掲載日:2020年01月10日 フォトTOPICS
写真/磯部 孝夫 文/伊丹 孝裕
ダンロップからツーリング用ラジアルタイヤのフラッグシップ「スポーツマックス・ロードスマートⅣ」が登場。それに先駆けて、2019年12月に試乗会が開催された。
今回、その舞台になったのは宮崎県宮崎市郊外のワインディングだ。こうした試乗会の場合、通常はテストコースやサーキットで行われるのが一般的ながら、あえてそうしなかった理由を住友ゴム工業タイヤ技術本部の原 憲悟技術部長から次のように説明いただいた。
「このタイヤの開発にあたり、我々は“理想のツーリングタイヤとはなにか?”ということを徹底的に議論しました。そのためにまず、従来製品のロードスマートⅢにスタッフ全員で乗ったのですが、その時に挙がった“ここをもう少し”とか“あそこがこうなれば”という声をひとつひとつ改善していった結果、ロードスマートⅣのスペックに行き着いたのです。完成度には自信がありますから条件が整っているクローズドコースよりもあらゆる路面と向き合わなくてはならない一般道で評価して頂きたい。そう考え、今回のコースをご用意しました」
開発のキーパーソンであるタイヤ技術本部の大谷 匡史主査もまた「ツーリングタイヤの新基準を作る。そういう思いでテストを繰り返し、達成したつもりです。長距離を走っていれば楽しい時間ばかりではなく、雨に濡れたり、劣悪な路面を走らざるを得なかったり、疲労や睡魔に見舞われたりと辛いことも少なくありません。そうした場面でもいかに快適に走り切れるか。それを追求したのがロードスマートⅣであり、基本性能の底上げのみならず、新しい価値も創造できたと考えています」と熱く語る。
事実、試乗コースを下見した限りでは、路面コンディションは整っているとは言えないものだった。ダンプカーの往来が多いせいか、ひび割れや凹凸はそれなりにあり、コーナー前後には減速帯も点在。おまけにその日は気温も路面温度も低く、そこに温暖な宮崎のイメージはなかった。
そんな中、車両の待機場所には多種多様なバイクが2台ずつ用意され、それぞれにロードスマートⅢとロードスマートⅣを装着。つまり、同じ条件下で比較することができた。
他のジャーナリストとペアを組み、まずはロードスマートⅣを装着したヤマハXSR900で走り出す。1本目の試走ゆえ、比較対象がないにもかかわらず、その第一印象は「お! なんか軽い」というものだった。特にバンク角が浅い場面でそれが顕著で、車線変更やコーナーに向かってリーンさせる時の動きは軽快そのもの。それでいて、必要以上に倒れることはなく、「スッ」と向きを変えた後は「ピタリ」と安定。端的に言えば、とても楽に操ることができるのだ。
技術説明の際、フロントもリヤもプロファイル(タイヤ形状)が見直され、操舵力が軽減されていることは聞いていたがまさにその通り。ロードスマートⅢに乗り換ると、コーナーからコーナーへの切り返しがワンテンポ遅く感じられるほどだった。
そしてもうひとつ特筆すべき差が、ギャップの吸収性だ。減速帯を通過する時にそれは分かりやすく、ロードスマートⅢのそれが「ドンドン」や「ダダダ」だとすれば、ロードスマートⅣは「トントン」や「タタタ」。擬音で表現すれば濁音が少なくなったかのようにまろやかで、身体に伝わってくる振動も明らかに少ない。
ロングランでこれが積み重なれば、疲労やストレスの度合いが変わってくるに違いなく、科学的に実証されたというデータもうなずけるものだった。
いい意味で存在感をアピールしてこない、縁の下の力持ち的なキャラクターがロードスマートⅣのよさである。軽いけれどシャープ過ぎず、乗り心地はいいのに鈍感ではなく、荷重を掛けたり、面圧がどうのという小難しい入力を必要としないのにしっかりグリップして、クルリと旋回。これでウェット性能も引き上げられているというのだから、オールラウンドなタイヤとして極めて高い完成度に到達している。
XSR900の後、車重もパワーもワンランク上がるスズキのスポーツツアラーGSX-S1000Fでもテストしてみたが基本的な特性は変わらない。いずれの場合も自由自在に操れる一体感が好印象だった。
ロードスマートⅢにはなくて、ロードスマートⅣにはあるもの。それが「GT」と呼ばれる重量車向けのタイヤだ。一例を挙げると、ヤマハFJR1300ASなどがそうだが、このモデルの装備車重は296kgに到達。モデルのカテゴリー上、パニアケースに荷物を満載し、タンデムで高速巡航することも十分考えられるわけで、その時にタイヤへ掛かる負担は一般的なモデルとはまったく異なる。
そこでタイヤ内部のブレーカーやカーカスといったパーツが補強された仕様がGTだ。大きな荷重を受けても安定性を損なわない専用スペックのタイヤとして設定されたのである。
今回、まさにそのFJR1300ASに試乗することもできたのだが、ギャップのあるコーナーに深くバンクさせたまま進入しても挙動を一切乱すことなくクリア。抜群のスタビリティを披露してくれた。
ウェット路面こそ、実際に試すことはできなかったものの、開発スタッフの技術説明と実際のフィーリングがここまでピタリと一致しているところをみると、資料にある「ウェットブレーキ性能が10%向上」というデータも信用に値する。
タイヤ選びに迷った時、失敗しない選択肢のひとつだと言える。
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