【スズキ GSX-8T 試乗記】温故知新、その先へ。美しさと走りを極めた一台

掲載日:2026年02月27日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/小松 男

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SUZUKI GSX-8T

昨秋開催されたジャパンモビリティショーで日本初公開され、発売前に1000台を超すオーダーが入ったというスズキの超注目モデル【GSX-8T/8TT】。ネオレトロスタイルでまとめられた飛び切りのスポーツモデルだ。

現代的解釈をまとった名機
人の心を揺さぶる存在

「新しいものは良い」。

それはモーターサイクルに限らず、あらゆる分野で繰り返し語られてきた価値観だ。

しかしその一方で、時代を超えて求められ続けてきたものがある。
それが“懐かしさを感じさせるクラシック”という存在である。

一見すると相反する概念のようだが、それらを結びつける言葉がある。

――【温故知新】。

過去の事実や知識、伝統、経験を深く掘り下げ、そこから新たな価値や道理を見いだすこと。
人類の進化は、まさにこの反復の積み重ねによって成し遂げられてきた。

なぜこの書き出しから始めたのか。
それは、本稿で紹介するスズキのニューモデル、GSX-8Tが、まさにその体現ともいえる存在だからだ。

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1960年代に生まれた名車、通称タイタンことスズキ T500の意匠からインスピレーションを受けたデザイン。
いわゆるネオクラシックセグメントに属するモデルである。

しかし、実際に対面し、そして走らせてみると――

そこに広がっていたのは、単なる懐古ではない。想像とは異なる、もう一段深い世界観だった。

今、最注目株と噂されるスズキGSX-8T。
その実力を、試乗インプレッションとしてお伝えしていこう。

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スズキ GSX-8T 特徴

当時のフラッグシップモデル
その走りは強烈だった

ジャパンモビリティショー2025で日本初公開となったGSX-8T/8TT。

その場に居合わせた私にも、来場者の関心の高さは明確に伝わっていた。だが、先日開催されたメディア向け説明会で明かされた数字は、それをさらに裏付けるものだった。すでに年間販売目標を大きく上回る、2モデル合計で1000台超の受注を得ているというのだ。

近年、各メーカーが往年の名車を現代的に再解釈し、市場へと送り出している。いわゆるネオクラシックの潮流である。

GSX-8Tは、1968年に登場したスズキの伝説的モデル、通称タイタンことスズキ T500からインスピレーションを受けたと説明されている。

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だが正直に言えば、第一印象ではその系譜を強く感じ取ることはできなかった。

なぜならタイタンは、当時としては画期的な量産2ストロークビッグツインを搭載し、スズキの技術力を世界に示したフラッグシップだったからである。その存在は、単なるスタイリングアイコンではなく、“走り”そのものが強烈なインパクトを放っていた。

確かにGSX-8Tもツインエンジンを採用し、タイタンを想起させるオレンジのカラーリングも用意されている。だが、造形全体を俯瞰すれば、安易な復刻とは一線を画している。率直に言って「似ている」と断言できるものではない。

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しかし――。

タイタンを知らずとも、このマシンが放つ存在感は直感的に伝わる。
理屈抜きに「カッコいい」と思わせる造形力があるのだ。

しかもベースとなったのは、俊敏さと扱いやすさを高次元で両立したストリートファイター、スズキ GSX-8S。その素性を知れば、走りへの期待が高まるのは当然のこと。

では実際にGSX-8Tを走らせたとき、何を感じたのか。
その走りの本質に迫っていこう。

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スズキ GSX-8T 試乗インプレッション

ネオクラの装いに宿る
俊足スプリンター

T500をモチーフとしたネイキッドモデル、GSX-8T。
そして、70〜80年代に活躍したロードレーサーをイメージし、ビキニカウルやアンダーカウルを備えたGSX-8TT。どちらに試乗するべきか、正直なところ迷った。

だが、開発陣のある言葉を思い出した。
「ビキニカウルは当初オプションパーツとして開発していたが、想像以上にスタイルが良く仕上がったため、独立したモデルとして発売することになった」というものだ。

それならば、まずは基本形から乗るのが筋だろう。
そう考え、今回はGSX-8Tを選択した。

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新型車説明会などで実車に触れたことはあったが、やはりイベント会場で見るのと、実際のストリートに置かれた姿とでは印象が異なる。日常の風景の中に佇むと、このマシンの造形はより自然に、そしてリアルに立ち上がってくる。

「新しいものは良い」。

試乗車はオレンジカラー――正式名称はキャンディバーントゴールド。
発色は鮮やかで、光の当たり方によって陰影が豊かに変化する。その存在感は強く、思わず視線を引き寄せる力があった。

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車両にまたがり、スズキイージースタートシステムのワンプッシュでエンジンを始動する。
スペック上のシート高は815mm。ベースとなるスズキ GSX-8SやGSX-8TTより5mm高い数値だが、これはタック&ロールシートの形状による差とのこと。実際に跨ってみると足つき性の違いはまったくと言えるほど感じられない。

1速に入れ、クラッチを丁寧につなぐ。
車体は拍子抜けするほど自然に、するりと前へ動き出した。低回転域から十分なトルクが立ち上がるため、エンストの不安は皆無に近い。

そもそもベースであるGSX-8Sは、扱いやすさとスポーツ性を高次元で両立した完成度の高いモデルだ。ハンドル、ステップ、シートというライディングの三要素の位置関係は、8T、8TT、8Sで共通とされている。

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にもかかわらず――。
ペースをわずかに上げた瞬間、微妙なフィーリングの差が立ち上がってきた。

数値では説明できない、あの違和感とも期待ともつかない感触。
それはいったい何に由来するのだろうか。

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ストリートでは、その快速スプリンターぶりが際立つ。

デザイナーの強い意向で実現したバーエンドミラーは、十分な後方視界を確保しながら振動によるブレも抑えられている。造形上のアクセントであると同時に、実用性も高い。ディテールに対する妥協のなさが感じられる部分だ。

高速道路で郊外へと向かう。
加速は鋭く、合流も追い越しも余裕がある。ただしネイキッドゆえ、巡航時には相応の走行風を受ける。ビキニカウルを備える8TTや、伏せれば意外なほど風の影響が少ない8Sと比べれば、快適性は一歩譲る印象だ。

だが、高密度ウレタンフォームを採用したシートは秀逸で、長時間走行でも疲労は少ない。単なるスタイル優先ではなく、実用域の完成度もしっかり担保されている。

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ワインディングに入ると印象は一変する。
270度クランクが生む鼓動感は濃密で、スロットル操作に対する応答は極めて素直。切り返しも軽快で、入力に対して過不足なく旋回していく。

走らせ続けるうちに、先に感じていたスズキ GSX-8Sとの違いの正体が見えてきた。タンク形状である。GSX-8Tはややワイドな造形となり、膝の開きが自然と大きくなる。その結果、8Sのように両腿で強くホールドして一体感を高める乗り方とは異なり、よりリラックスしたポジションから上体やステップワークで向きを変えていく楽しさがある。

優劣ではない。
だが確かに、GSX-8Tは“そう乗れ”と語りかけてくる。

当初は「ネオクラシックの装いをまとった最新スポーツモデル」という印象が先行していた。しかし、モチーフとなったスズキ T500が、当時としては刺激的な大排気量2ストロークツインを武器に、フラッグシップとして名を馳せた存在であったことを思えば、このスポーティさこそが正解なのだと腑に落ちた。

過去をなぞるのではなく、精神を抽出し、現代の技術で再構築する。

それこそが、冒頭で触れた「温故知新」の本質ではないだろうか。

約1週間の試乗期間中、他のテスト車両があったにもかかわらず、自然と手が伸びたのはGSX-8Tだった。日常の中で何度も乗りたくなる。それは単なる懐古趣味ではなく、今この時代の完成度を備えているからに他ならない。

バックオーダー状態というのも頷ける。
GSX-8Tは、過去への敬意と現代の性能を高次元で結びつけた一台として、確かな存在感を放っていた。

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スズキ GSX-8T 詳細写真

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776cc水冷DOHC並列2気筒エンジンは、270度クランクを採用することで鼓動感と強いトラクションを実現。さらにスズキ独自のクロスバランサーが振動を効果的に抑制し、快適性とスポーティさを高次元で両立する。スズキインテークサウンドシステムにより、吸気音まで演出された完成度の高いパワーユニットだ。

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フロントには高剛性の倒立フォークを採用し、軽快なハンドリングと安定感を両立。ブレーキは大径デュアルディスクにラジアルマウントキャリパーを組み合わせ、コントロール性と制動力を高次元で確保する。17インチキャストホイールにラジアルタイヤを装着し、スポーティな走りを足元から支えている。

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フロントマスクの象徴となるのが、T500を想起させる馬蹄型ヘッドライトケース。クラシカルな輪郭を描きながら、内部は高輝度LEDユニットを採用し、被視認性と照射性能を確保する。懐古的な造形と現代技術を融合させたデザインは、GSX-8Tの「温故知新」を端的に物語るディテールだ。

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デザイナーの強い意向により実現した正円バーエンドミラーは、単なる意匠ではなく機能性にも徹底してこだわった装備。適切なステー長と剛性確保により後方視界を広く取り、走行中の振動によるブレも抑制している。クラシカルなシルエットを演出しながら、実用性を犠牲にしていない点が秀逸だ。

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シート高は815mm。タック&ロール仕上げの表皮がクラシカルな雰囲気を演出しつつ、内部には高密度ウレタンフォームを採用することで、長時間走行でも疲労を軽減する。幅にゆとりを持たせた形状は着座時の安心感を高め、ワイドなタンクとの組み合わせで、ゆったりとしたネオクラシックらしいライディングポジションを形成している。

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燃料タンク容量は16Lを確保。ベースとなるGSX-8Sの14Lに対し2L拡大され、航続距離に余裕を持たせている。造形はT500を想起させるワイドなフォルムとされ、存在感を強調。幅を持たせたデザインはニーグリップの感触にも影響し、8Sとは異なるライディングフィールを生み出している。

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ハンドル・シートと共通ジオメトリーを持つステップ位置は自然な前傾を生み、スポーツ性と快適性を両立。左側には双方向対応のクイックシフト機構を備え、クラッチ操作なしでスムーズなシフトアップ/ダウンが可能だ。ワインディングではリズミカルな加減速を実現し、270度クランクの鼓動を途切れさせることなく楽しめる。

【スズキ GSX-8T 試乗記】新鮮さとおしゃれ感で心はビンビンに!

引き締まったテールセクションは、コンパクトなLEDテールランプを採用し、シャープな後ろ姿を演出する。クラシカルなフロントまわりとの対比により、現代的なスポーツイメージを強調。過度な装飾を排したシンプルな造形が、GSX-8Tの“現代的解釈”というコンセプトを静かに支えている。

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リアまわりは高剛性スチール製スイングアームにリンク式モノショックを組み合わせ、しなやかさと安定性を両立。路面追従性に優れ、加速時のトラクションを確実に路面へ伝える。17インチリアホイールにワイドタイヤを装着し、ワインディングでは安心感のある接地感を生む堅実な足まわり構成だ。

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視認性に優れるフルカラーTFT液晶ディスプレイを採用。スピードや回転数はもちろん、ライディングモードやトラクションコントロールなど各種電子制御の状態もひと目で確認できる。クラシカルな外観とは対照的に、インターフェースは最新世代。現代的な操作性と情報量を確保している点もGSX-8Tの大きな魅力だ。

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パッセンジャーシート下には、書類やETC車載器が収まる実用的なユーティリティスペースを確保。日常使いに必要十分な容量を備えている。さらにオプションでシングルシートカウルも用意され、装着すれば一層スポーティなシルエットへと変化。用途や好みに応じたスタイル変更にも対応する。

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バッテリーには小型・軽量なリチウムイオンタイプを採用。鉛バッテリーに比べて軽量化に貢献し、始動性や電圧安定性にも優れる。自己放電が少なく、保管時の電圧低下が緩やかな点もメリット。車体の軽快感と日常での扱いやすさを、目に見えない部分から支えている。

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