にゲリラがいたり、交差点を曲がったらマンホールのフタがなかったなどの理由により転倒する。
すると簡単に凹むが、そのへんにある石で叩けばすぐに元通りになる。いや、正確には使えるレベルに戻る。パニアが使えないほど変形したら、たぶんマシンも走ることができない状態だから心配する必要はない。そんな実用本位の設計は、世界で出会った多くのライダーに愛用され、どのパニアも見事なまでに凸凹になっていた。
車体との取り付けは、住宅の扉に使う蝶番がいいだろう。これなら壊れても、世界中で代用品が手に入る。自宅の玄関扉を見てもらえば、上下2つ程度の蝶番で重い扉を支えているはずだ。たいてい扉は、持ち上げると外れるようになっているので、同じ要領でパニアを車体から外すこともできる。
するとひとつはテーブルになり、もうひとつはイスになり、車体にジャケットをかぶせれば背もたれにもなる。センタースタンドがない機種には、アンダーガードの下に置いて整備スタンドとして使うこともできる。洗濯をする時のバケツ代わりにもなるので、アフリカへ行く人には重宝するだろう。
しかしパニアの欠点は、一度でも実物を見たことのある人が感じるであろう、渋滞ですり抜けが出来ないとか、見た目の大きさほど中身が入らない、などである。動力性能も極端に落ちるので、パニアを付けた時は気分だけでも海外ツーリング。のんびり行こうじゃないか。
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