掲載日:2025年10月27日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/増谷 茂樹

bimota KB4RC
イタリアはリミニを本拠地に、レース向けのフレームビルダーとして名を馳せ、日本メーカー製のエンジンを搭載したオリジナルマシンも数多くリリースしてきたビモータ。何度かの経営危機を乗り越え、現在はカワサキの支援を受けてマシンの開発を行い、レース活動でも手を組んでいる。
「KB4RC」はカワサキのNinja1000SXの1043ccエンジンを採用。ビモータの得意とするクロモリ製のトレリスフレームに搭載している。2022年に登場したフルカウルの「KB4」のネイキッドバージョンという位置付けだ。

スタイルこそ、丸目ライトのネイキッドだが、ハンドルはセパレートタイプでトップブリッジの下にマウントされている。近年のネイキッドには珍しいカフェレーサー的なスタイルだ。ビモータのオリジナルフレームは鋼管トレリスだが、スイングアームピボット部分はアルミの削り出し。スイングアームやステッププレートなども削り出し痕が残り、手間のかかり方が伝わってくる。ホイールベースは1390mmとかなりショートで、600ccのスーパースポーツ並み。俊敏なハンドリングを予想させる。

外観で目に付くのはフロントからリアに向けて伸びるカーボン製のダクトだが、これはシート下にマウントされたラジエーターに走行風を導くためのもの。この位置にラジエーターを設置しているのは、エンジンをより前方に配置することで適正な重量配分と、短いホイールベースの中でロングスイングアームを実現するため。前後のサスペンションはオーリンズ製のフルアジャスタブルで、ブレーキはブレンボ製。ホイールはOZ製と一流パーツで固められているのも魅力の1つだ。

142PSを発揮するエンジンにショートホイールベースの車体、そして低くマウントされたセパレートハンドル。そんな構成からはかなりスパルタンな特性のマシンが想像されるが、実際に走り出してみると予想していたよりもフレンドリーな乗り味に驚かされる。もちろん、前傾姿勢はキツめなのだが、車体がコンパクトで着座位置が前の方にあるためハンドルは思ったよりも遠くなく、筆者のような中年ライダーでも腰に受けるダメージはそれほど大きくない。足回りのセッティングも予想以上にしなやかで、街中を走る速度域でもしっかりと仕事をしてくれている印象だ。

エンジンは確かにハイパワーだが、スーパースポーツではなくツアラー系のマシンがルーツなだけに、低回転域から扱いやすいトルクを発揮し、街乗りでもギクシャクしてしまうことはなかった。ライディングモードの切り替えにも対応しているので、レスポンスが穏やかになる「レイン」モードを選べば渋滞にハマってもストレスを感じることなく走れるが、最もスパルタンな「スポーツ」を選んでも、決して扱いづらくはないところが、このマシンの素性の良さを感じさせる。

車両重量は191kgとリッタークラスのスポーツマシンとしては軽量。それも油脂類なども含んだ装備重量だ。この車体に前述のようなハイパワーのエンジンという組み合わせなので、公道ではほとんどアクセルを全開にすることはできないくらいの動力性能を持っている。特にエンジンが8000回転に差し掛かる辺りから、アロー製の2本出しマフラーは野獣の咆哮を思わせるようなエキゾーストノートを響かせるようになるが、その音を存分に楽しみたければサーキットに持ち込むしかないだろう。

ただし、すでに述べたように低い速度域での扱いやすさも持っているので、運動性能の片鱗は公道でも味わうことができる。ワインディングを走った際には、ブレーキングで姿勢を整え、目線をコーナーの出口に向かって送るだけで曲がって行ってくれる俊敏なハンドリングを味わえた。ブレーキングポイントを深くしてフロント荷重を増やし、素早くバンクさせればよりクイックなハンドリングが顔を覗かせるが、そこまでしなくても十分。ライダーは視線を先に向けることだけを意識して、あとはマシンに任せていても存分に峠道を楽しむことができる。無理にペースを上げようとしなくても、優れた設計の片鱗を感じられるマシンだ。


ネイキッドマシンらしいオーソドックスな丸目ライトだが、カーボン製のメーターカバーや削り出しの複雑な造形のライトステーなどがビモータらしいところ。フロントフォークのクランプも3本締めとされている。

オーリンズ製の倒立フロントフォークに、ブレンボ製のラジアルマウントキャリパー、OZ製のホイールとハイクオリティなパーツを組み合わせた足回り。タイヤサイズは120/70ZR17M/C。

削り出しのトップブリッジにはビモータのロゴが入る。ハンドルはクランプ位置こそ低いが、バーの位置は少し上げられていてグリップはそれほど低くない。ミラーはバーエンドタイプでカスタムマシンのような雰囲気だ。

最高出力142PS/10000rpm、最大トルク111Nm/8000rpmを発揮する4気筒エンジンは、ラジエーターが前方にないことでかなり前の位置にマウントされている。1番と4番、2番と3番の排気管が繋がれたエキゾーストパイプの造形も美しい。

ビモータのロゴが入った2本出しのマフラーはアロー製。ベースとなったカウル付きの「KB4」は1本出しだったので、このマシンならではの装備。触媒は車体下に配置されているのでサイレンサー部は軽く仕上げられている。

このマシンの特徴でもあるのが、前方からシート下に走行風を導くカーボン製のダクト。左右に装備されていて、しっかりとつま先で乗るライディングポジションを取らないとダクトが膝に当たる。

シート下という独特な位置にマウントされたラジエーター。ファンも装備されている。副次的な効果ではあるが、暑い時期に渋滞に巻き込まれても足に熱風が当たらなかった。

シートは本革製のシングルシート。シート高は810mmだが、リア・サスペンションに備えられたエキセントリックアジャスターで+/-8mmの調整が可能。絞り込まれた形状もあって、足付き性は悪くない。

剛性の高そうなスイングアームには削り出しの跡が見える。リアタイヤのサイズは190/50ZR17M/Cで、ピレリのディアブロ スーパーコルサSP V3を履く。インナーフェンダーもカーボン製だ。

ステッププレートもアルミの削り出し。ショートタイプのステップが装備されている。クイックシフター「KQS」も搭載。ヒールプレートやマフラーのヒートガードなども全てカーボン製だ。

リアショックはオーリンズ製のピギーバックタイプ「TTX36」を装備する。後ろに向けて傾いているユニークなマウント方法だ。減衰力の調整は、リザーバータンクに設けられたダイヤルで操作可能。

ブレーキのマスターシリンダーも、もちろんブレンボ製。セミラジアルタイプが装着されている。制動力だけでなくコントロール性も素晴らしいものだった。バーエンドタイプのミラーの視認性も悪くない。

ライディングポジションはキツそうに見えるが、意外とハンドルが遠くないことと、グリップ位置が低すぎないので思ったほどではない。ステップ位置は高いので、膝の曲がり方は結構鋭角になる。








愛車を売却して乗換しませんか?
2つの売却方法から選択可能!