掲載日:2026年05月04日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/小松 男

KAWASAKI Ninja ZX-4RR

他がやっていないことを、新たにチャレンジすること。それはビジネスの世界だけでなく、どの分野でも難しいことだ。真似をすることですら、労力を削るのに、成功するかしないかの問題に対し、一から始めなくてはならないのは、精神的なプレッシャーも大きいことだろう。
しかし、カワサキは、いつの時代も、その壁を乗り越えてきたブランドだといっても過言ではない。
割と新しい話でいえば(そうでもないが)、レーサーレプリカ全盛期だった80年代終盤に、あえてオーソドックスなスタイルでまとめたゼファーを発表し、それがきっかけとなってネイキッドブームを巻き起こしたことや、ビッグスクーターがマーケットをけん引していた頃は、どのメーカーもラインアップから外れていた250ccフルフェアリングスポーツモデル、ニンジャ250を導入し、ヒットさせるとともに、一つの指標といえる存在にまでなった。

今回取り上げる400ccクラスのフルフェアリングスポーツモデルにおいて、不在だった4気筒モデルとして登場したニンジャZX-4RR(以下ZX-4RR)もまた、そうした系譜の延長線上に立ち、カワサキスピリット入魂の一作といえるモデルだと私は考えている。
今春開催されたモーターサイクルショーにおいて、ホンダからコンセプトモデルとはいえ、市販化を強く意識させる4気筒フルフェアリングスポーツモデルが展示されたこと、そしてイタリアの名門ブランドであり、現在はカワサキ傘下にあるビモータから、ZX-4RRと共通項も見られるフルフェアリングスポーツ、KB399/KB399ESが発表されるなど、市場には再び“多気筒スポーツ”の気配が漂い始めている。
その流れを踏まえ、先駆者としてのZX-4RRを改めて検証する価値は高いと判断した。

カワサキの400ccフルフェアリングスポーツには、扱いやすさを軸にしたニンジャ400がラインアップされている。低〜中回転域のトルクを重視した並列2気筒エンジンと、日常域での快適性を意識したライディングポジションにより、スポーツ性と実用性を高次元で両立しているモデルだ。
それに対し、ZX-4RRは思想そのものが異なる。搭載されるのは399ccの水冷並列4気筒エンジンで、ラムエア加圧時には最高出力80PS(※非作動時は77PS)を発生。高回転域まで一気に吹け上がる特性は、このクラスとしては異例と言っていい。最高回転数は1万5000rpm級に達し、サウンド、フィーリングともに“ミドルクラスを超えた”領域に踏み込んでいる。

さらに足回りに目を向けると、ZX-4R SEがショーワ製SFF-BPフロントフォークとホリゾンタルバックリンク式リヤショックを採用するのに対し、ZX-4RRではリアにショーワ製BFRC-liteショックを装備している点が大きな違いだ。ピギーバック式ガスショックであるBFRC-liteは、高負荷域における減衰特性の安定性と路面追従性に優れ、よりスポーツ走行に適した特性を持つ。
フロントフォークについては、ZX-4RRでは伸び側減衰力およびプリロード調整が可能となっており、リアとの組み合わせによって足回り全体のセッティング自由度は大きく高められている。これによりストリートでの扱いやすさを確保しつつ、サーキット走行まで視野に入れた最適化が可能となっている点は、このモデルの大きな特徴と言えるだろう。

電子制御面でも抜かりはない。トラクションコントロール(KTRC)、パワーモード切替え、ライディングモード統合制御などを備え、ライダーのスキルや路面状況に応じた最適化が可能だ。こうした装備群は単なる“豪華装備”ではなく、高出力・高回転型エンジンを安全かつ自在に扱うための必然ともいえる。
そして2025年モデルでは、スマートフォン連携機能がアップデートされ、専用アプリ「RIDEOLOGY THE APP MOTORCYCLE」による音声コマンド操作やナビゲーション機能に対応。従来は“走りに特化した尖り方”が際立っていたZX-4RRに、日常域での利便性という新たな価値が加えられた点も見逃せない。

総じてZX-4RRは、同門のニンジャ400とは明確に棲み分けられた、“ストリートで扱えるレーシングマシン”という立ち位置にある。スペックのみならず、その思想と作り込みにおいても、400ccクラスの枠を超えた存在であることは間違いない。

ZX-4RRの実車を目の前にすると、250ccクラス並みにコンパクトにまとまっており、体格を問わず多くのライダーに受け入れられそうな印象を受ける。だが、跨った瞬間にその印象は裏切られる。
高く後方にセットされたステップと、低く構えたセパレートハンドルが生み出すライディングポジションは、明確にタイト。
その姿勢は、フラッグシップであるZX-10RRを彷彿とさせるほどに本気だ。しかし装備重量189kgという軽さもあってか、過剰な威圧感はない。このあたりのバランス感覚は見事と言っていい。

セルボタンを押すと、やや長めのクランキングののちエンジンが目を覚ます。400cc4気筒フルフェアリングという、しばらく不在だったジャンル。その感触を探るようにクラッチをつなぎ、走り出す。
正直に言えば、もっと気難しいかと思っていた。だが実際には違う。排気量なりのトルクがしっかりとあり、発進から中低速域までスムーズに車体を押し出す。日常域で神経質になるような場面は少ない。

市街地では想像以上に扱いやすい。前傾はきついが、それがフロント荷重を自然に生み、ターンの初動が軽い。ただし、フロントに頼りすぎる乗り方をすると破綻しやすいのも事実。腕の力を抜き、腹筋、背筋、つまり体幹で支える、このあたりは、しっかりとスーパースポーツの作法だ。
クイックシフター(KQS)の完成度は高い。アップ/ダウンともに節度があり、気持ちよく決まる。4気筒ならではの伸びやかなサウンドを背に、回転をつないでいく時間は、間違いなくこのバイクのハイライトのひとつだ。

高速道路に入ると、このエンジンの本質が顔を出す。6000rpm付近でも十分に走れるが、それはあくまで“表層”に過ぎない。回していくほどにパワーが乗ってきて、上へ上へと伸びていく。ラムエアが効いてくる領域では、その加速は一段と鋭さを増す。10000rpmを超えたあたりからが、明確に“楽しいゾーン”だ。
ワインディングもまた秀逸だ。リアを使って向きを変える走りでも、フロント主体で切り込む現代的な走らせ方でも、どちらにも応えてくる懐の深さがある。足まわりの質が高く、ラインの自由度が高い。気がつけば、もう一度、もう一度とコーナーに入りたくなる。

本来であればサーキットで限界域を試すべきバイクだろう。それは間違いない。ただ今回はあえて、市街地・高速・ワインディングという現実的なシーンで走らせた。そこで見えてきたのは、「日常で付き合えるスーパースポーツ」という側面だ。
90年代、この手の4気筒スポーツは確かに存在していた。そして多くのライダーを夢中にさせていた。ZX-4RRは、その記憶を呼び起こしながらも、現代の性能として再構築された存在だ。懐かしさだけでは終わらない、確かな進化がある。
普通自動二輪免許で扱えるモデルとしては、間違いなく最高峰のパフォーマンスを持つ一台だ。大型に行かずとも、ここで完結してしまう。そう思わせるだけの説得力がある。
もし手に入れたならば、ぜひクローズドコースに持ち込んでみてほしい。レーシングスーツなど装備を整え、遠慮なく回してみる。そのとき改めて、サーキットというステージに立つために開発されたことや、ZX-4RR本来の真価が見えてくるはずだ。

399cc水冷並列4気筒エンジンを搭載し、最高出力は77PS(ラムエア加圧時80PS)を発生。高回転域まで鋭く吹け上がる特性を持ち、400ccクラスとしては異例のパフォーマンスを実現している。

フロントフォークはショーワ製SFF-BPを採用。φ37mm倒立フォークにより高い剛性と安定性を確保する。ブレーキはデュアルディスクにラジアルマウントキャリパーを組み合わせ、スポーツ走行に対応する制動力を備える。

シャープなツインLEDヘッドライトとラムエアダクトを組み合わせたデザインを採用。基本構成はZX-4R SEと共通だが、カラーリングやグラフィックによりRRならではのスポーティさが強調されている。

軽量かつ高剛性なスイングアームに加え、ワイドなリアタイヤを装着。サイレンサーは車体右側に配置され、マスの集中化と排気効率を両立。全体として運動性能を重視した構成となっている。

セパレートハンドルを採用し、低く構えたポジションを形成。トップブリッジは肉抜き加工が施され、軽量化とともにレーシーな雰囲気を演出するコクピットまわりとなっている。

左側スイッチボックスには各種電子制御の操作系を集約。ライディングモード切替やトラクションコントロール調整に加え、ラップタイマー機能の操作にも対応し、走行中の操作性を確保している。

シート高は800mmとされ、スポーツモデルとして標準的な数値。ライダーシートはホールド性を重視した形状で、パッセンジャーシートは分割式を採用し、用途に応じた使い分けが可能となっている。

シャープに絞り込まれたテールデザインを採用し、軽快な印象を強調。ナンバープレートホルダーは脱着可能な構造となっており、サーキット走行を意識した設計がなされている。

ステップは高く後方に配置され、積極的なスポーツライディングに適したポジションを形成。ヒールプレートを備え、車体との一体感を高める。クイックシフター(KQS)は上下対応が標準装備される。

4.3インチフルカラーTFTディスプレイを採用。表示パターンの切り替えが可能で、走行状況に応じた視認性を確保する。スマートフォンアプリ「RIDEOLOGY THE APP MOTORCYCLE」との連携にも対応する。

ZX-4RRにはショーワ製BFRC-liteリヤショックを専用装備。ピギーバック式ガスショックにより減衰特性の安定性に優れ、サーキット走行にも対応する高い追従性とコントロール性を実現している。

パッセンジャーシート下には最低限の収納スペースを確保。車載工具や小物類を収める程度の容量ながら、日常使用における利便性にも配慮された設計となっている。








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