
掲載日:2011年11月29日 タメになるショートコラム集 › ツーリングのつぼ
Text/Kosuke KAWAI
旅を始めて3カ国目、メキシコの首都メキシコシティで「さて、どのルートで走ろうか」と地図を見ていると、メキシコの右隣にベリーズという聞きなれない国があることを発見した。
「そうだ、ベリーズに行こう」
さっそく本屋に行ってみると、なぜだかベリーズの地図が売っていない。じつは先日、アラスカがアメリカだということを国境で知らされたばかりで(そこに行くまで、アラスカは 『アラスカ』 という国だと思っていた)、知っている国がひとつ減って残念に思っていたのだ。
「もしかして、ベリーズはガテマラかもよ」
本屋のオヤジがそう言うので地図を見てみると、はたしてメキシコの下にあるガテマラ国の地図にベリーズは載っていた。しかし独立国家としてではなく、ガテマラ国家のベリーズ地方として…
まるで休日の午後に、近所の公園で子供がブランコの取り合いをしているかのようだ。国家による本物の国盗り合戦なのだが、盗られたベリーズ側が気にしていないあたりがラテンアメリカのすべてを象徴していると思う。
その後、エルサルバドルの首都、サンサルバドルでも私は地図を求めて本屋めぐりをしていた。そして見つけたエルサルバドルの地図は、手書きの国土にピンクや黄色の絵の具が塗られ、海には船の絵が描かれ山に牛が歩いていたりしていて、総合的に牧歌的だ。国家地理省製造と書かれているので、敵に正確な地図を提供しないという戦略的な目標は達成されているかもしれないが、どう好意的に見ても子供の塗り絵にしか見えないのが残念でならない。
こうして現地を旅しながら地図に実際の状況が書き込まれ、雨に降られて文字がにじんだり、時に晩ご飯のソースがはねて汚れたりして地図に貫禄が出てきた。
正確な地図が必要なのは仕事で使う人だけで、我々のように遊びでツーリングに行く人には、そんなに正確である必要はない。もしそれで道に迷ったりしたら、そのあたりにいる人に聞けばいい。そんなツーリングは、忘れられないものになると思う。
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