【ヤマハ MT-03 試乗記】イチオシスマートアスリート

掲載日:2025年07月08日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/小松 男

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YAMAHA MT-03

ヤマハが送るネイキッドロードスポーツモデルであるMTシリーズ。幅広いモデルレンジを展開する中で、MT-03は普通自動二輪免許で乗ることができる最大排気量モデルだ。2025年モデルは各所にブラッシュアップが図られているぞ。

10歳を迎えた”大都会のチーター”は
進化と成熟を見せてくれる。

YZF-R3(R25)のネイキッドロードスポーツバージョンとして初代MT-03(25)が登場したのは2015年のこと。”大都会のチーター”というキャッチコピーが与えられたMT-03は、軽量かつコンパクトな車体と使い切ることができるパフォーマンスを活かして、ストリートを縦横無尽に駆け巡るライトウェイトストリートファイターとしてヤング層を中心に支持されてきた。

2020年にはスタイリングを一新し2型へとモデルチェンジが行われ、さらにインパクトのあるキャラクター付けがなされた。そして今期登場した2025モデルは、メーターディスプレイの変更やアシスト&スリッパ―クラッチの標準採用など、各種ブラッシュアップが図られた。年を追うごとに進化と成熟を重ねてきたMT-03の試乗テストを行い、その感触を紹介していこう。

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ヤマハ MT-03 特徴

"実は黒船勢が押し寄せる"
レコメンデーションセグメント

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『マスター・オブ・トルク』を掲げるヤマハ・MTシリーズは、現在125ccから1000ccまで幅広いエンジンを使用し、さらに最近ではオートマチックトランスミッションであるY-AMTを搭載する車両も増やし、10車種近く取り揃える一大モデル群だ。

その中でMT-03は普通自動二輪免許区分最大排気量モデルとなっている。私のイメージでは車検が不要なMT-25よりパワフル、大型自動二輪免許区分となるMT-07、MT-09へのステップモデルだと考えている。

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もはや古いバイク乗りと呼ばれる側になってしまっている私は、400ccのエンジン排気量が普通自動二輪免許区分の最大モデルのスタンダードといまだに思っており、排気量320ccの並列2気筒エンジンのMT-03にはどうしても中途半端さ感じてしまうものなのだが、その考えはとうに古く、現在は300~350cc程度の排気量が新車マーケットにおいてのマスとなっている。

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特に海を渡り島国日本に上陸する海外メーカー勢のラインアップを見てみると、先述した350cc前後の排気量としたモデルが多数用意されていることがわかる。近年ではハーレーダビッドソンが同クラスに進出してきたことで大きな注目を受けたことも記憶に新しい。

強力なライバルがひしめき合う中で、MT-03はライダーをひきつけるための魅力がどのように備わっているのか。現行MT-03に実際に触れつつ内容を探っていこう。

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ヤマハ MT-03T 試乗インプレッション

弟分とスペック以上の差を感じ
痛快なスポーツ走行を楽しめる

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先だって登場したばかりのMT-10を除いて、これまでのMTシリーズにはすべて試乗テストを行った経験がある。それを踏まえていつも感じることは排気量が異なれど、シリーズを通してどのモデルも一貫した”MTらしさ”があるということだ。

もちろん、MT-09やMT-07と比べて今回のMT-03/25、さらにその下のMT-125となると、絶対的パフォーマンス面での違いはあるのだが、スロットルを開けた時に得られる瞬発力や、まるで古くから相棒としてきたかのように自由自在に操ることができてしまうハンドリング、そして全体的なバランスの良さとスポーティなキャラクターからなるストリートファイターとしての躍動感は全モデルに通じている。

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MT-09とMT-07に関しては新型でヘッドライトまわりの顔つきが変更されたことにより、見た目の印象こそ大きく変わったが、触れてみるといつもどのモデルも”MTらしさ”が感じられるのである。

だから今回MT-03の2025モデルも、おのずとそういった点を確かめることになるだろうと思いながら試乗テストを開始したのだが、車体に跨り、走り出した瞬間に「おっ、ここにきてMT-03は一皮剥けたな」と感じられた。

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まずそれは、形状を見直された足つき性から伝わってくるもので、身長177cmの私の場合、停車時は従来モデル以上にべた足なのだが、ライディングポジションをとると膝の曲がり角や、ハンドルバーと着座位置などの支点関係が非常によく、そのために交差点一つ曲がるだけのことでも気持ち良いほどスマートに決まる。

そしてエンジンの出力特性も秀逸。MT-25と比べると、排気量は71cc大きく、最高出力で7馬力の増大と、スペック上ではさほどの差が無いのだが、行程(ストローク)はそのままに内径(ボア)だけを広げていることで、強いトルクを得ている。特に3000~5000回転でのトルク感、6000~レッドゾーンまでの伸びの良さはライダーのやる気スイッチをオンにしてくれる。

これだけなら、従来モデルとさほど変わりが無いと思えるのだが、アシスト&スリッパークラッチの採用により、シフトチェンジの際のスムーズさに磨きがかかり、相乗効果的にパワフルかつシャープな走りを楽しめるのである。

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今回MT-03の試乗テストを行った1週間は、細かい交差点が続く路地や渋滞の続く幹線道路、流れの良いバイパスや高速道路、様々なコーナーを楽しめる峠道など、日常生活でのシーンからツーリングコースまで幅広いステージを走らせてきた。

もともと素性の良さを知っていたMT-03でありながら、さらに魅力的なモデルとなっていると感じたのは、まず第一にスマートフォンと連動する新型メーターディスプレイの存在で、アプリを介して着信やメッセージ通知の表示が可能となったこと。インカムとペアリングすればさらに快適に使うことができる。

そうなるとガジェットのバッテリー充電の問題なども発生してくるのだが、今回燃料タンク左側のシュラウド上にUSBポートが新たに追加されており、これもうれしい装備となっている。

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Y-AMTをはじめノークラモデルブームが押し寄せているが、クラッチレバーの使用感はとても軽く、しかもシフトを一気に2速落とししても(クローズドコース内のみを推奨)リアタイヤがロックせずについてくるスリッパ―クラッチなどにより、スポーツライディングに求められるキャパシティが拡大。それにより一層アグレッシブな走りを楽しめるのだ。

スタンダード装着されているタイヤはバイアスではあるが、トレッド面の端まで深々とバンクさせることが容易であるし、もしより一層スポーティなライディングプレジャーを求めるならラジアルに履き替えるという選択もある。

確かに車検は2年に一度訪れる。がしかし、MT-25と乗り比べて感じられる差というものは、その手間やコスト以上だと思う。それに新車価格を比べても5万円しか違わないのだから、MT-03を選ぶのは購入後のバイクライフを考えると相当なメリットがあると私は考えている。

近い価格帯にインポートライバル勢も存在しているが、やはり車両の作りこみやアフターサービスでの安心感という面に関しては国内メーカーに軍配が上がる。一機種で通勤通学ショッピングといった日常使いからスポーツライディング、ツーリング、またはサーキット走行まで幅広いバイクライフをまかなうことができるモデルとして、MT-03は大きな魅力を持ち合わせている。

ヤマハ MT-03 詳細写真

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排気量320cc、水冷4ストローク並列2気筒エンジンを搭載。最高出力42馬力を1万750回転で、最大トルク30Nmを9000回転で発生。シングルエンジンのようにトルクがあり、マルチのようにフラットな回転上昇を得られる。テスト時の燃費は満タン法で約27km/Lだった。

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フロントタイヤはチューブレスで110/70R17サイズ。フロントサスペンションはφ37㎜の倒立フロントフォークフロントフォークで動きも良い。ブレーキはシングルディスクで2ポットキャリパーとベーシックな組み合わせだが、制動力は十分だ。

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フロントマスクの形状に関しては2020年モデルから大幅な変更はない。MT-09とMT-07の上位モデル陣の顔つきが変更されたこともあり、私の予想では次期モデルではそれに準ずるスタイルとなるだろう。

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ステップ位置は高すぎず低すぎず、万人が乗りやすい場所にセットされている。ヒールプレートも大き目で、くるぶしでしっかりと挟むことができ、体重も預けやすい。なお、スリッパ―クラッチが追加されたので、シフトダウン時のショックもほぼ無い。

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視認性に配慮した新型のフル液晶マルチファンクションメーターを採用。適切なシフトタイミングを知らせるインジケーターやギアポジションをメーター内に表示するほか、専用アプリ「YAMAHA Motorcycle Connect(Y-Connect)」にも対応。

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ハンドルバーは割と高い位置にセットされている印象で、その分上体は安楽なライディングポジションとなる。ワインディングやサーキットを攻める走りをするならば、こぶし一つ分程度低くしたい所ではあるが、日常的な使い勝手やUターンなどを考えるとデフォルトがベター。

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燃料タンクの左側、ラジエーターガードも兼ねるサイドシュラウド上に、新たにUSBソケットが追加装備された。位置が良く、ガジェット類の充電を行う際に非常に便利。ただ昨今の潮流を見るとType-AでなくType-Cでも良かったのではないかとも思う。

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2025モデルで足つき性とパッセンジャーの乗りやすさを配慮し形状が見直されたシート。パッセンジャーシートのロック解除位置も変更されている。足つき性はいたって良好なのだが、ライダー側は若干前下がり気味の印象。

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リアタイヤは140/70R17サイズで、銘柄はダンロップ製スポーツマックスGPR-300がデフォルトとなっている。バイアスタイヤではあるが、一昔前と比べてパフォーマンスが上がっていることと、車体全体のバランスが良いため、深いリーンアングルを気軽に楽しめる。

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言われないと気付かなかったが、従来モデルと違うデザインとなっているテールセクション。フロントとの調和を図りつつ、エアフローの特徴をリアにも取り込むデザインとし、ライダーと車体との一体感を表現。テールランプはタイトでショートな形状を採用する。

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リアサスペンションにはKYB 製モノクロスショックを採用。復筒式のショックアブソーバーはシンプルな構造ながら圧側・伸側の減衰力発生バルブがそれぞれ独立しており、安定した減衰力を発揮する。接地感のインフォメーションも良い。

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パッセンジャーシートは物理キーを使用して脱着が可能。割とゆとりを持ったユーティリティスペースが用意されているほか、車載工具を使用してライダー側のシートも簡単に外すことができる。なお、ライダー側シート下にはバッテリーが収まっている。

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