掲載日:2026年08月18日 フォトTOPICS
写真・文/小松 男

モト・グッツィの本拠地は、イタリア・コモ湖の東岸に位置するマンデッロ・デル・ラーリオという小さな町だ。
世界的な富裕層の避暑地として知られるコモ湖の畔に、なぜかバイク工場が根を張っている――そんな意外性を持つこの場所で、モト・グッツィは欧州で最も古くから継続的にバイクを生産し続けているメーカーだと言われている。
ただし「継続」という言葉の中身は、決して平坦な一本道ではない。第二次世界大戦は開発そのものを事実上止め、戦後のマンデッロ・デル・ラーリオもまた、欧州各地と同じく厳しい時代を強いられた。
それでも工場は解体されず、この地に残り続けた。沈黙の時代を挟んでもなお、105年間同じ場所でエンジンを組み続けてきたという事実こそが、モト・グッツィというブランドの根幹をなしている。


そのマンデッロ・デル・ラーリオの工場が今回、大規模改修を経て初めて一般公開される。9月3日から6日まで開催される「モト・グッツィ・ワールド・デイズ2026(GMG)」がその舞台だ。
新設されたミュージアムには150台超の歴代モデルが収蔵され、来場者は高所の見学デッキからガラス越しに最終組立ラインを見学できる。
稼働中の生産ラインと、100年分の歴史的資産を同じ屋根の下に同居させるという発想は、荒波を乗り越えてでも同じ場所に留まり続けたブランドだからこそ成立する仕掛けだ。

この工場から今も生まれ続けているのが、唯一無二の縦置きクランクシャフトVツインエンジンだ。
ただ、モト・グッツィは決して一つの形式だけにこだわってきたブランドではない。創業期の45年を支えたのは水平単気筒エンジンで、1950年代にはグランプリ参戦用に横置きV8エンジンまで開発している。
むしろ様々な形式を試みてきた歴史の末に、最終的にたどり着き、半世紀以上守り続けているのが、この縦置きレイアウトなのだ。
新しい工場、新しいミュージアムという器を手に入れてもなお、そこから生まれるのは変わらずこのエンジンだという事実に、今回のリニューアルの本質がある。


イベント期間中は土曜午前にレッコからマンデッロまで歴代グッツィが連なる大パレードが行われるほか、ミュージックライブ、フルモデル無料試乗会、ローカルグルメも用意されることになっている。
入場は無料で事前登録制、公式サイト「gmg.motoguzzi.com」からのエントリーはまだ間に合う。
戦争も乗り越えて残り続けた工場が、105年目にして初めて扉を開く――そうそう巡ってくる機会ではない。少し遅い夏休みの行き先として、コモ湖畔を選んでみるのも悪くない。









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