ライダーインタビュー【モーターサイクル・ザン・パラダイス Vol.30】夢子さん

掲載日:2026年02月22日 フォトTOPICS    

取材・写真・文/森下 光紹

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Vol.30 夢子(ユメコ)

毎日を噛み締めるよう大切に生きる人
その相棒は、愛犬でもありバイクでもあり

時間は、いつも均等に過ぎていく。人間は時計というシステムを随分前に発明して、その時間というものをある意味可視化することが出来るようになったが、そんなことはお構い無しに常に淡々と時は過ぎて行くことに変わりがない。このどうにも止めようがない時間という奴に翻弄されながら、僕らはみんな生きている。その瞬間を生き続けている。その中に数え切れないほどのドラマを生み出しながら、刻々と変化しながら、続いていく。バイクに乗って走っていると、何だかその時間そのものの中を泳いでいるような気がする瞬間があるのだが、それはきっと、生身の人間がほぼ剥き出しのまま高速で移動しているからだろうか。絶対に同じテンポで進んでいるはずの時間に変化を感じる乗り物だと、僕は時々思うことがあるのだ。

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夢子さんは北海道の日高で生まれた。伸び伸びと育った少女期は親の転勤で道内を転々とした後、父親の突然の決断で岩手県に家族で引っ越す。少し馴染めない東北気質の中で乗り出したバイクは、彼女にとって、魔法の絨毯だった。まだ女性ライダーが珍しかった時代、夢子さんはハスラー50を手に入れて、自分にとっての自由を発見したのかもしれない。身内や周囲の風当たりは強かったが、その後もオフロードバイクを乗り継いでとにかく走り回った。当時岩手では「イーハトーブトライアル」というイベントが毎年行われていて、彼女は19歳から37歳までそのスタッフも務めていた。ライダーは全国から集まってくるし、主催者だったメンバーは東京の老舗トライアルクラブの人々。バイクの世界での時間軸は、普段の生活の軸とはまったく違った世界だった。夢子さんは結婚して子育てにも奮闘するが、ついに人生の大きな決断をして単身岩手を離れることにする。

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「子供が小さかった頃にタンデムでツーリングとかに行きました。バイクに乗っている時は本当の自分でいられたから自由でしたね。でも色々なことがあり、深く考えて、家を出ようと決断しました」

過去の自分を断ち切るための行動だったからまったく縁もゆかりもない土地に行こうと思って、名古屋を選んだという。当時の愛車だったホンダのAX-1は持って行ったが、なんと盗難に遭ってしまった。しかも実は首の病気で、バイクライディングはドクターストップがかかっていた。その後10年はバイク無しの生活で、とにかくがむしゃらに働いた。出版業界だったのだが、デジタル化に移行する世の中にあって、会社の業績は悪化。そして東北地震があって、彼女の人生観は変化した。

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「名古屋時代にバイクも無くて心の拠り所が無くなってしまったからか、ペットショップで売れ残っていたフレンチブルドッグを飼い始めました。私が引き取らなきゃ殺処分になってしまったかもしれないから助けたつもりだったけど、助けられたのは私でしたね。その頃、犬のネタでブログも始めました。そしてその後の地震で、とにかく生きていることの大切さを痛感しました」

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犬のこうちゃんとの暮らし。バイクもカワサキの250TRを購入して復帰したが、再婚した相手からバイクNGが出て再び手放す。そして名古屋から相模原に引っ越すと待っていたのは二度目の離婚だった。

「岩手の父親が倒れて、母を連れて相模原の橋本に来たのだけれど、結局母は横浜にいる妹の所へ行ってしまい、私はこうちゃんと二人だけになりました。でもこうちゃんも高齢で亡くなってしまい、とうとう一人ぼっち。そんな頃、ブログつながりで、バイクに乗せてくれるという人に巡り合ったんです」

ブログ仲間のライダーはカワサキのZZR250を持ってきてくれた。慎重に乗ってみると、意外に乗りやすい。人生初のオンロードバイクだったが、やっぱりバイクに乗りたい!と強く思うようになった。そしてやはりブログつながりのある他の友人が勧めてくれたこのCB250Rを手に入れたのだ。

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「今回、このCBで出かけるが108回目なんですよ。私、首の病気もあるし、とにかく毎日笑って生きていることが貴重で大切だから、全部数えているんです。これからは、もっとゆっくり時間が経つと良いですね。やっぱりバイクは、私にとって魔法の絨毯なのだと思います」

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夢子さんの話をじっくり聞いたのは、神奈川県の清川村にある「フロッグピット」という名のライダーが良く立ち寄るランチ食堂だったのだが、このお店を切り盛りする夫婦もまた生粋のライダー。そして清川村にある宮ヶ瀬湖は、かつてイーハトーブトライアルを始めたメンバーが主催する関東トライアルクラブの発祥地でもあることを知って、夢子さんは驚いていた。そして筆者である僕は名古屋の出身だから、不思議な縁で繋がっているのだった。それぞれの人生、それぞれのバイクライフをその時代に懸命に生きて、不思議な縁で繋がっていたのだ。

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夢子さんのライディングシーンを撮影するのに、どこか行きたい場所がありますか? と質問すると、「海が見たい」と即答された。その理由は、愛犬のこうちゃんが荼毘に付された後、三浦の海に散骨されたからだという。実はまだ、彼女は自分のバイクで三浦半島に行ったことがなかったのだ。時間はお昼の12時。1月の夕暮れは早くやってくるから、急いで僕らは店を出て三浦半島の森戸神社へと向かった。あの神社は海岸に吐出していて、ペットをお祭りする神社もある。バイクを降りて海岸までもすぐだから、最高の場所なのだ。

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「私、いつまでバイクに乗れるかなぁ。でももう降りないからずっと乗り続けると思います。友達のサポートもありがたくて、時間が経つのがもっとゆっくりだと良いなぁ」

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大丈夫。相棒がバイクなら、自分の時間はコントロールできるはず。次のツーリングは109回目になる夢子さん。その数をどんどん伸ばして楽しいバイクライフをゆっくり長く続けましょう。

ライター プロフィール
森下 光紹(モリヤン)
旅好き野宿好きで日本全国を走り回り、もう足を踏み入れていないエリアがほとんど残っていないと笑う。とにかくバイクで行かないと気が済まないから、モンゴルとカザフスタンの国境まで気の合う友人と行ってしまったこともある。乗って行くバイクはいつの時代もポンコツで、メンテも得意な自称ポンコツ大魔神。本業はカメラマンで、人生行く先々のどんなシーンでも写真に収めるのがライフワークのひとつ。その人生訓は「我が生命は水が如き」という。

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