日本で一番熱い草レースの最高峰「テイスト・オブ・ツクバ(T.O.T)」にマッハで参戦 /#03

掲載日:2019年12月27日 フォトTOPICS    

写真/磯部 孝夫・中村 壮一 取材・文/後藤 武

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「勝利至上主義ではなく、
好きな車両を走らせたい」という思い

テイスト・オブ・ツクバで存続が危ぶまれているクラスがある。ゴトーがマッハで出場しているD.O.B.A.R1、およびD.O.B.A.R2である。ルールブックには参加台数が減少したため、今後休止、統合、再編を検討中と記載されている。つまり来年以降の開催がどうなるかわからないのである。

D.O.B.A.Rとは、「days of bike and roses」の頭文字を取ったもの。つまりバイクとバラの日々という意味だ。元になったのは1962年に公開された「酒とバラの日々」という映画。ジャック・レモンとリー・レミックの2人が演じる夫婦が酒に溺れていく様子を描いた切ない作品だ。同名の主題歌はアカデミー歌曲賞を受賞して現在もジャズのスタンダードナンバーとして知られている。D.O.B.A.Rは、酒をバイクに例えたもの。バイクに溺れて離れられなくなった人達の為のクラスだという意味が込められている。

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D.O.B.A.R1が盛況だった頃、スタート前チェックにはこんなに多くのマシンが集まっていたD.O.B.A.R1クラスの出場車両は、1980年までに生産された指定車両(主催者判断で他の車両も参加可能)のCB、Z、マッハ系(KH、SS)、GS、GT、XJなど。4ストロークは810ccまでボアアップ可能。2ストローク車は生産時排気量の7%まで排気量アップ可能。

実際、D.O.B.A.Rクラスには、バリエーションに富んだマシンが数多くエントリーしていた。オーナーの趣向を凝らした改造がされているものも多く、創意工夫を凝らしたマシンが集う和気あいあいとした雰囲気があったように思う。

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以前はRD400、250の参加も多かった。ヤマハ2ストマニアに人気のモデル。ライトチューンでもセットアップとライダー次第で高いポテンシャルを発揮する。

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これも以前出場していた隅谷守男レプリカのCB750。70年代のレーシングシーンを彷彿させるモディファイだ。

ところがレギュレーションが変わってタイムが上がり始めた頃から、当初出場していたエントラント達が離れ始めてしまった。その後、D.O.B.A.R1クラスの過激な戦いは落ち着いたけれど、台数が減ったことでアルミフレームのレプリカが走るZERO3クラスと混走になった。今度は一緒に走るバイクとの性能差が大きすぎて、またエントラントが離れてしまったのである。

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2018年の予選スタート時のシーン。前列に並んでいるのはD.O.B.A.R2クラスのGL400。隣は混走となるZERO2のRZ250R。D.O.B.A.R2は1980年までに生産されたミドルクラスのマシンが対象。RD250、RG250、GL400、GS400、CB400Fなどが参加できる。2019年11月のレースでは参加台数が2台にまで減少してしまった。

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D.O.B.A.R1クラスの決勝。混走となるZERO3クラスではRC30やGSX-Rなどが参加してくる。こういったバイクのバトルも楽しいのだが、一緒に走ると違和感はある。また、D.O.B.A.R1クラスのマシンはZERO3クラスの上位マシンに周回遅れにされてしまうことも少なくない。

人気が高くなればレベルが向上することは避けられないし、これも時代の流れなのかもしれない。しかし、このクラスには、まだ可能性が残されているのではないかと思っている。

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現在もD.O.B.A.R2に出場し続けている山口選手のホンダGL400。エンジンはノーマル。FCRキャブレターとマフラーを交換し、フロント周りをCB750Fにした程度。ステップやブレーキもノーマルながらタイムは驚異の1分9秒台。以前のようにD.O.B.A.R1と2を混走にするやり方をゴトーが考えたこともあったが、山口選手はコーナーリングスピードの違いなどからこの考えに関しては否定的。ただしこのクラスが再び盛り上がってくれることを真剣に考えている一人である。

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D.O.B.A.R1クラスで走っている新井選手のXS650。古いバイクはベースマシンの価格が高騰してしまっているがXS650は比較的入手しやすいのが魅力。このマシンは排気量を750ccまでアップ。FCRキャブレターを装着。前後18インチにラジアルタイヤを装着している。

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堀内選手のGT750。性能を追求したら通常のチャンバーになるのだが、このマシンは敢えて集合チャンバーをチョイスしているところが、いかにもD.O.B.A.R1らしいところ。予選で一緒に走ったが時間をかけて煮詰めてきたゴトーのマッハにも匹敵するストレートの速さを発揮していた。
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D.O.B.A.R1クラスの常連、三澤選手のXJ750E。部品のないバイクを改造するのは難しいが、逆にそこを工夫してなんとかするのがオーナーの情熱。

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2019年春の大会に出場した和泉選手のGS750。軽量な車体と優れたハンドリングを武器とするマシン。レギュレーションでは17インチのラジアルが許されているが、このマシンのように18インチをチョイスするこだわりのライダーも少なくない。

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今回優勝した菅野選手のZ650。ザッパーは車体が軽いことに加え、810ccという排気量のリミットも関係していて(他のマシンで排気量を上げようとするとリミットを超えてしまうことが多い)、現在このクラスでは最速のマシンとなっている。そのため、一時期はザッパーの参加が多かったが、現在はそのザッパーでさえも少なくなってしまった。

今、独立したクラスで開催されたとしたら、レースとしての敷居はとても低くなる。過去出場していた人達の何割かは戻ってくることを考えることだろう。モンスタークラスの過熱ぶりを見て手を出せずにいた人達の入門クラスになる可能性もある。これだけ人が集まるイベントの中に出場しやすいクラスが出来るとしたら、それはとても魅力的なことだと思うのである。

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ゴトーのマッハと三澤選手のXJ750Eのバトル。同じクラスのマシン同士の場合は速度差も少ないため競り合っていても余裕が持てる。

これからD.O.B.A.R1、2クラスがどうなるか検討が行われることだろう。テイストのコンセプトを最も強く表しているこのクラスの存続を強く願う。もしも廃止などが検討されているのであれば、その前に一度、単一クラスでの開催など、何かもう一度このクラスを盛り上げる為の手段を検討していただきたいものだと思う。

その時はバイクブロス編集部をあげて全力で応援プロジェクトを実施する(してくれるはずである。たぶん)。

この原稿を書くにあたり、D.O.B.A.R1,2クラスの方にお話を聞いたり、写真をいただいたりした。そこでD.O.B.A.R2に出場している山口大輔選手からこんな言葉が出た。

「タイムや勝利至上主義ではなく、自分の好きな車両を走らせたい、という楽しみ方をする方が集まって、多彩な車種で走れたらいいなあと思っています」。山口選手の言葉は、このクラスのあるべき方向を指し示している。

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