『ウェア屋さんのひとりごと』

チェストプロテクターって必要?

掲載日:2011年12月01日 タメになるショートコラム集ウェア屋さんのひとりごと    

Text/Junichi FUJIMOTO ( RS TAICHI )

前回は背中に受ける衝撃を軽減する “バックプロテクター” の重要性についてお話をしましたが、今回はここ数年で必要性の認識が急激に高まってきた “胸部プロテクター” についてお話をしてみましょう。まず、“胸部” を保護することについてピンと来ない方って、いらっしゃいますか? 実は、オートバイ乗車中による事故で死亡された方のうち、48%が頭部、次いで26%が胸部に受けたダメージが原因によるもので(警視庁交通総務課調べ)、この数字だけを見ても、いかに重要な部位であるかがお分かりいただけるでしょう。

胸部がダメージを受ける状況としては肩や肘等と異なり、事故が発生した際、車輌から投げ出される直前の速度があまり減速されないまま、相手の車輌や物体に身体が衝突する可能性が非常に高いと言えます。そのため、胸部は肋骨によって守られてはいるものの、大きな衝撃を受ける事によって肋骨は損傷し、心臓や肺、肝臓などの重要な臓器に大きなダメージを受けてしまいます。この事を認識した白バイ隊員の声をもとに、10数年前に警視庁からホンダに対して胸部プロテクターの開発を依頼。その後約2年間にも及ぶ開発期間を経て、肋骨の約2倍という高い強度を持つ胸部プロテクターが誕生し、白バイ隊員によって実用化されました。また、レースの世界でもバックプロテクターと同じく、2011年から MFJ 公認レースに参戦する際は装着が義務付けられるほど、重要なプロテクターとして認識されているのです。

この様な状況もあって、現在では国内でも複数のメーカーからレース用やツーリング用等、様々なタイプの胸部プロテクターが発売されているほか、ヨーロッパのメーカーではCE規格(『ライディングウェアのプロテクター(CE規格って何ぞや?)』を参照)をクリアした製品もラインナップされています。これらはそれぞれ安全性の高さや価格、装着感等が異なるため、自分の好みに合わせたプロテクターを選択できる様になってきました。

また、大きな事故はもちろん遭わないにこしたことはありませんが、ちょっとした転倒であっても、肋骨に衝撃を受けた際には意外と簡単に肋骨を痛めてしまいます。これからは肩や肘のプロテクターが当たり前と思っているのと同じ位、胸部プロテクターの装着も当たり前に思っていただけると何よりです。

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