ライダーインタビュー【モーターサイクル・ザン・パラダイス Vol.19】富樫 信さん

掲載日:2025年08月29日 フォトTOPICS    

取材・写真・文/森下 光紹

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Vol.19 富樫 信(とがし まこと)

日本が、どの国よりも圧倒的に元気だった時代
そんな時期に生まれてきたバイクたちが大好きだ

北海道のライダー第二弾は、かなり個性的な人。徹底的に旧車好きがエスカレートして、なんとミュージアムまで運営しているのだから恐れ入る。でも全国に転々とある個人が運営するバイクミュージアムは、みなそれぞれ個性的なものだ。

富樫さんは、本業は評判の良い歯科医でバイクは完全に趣味なのだが、古いバイクを集めに集めて個人ミュージアムを作ってしまった。集まったバイクをただ保管するのではもったいないから、広く様々な人に見てもらうべく、小さな町の一角にパラダイスを展開しているのだ。しかし、開館は現在年に一度だけ。それには少々残念な理由があった。

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北海道の中富良野。有名な美瑛の丘から南下して、最初の町にそのミュージアムはある。元々は旭川信用金庫の中富良野支店だった建物を富樫さんが借り受けてミュージアムを開館させた。現在の収蔵数は100台を超えて、その年代も1950年の初頭から80年代車まで様々なモデルが展示されている。オープンは2015年。当初は毎週末にオーナーの富樫さんが広く来訪者を受け入れていたのだが、様々な人の中には自分本位の身勝手な意見の持ち主や迷惑行為も見受けられることもあり、対応に困った富樫さんはついに一般公開日は年に一度、6月末の「北海道クラシックミーティングin富良野」が開催される日のみと設定することにしたのだと言う。

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「元々営利目的のミュージアムではないし、集まったバイクを環境の良い保管場所に置いておきたいというのが本心ですから。でも今後はどうしようかなぁとも考えてはいますよ。ずいぶん貴重なバイクもありますしね。自分の楽しいバイクライフを続ける上で魅力的な方法を現在は模索中という感じです」

少々館内を見せてもらったのだが、展示車両の中にはなんと日本で3台しか生産されなかったというシルボーン製の60ccモデルや、北海道にはたぶん現存するのが1台と言われるパール製のDK250などというレアモデルも展示されていた。

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富樫さんは現在47歳。昭和50年代の生まれだから、ここに展示されている旧車はほとんど彼のリアルタイムでは接することのなかったモデルばかりだが、大学生の時代にホンダ最初のスーパーカブC100に乗ったことを皮切りに旧車に傾倒。毎年真夏に開催されている北海道ミーティングに出品させるモデルを様々仕上げるうちに、どんどんと所有するバイクが増えてしまったと笑う。

「最初は20歳くらいだったかなぁ。C100が楽しくて、その後函館で古いトーハツ(東京発動機)のバイクを見つけてレストアしたんです。その後凄い勢いで集めだしたのですが、北海道って、古いバイクが大切に保管されているんですよ。半年しか乗れないし冬は雪で閉ざされてしまうから、屋外に放置というわけにはいかないですからね。古いクルマも数多く残っているのは、そんなわけなんですよ」

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富樫さんが現在足として乗っているのはラビットのS601というモデルだ。ラビットは富士重工(現在はスバル)がかつて生産していたスクーターで、ホンダのカブが登場するまでは日本中に走っていた庶民の足だった。601は排気量が200ccで、エアーサスペンションを装備した高級モデル。現在でもラビットは愛好家が多いが、調子の良い601はそれほど多くはない。

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「僕のは絶好調ですよ。普通に足として使えるし、すごく楽しい。ラビットを作った富士重工って元々は中島飛行機といって、ゼロ戦のエンジンとかも生産していた会社だったから製品のクオリティが高いですよね。だから今でも結構な数が走っているでしょ。北海道だと旧車ものびのび走らせられるから、素晴らしいバイクライフが続けられますよ」

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ミュージアムを後にして、富樫さんのラビットに付いて行くこと20分。隣町の住宅街を抜けた先の倉庫にたどり着いた。そこにはまたまた数多くのバイクが保管されていたのだが、富樫さんの所有車だけではなく、仲間のバイクがぎっしりと並んでいるのだった。

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「ここでみんなとバイク談義している時間が一番楽しいかなぁ。あ、そうだ。今年の北海道ミーティングに出品させるためにレストアしているバイクがあるんですけど見ますか? 1954年型のツバサ工業製T80というモデルです」

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ガソリンタンクにはTUBASAのロゴがある。一見英国車のトライアンフにも見える外観だが、完全な純国産モデルなのだ。1950年代には100社を超えるバイクメーカーが日本には存在したと言われるが、ツバサもそんな会社のひとつである。富樫さんの年代では懐かしいという感情は沸かないはずだが、実に楽しそうに当時のバイクに命を吹き込んでいるのだ。

「何だか、元気があるもんね。当時のバイクって。一生懸命な感じが良いでしょ。若々しいですよ。放っておけばただの鉄くずになってしまうから、やっぱり復活させてあげたいですよね」

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ラビットを走らせている後ろ姿も、ツバサ号を押し引きしている時も、富樫さんは実に楽しそうだった。昭和のバイクの中でも、特に50年代や60年代のモデルには手作り感が色濃くあって、それは元々日本人の持つマエストロ的な感覚とでも言うべきイメージが反映されているのではないだろうか。忘れられそうで、忘れてはならない大切なことを、旧車はきっと教えてくれるのだ。

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以前の北海道ミーティングでは、持ち込んだホンダドリームSAで見事グランプリに輝いた富樫さん。今年は再生なったツバサ号で出品する予定である。

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ライター プロフィール
森下 光紹(モリヤン)
旅好き野宿好きで日本全国を走り回り、もう足を踏み入れていないエリアがほとんど残っていないと笑う。とにかくバイクで行かないと気が済まないから、モンゴルとカザフスタンの国境まで気の合う友人と行ってしまったこともある。乗って行くバイクはいつの時代もポンコツで、メンテも得意な自称ポンコツ大魔神。本業はカメラマンで、人生行く先々のどんなシーンでも写真に収めるのがライフワークのひとつ。その人生訓は「我が生命は水が如き」という。

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