ライダーインタビュー【モーターサイクル・ザン・パラダイス Vol.16】村岡 拓也さん

掲載日:2025年07月08日 フォトTOPICS    

取材・写真・文/森下 光紹

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Vol.16 村岡 拓也(むらおか たくや)

初心、忘れることなかれ!
バイクは、世界がどんどん広がる魔法の乗り物

生物は生きるために必死である。人もまた生まれたその瞬間から、母親のおっぱいにすがりつき、お腹が減ればおおいに泣いて「生きたい」ことを主張する。

身体的な成長に伴って、五感を働かせながら自分の生き方を模索する旅が始まる。そして様々な経験から自分らしさを獲得していくのだ。

教育には2種類あって、一つはそれぞれの個性を伸ばす目的で、興味の対象を様々な形で実践していくもの。そしてもう一つは、定めた基準に統一させてグローバル化し、集団としての力をコントロールしやすくするものだ。現代人は、その両方を学びながら成長していくのだが、その過程に「バイク」がある人は、ある意味で混乱するのではないかと時々思う。

バイクは、きっとそれまでに接してきたアイテムの中で、最も圧倒的で個性的なものだったはずだ。かなり練習を積まないと発進させることすらままならない上に、その後の奥の深さもまた底無しだ。筆者など、バイクに乗り出してからすでに50年以上経過したが、未だに到達点のない大きな魅力の沼から抜け出せないままである。つまりそれは、混乱したままの状態とも言えるだろう。しかし、これだけは自信を持って言える。バイクは、強く生きるためのアイテムだ。

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村岡さんの愛車はハーレーのスポーツスターである。実は初めて会ったその日には、現在所有するモデルよりも新しいスポーツスターに乗っていた。僕が週の前半だけ勤務するガソリンスタンドに給油のために立ち寄った彼に、つい声をかけたというのが始まりだった。

その時の村岡さんは、とても楽しそうな顔をしていた。きっと、たまの休みをバイクライディングに当てて楽しい時間を過ごしたに違いない。いや、これから彼女に会いに行くのかな? まぁ分からないけれども、とにかくとても朗らかな表情だったのだ。

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「僕、スポーツスターが好きなんです。これはエンジンがラバーマウント化された2009年モデルですけど、本当はもっと古いリジットマウントモデルに乗りたくて。でも旧車が高くなってしまって、なかなか手が出ないですよねー」

日本人特有の無いものねだりというか、最近の旧車ブームもあって、確かに以前のスポーツスターは相場が上がっている。僕はその時代のモデルにずいぶん長く乗っていたことを伝えると、どんどん話がはずんでしまった。

連絡先を交換して別れた数日後、彼から連絡があり、なんとバイクを買い替えたと言うのだ。手に入れたのは2000年モデルの旧型スポーツスター。本当に乗りたいバイクを勢いで購入してしまったのである。

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彼は子供の頃からバイク好き。特にアメリカンカルチャーに興味があったことから、乗ってみたいバイクもアメリカンモデルだった。最初に手に入れたのはバイトの先輩から譲ってもらったホンダのマグナ50である。小さいながらも完璧なアメリカンスポーツというシルエットで今でも人気のあるモデルに乗り、その2年後には普通二輪免許を取得して、やはりホンダのスティードに乗り換えた。

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「徹底的にチョッパーだったカスタムのスティードはお気に入りだったけど、車検を通すことがかなり困難でした。それで次は少し路線変更して、ヤマハのSR400にしたんです。当時は、それまでのアメリカン一辺倒じゃなくて、他のシルエットや乗り味も興味が湧いてきたので。SRはセパハンとバックステップに交換して、カフェレーサースタイルにして乗っていました」 

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SR400はインジェクション吸気となった最終モデル。ギネスブックにも載る長寿モデルにしばらく乗ったが、やはりスポーツスターに乗りたいという熱い想いは変わることがなく、一昨年の12月に大型免許を取得して、ついに最初のスポーツスターを手に入れた。2009年のインジェクションモデルは思いの外中古車の相場が安く、若い彼には手の届きやすいモデルだったのだ。しかし、やはり第一候補の旧型スポーツスターへの憧れはまったく変化しなかったようである。

「今年の4月に、とうとう購入してしまいました。やっぱり我慢できなかったというか、理想的な1台に巡り合ってしまったという感じですかね。年式は古いですけど、前オーナーが丁寧に乗っていたから程度は抜群です。カラーリングも古いAMF時代の復刻カラーが純正採用されたモデルだったから旧車感が抜群ですし、乗ってみるとやっぱり野蛮で荒々しい。ついに手に入ったー! って、嬉しくてしかたがなかったですね」

村岡さんは強度の花粉症ということで、購入当時はほとんどまともに乗ることができなかったと笑うが、花粉が落ち着くと爆発的に乗り出したという。仕事のない休日はほとんどこのスポーツスターで出かけて行くというくらい。様々な時間帯で乗るたびにその魅力に引き込まれてしまうと語った。

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「住んでいるのは神奈川県の伊勢原ですけど、横浜方面にはよく行きますね。もう、なんだか手足のように使えて自分の一部みたいになってきた気がする。遠くに行ったりするとまた違う一面も楽しめそうだし、今はもうめちゃくちゃワクワクしてますね」

一番行ってみたい場所は? と尋ねると、福島県の裏磐梯だと言う。五色沼に映り込む磐梯山。小野川湖や桧原湖、その他の水辺を駆け巡るルートはどんな季節に訪れても最高の場所である。と、彼に伝えると、「そうなんだろうなぁー」と遠くを見つめていた。

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少年期は仮面ライダー等の戦隊ものが大好きで、そのまま乗り物好きへと移行。バイクに乗り出すと、アメリカのMCモノのシーズンドラマを良く見るようになり、その世界観にも憧れを持つようになった。バイクが繋ぐ絆とか友情とか、こだわりとか。ドラマの中で描かれる世界には感化されたが、現実の世界では、どうにも違和感を持ったことも事実だという。

「僕はもっと自由に走りたい。ルールに縛られてチームで走るのも、時には楽しいのかも知れないですけど、求めているのはそこではないと思いました。仲の良い奴とつるむのは全然問題ないですけど、基本はやっぱり一人かなぁ。バイクって自分だけの相棒だから、そのコンビネーションで色々なことを吸収したいのでしょうね。まぁ、またもっと古いショベルエンジンのハーレーとかに乗りたくなるのかもしれないですけど、今はとことんこのスポーツスターと一緒にどこにでも行きたいと思います」

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冒頭に、成長過程でバイクに出会うと混乱するかも知れないと書いた。その理由は、すべてのことを自分自身で解決していかなくてはどうにもならない、野蛮な乗り物だからである。

間違った使い方をすれば他人をも巻き込む凶器になるし、自分も危険に晒される。集団の中で皆と同じようにやっていけば基本的に問題ないという種類のアイテムとは真逆の性格を持つ、ある意味で武器にも通ずるアイテムだ。しかし、人を成長させるための要素を本当に数多く持っているとも思うのだ。

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村岡さんは、「いつも自由に走っていたい」と言った。だからこそバイク、そして少し古いスポーツスターを選んだのだ。今日もまたそんなバイクに跨って、どんな景色にめぐり逢い、どんな出会いが待っているのだろう。そしてそのワクワク感は、50年以上バイクに乗り続けている僕も彼も、まったく同じ感覚であることは間違いない。

ライター プロフィール
森下 光紹(モリヤン)
旅好き野宿好きで日本全国を走り回り、もう足を踏み入れていないエリアがほとんど残っていないと笑う。とにかくバイクで行かないと気が済まないから、モンゴルとカザフスタンの国境まで気の合う友人と行ってしまったこともある。乗って行くバイクはいつの時代もポンコツで、メンテも得意な自称ポンコツ大魔神。本業はカメラマンで、人生行く先々のどんなシーンでも写真に収めるのがライフワークのひとつ。その人生訓は「我が生命は水が如き」という。

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