ライダーインタビュー【モーターサイクル・ザン・パラダイス Vol.27】吉村 武久さん・周さん

掲載日:2025年12月25日 フォトTOPICS    

取材・写真・文/森下 光紹

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Vol.27 吉村 武久・周(ヨシムラ タケヒサ・アマネ)

やっぱり一生忘れられないシーンを追いかけているのが
多くの男性ライダーが持っている大きな特徴なのかもね

人間は動物だ。動く物。動き続けることが宿命で、それが生きているという証明でもあるだろう。そしてさらに、人間は道具を生み出した。乗り物を手に入れた。行動範囲が飛躍的に広がって、世界中を席巻してしまった。

最近、筆者は仕事で子供たちを撮影することが多いのだが、男性幼児は、ほぼ必ず手にミニカーを握りしめている。つまりここが乗り物への執着が始まる原点だ。女性の場合はどこが原点になるのか分からないのだが、男性の場合は明確だ。それはきっと生まれてその後に外へ出ていくべき衝動というDNAの成せる技でもあるのだろう。そして、思春期を迎える頃の出来事が、その後の人生を決定づけてしまうのかもしれない。

吉村さんは、少し古いハーレーダビッドソンが愛車なのだが、バイクに興味を持ったきっかけはあの映画だった。

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「ターミネーター2ですよ。シュワちゃんのファットボーイもカッコ良かったけど、彼が最後まで守り通す少年が乗っていたオフロードバイクにも痺れたなぁ」

あの映画での影響でバイク乗りになった男性は、いったい何人いるのだろうか。そう思うほど、インパクトの強いバイクシーンが、僕も忘れられない一人でもある。当時のファットボーイは、ハーレーの最新モデルではあったが、シンプルな外装はいわゆる原点回帰を狙ったモデルでもあった。フラッグシップは豪華な装備をどんどん装着していく流れにあった時代に、実にシンプルな外観が特徴のビッグツインとして発表されたのだ。簡単に表現すると、古いイメージのハーレーから無駄なパーツを削ぎ落としたモデル。昔はボッバーと呼ばれた公道レーシングモデルを再現したイメージで、世の中に出てきたのだった。

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「最初は国産車のシャドーに乗っていたんですけど、すぐにハーレーに乗り換えました。ビッグツインには手が出なかったからショベルエンジンのスポーツスターを知り合いから譲ってもらったんです。当時はストリートバイクのムーブメントが起きていて、それ以前のバイクブームとは違ったスタイルが流行っていた時代だったですね」

スポーツスターはフリスコスタイルと呼ばれるシルエットで乗り回した。スリムであればあるほど格好良いのがフリスコスタイル。ファッションもアメリカンカルチャーのストリートから生まれたもので、その流れは現代にも通じている。そしてその後は、現在息子の周さんが乗っているFXEに乗り換えた。

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「FXEは自分と生まれ年が同じ1981年型なんです。27歳の時だったかな。やっぱり少し古いテイストが基本的に好みだからビッグツインもショベル時代のモデルにしか目が行かないんですよね。フットクラッチでハンドシフトにしたチョッパーですけど、2年前まで乗っていました。そして息子が乗るって言うから、僕は現在のFLHに乗り換えたんです」

僕が吉村さんに出会ったときは、ノーマルカラーでほとんどストック状態のFLHだった。ブルーのカラーリングが特徴的な1971年モデル。ショベル時代の中期でエンジンはまだ1200ccだった。撮影時はその外装が変更されて、寂れたメッキパーツとなっていた。後部にあった白いサドルバッグは取り外され、シートもシンプルなソロ用。すっきりしたシルエットに変更されていた。

「ノーマル外装は全部保管してありますよ。長距離ツーリングの時にはまた戻すかもしれないですしね。でも普段は今のスタイルのほうが気楽に乗れて僕は好き。普段から良く乗っていますからね。通勤にもこれを使うことが多いですし、大切な仲間と気軽に走る時も、この感じのほうが良い」

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以前の写真を見せてもらうと、ノーマル外装のまま四国を旅した時のものがあった。荷物の積載を考えるとノーマル外装なのだが、普段はもっとシンプルに乗りたい。これが吉村さんの出した答えなのだ。四国一周の旅は、もともと行ってみたかった場所というのもあるが、実は息子の周君に先を越されたと笑う。

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父親にFXEを譲られる以前はホンダのCB400SSに乗っていた周くん。バイク乗りの父親や旅行好きの母親の背中を見ながら育った彼は、なんの躊躇もなくバイク乗りになったというが、まずバイクの前にクルマの免許を取得した。これはお父さんのアドバイスで、「まず、交通の流れや社会的常識を身に付けた上でバイクに乗ってほしい」というもの。

「やっぱりシンプルなバイクが好みなんですけど、ヤマハのSRではなくて、ホンダのCBにしました。乗っている人が少ないのも何だか魅力だったし、乗りやすさは抜群ですしね。それで四国に弾丸ツーリングしたり、磐梯吾妻まで友人と走ったりと、親父より走る人になってしまったかもしれないなぁ」

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周くんは2年前に免許の限定を解除して、現在二人は共にハーレー乗りとなった。普段はあまり一緒に走るということはないのだが、一度北海道を走ってみたいと口を揃えて言う。お互いに社会人。長旅のプランを立てるのはなかなか大変ではあるのだろうが、是非実現していただきたいものだ。

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「普段はベスパも気軽に乗っているし、本当に普段の足としてバイクは使っているから、今後もこのスタンスは変わらないでしょうね。バイクは家族や仲間と同じ存在だと思います」

ベスパは友人の美容師が所有していて、お店のオブジェになっていた。もちろん最初は不動車だったが、メンテナンスを施して快調に走ることができるようになった。ハーレーのFLHも手に入れた最初は様々な問題を発見したが、それもすべてメンテナンスして現在絶好調。バイクはやはり走らなくてはバイクじゃない。そして普段から良く乗ることが重要だ。

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親子でバイクを楽しむ姿。それはとても素敵な理想像でもある。バイク乗りの父親は、息子にもその素晴らしさを感じてもらいたいと、必ず思っているものなのだ。そして、そのバイクを通して様々な経験を積み上げてほしいと思っている。

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生きる上での困難も、素晴らしさも、自分の眼の前で全て起きる。一人でバイクを走らせるということで学ぶのは、とても大きくて意味のあるもののはずだ。バイクは前を向いて走るだけの機械である。扱いをあやまれば危険な面も顔を出す。しかしそれが作り出す様々なシーンは、どの映画のワンシーンよりも自分にとってドラマチックなものになっていく。すべてのライダーにとって。

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ライター プロフィール
森下 光紹(モリヤン)
旅好き野宿好きで日本全国を走り回り、もう足を踏み入れていないエリアがほとんど残っていないと笑う。とにかくバイクで行かないと気が済まないから、モンゴルとカザフスタンの国境まで気の合う友人と行ってしまったこともある。乗って行くバイクはいつの時代もポンコツで、メンテも得意な自称ポンコツ大魔神。本業はカメラマンで、人生行く先々のどんなシーンでも写真に収めるのがライフワークのひとつ。その人生訓は「我が生命は水が如き」という。

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