【ヤマハ MT-07 Y-AMT 試乗記】人類が培ってきた操作感を凌駕する完成度

掲載日:2025年06月13日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/小松 男

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YAMAHA MT-07 Y-AMT

2025モデルで大幅なアップデートが行われた人気のミドルクラスロードスポーツ、ヤマハMT-07。オートマチックトランスミッションを搭載したMT-07 Y-AMTも追加されモデルレンジの拡充が図られた。

正常進化を続けるMT-07に
Y-AMT搭載モデルが追加された

MTシリーズでの兄貴分にあたるMT-09に続き、MT-07がデビューしたのは2014年のこと。新規開発された並列2気筒エンジン、CP2(クロスプレーンツイン)が搭載されたMT-07はミドルクラスのストリートファイター的なキャラクターとされ、普通自動二輪免許クラスからのステップアップとして、また、ライディングスキルを磨くためのファンモデルとして大ヒットを遂げた。

それから10余年の時間が流れる中で幾度かのモデルチェンジが行われ、その都度、アグレッシブさと扱いやすさが磨かれてきた。そして今年、2025モデルとしてさらなるブラッシュアップが施された新生MT-07が登場。フェイスマスクの一新にはじまり、シャシーや足回りの強化、ライディングポジションの改善など変更点は多岐に渡るものとなっている。

中でも注目したいのは昨年MT-09で初めて採用されたで電子制御式自動変速トランスミッション、Y-AMTを搭載したMT-07 Y-AMTが追加されたことだ。今回はそのMT-07 Y-AMTをフィーチャーし、装備、性能、実際に走らせた際の印象などをお伝えしてゆく。

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ヤマハ MT-07 Y-AMT 特徴

"マスターオブトルク=MT"
シリーズの中核を担う強い存在感

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ヤマハのMTシリーズは下は小型自動二輪免許で乗ることができるMT-125から、大きいものでは登場したばかりの新型MT-10まで幅広い排気量で構成されるロードスポーツモデル群である。フルカウルスポーツバイクセグメントであるYZF-Rシリーズと双璧をなす存在とされており、ヤマハの屋台骨として一翼を担ってきた。

その中でもミドルクラスにあたるMT-07は2014年の初代モデル登場から現在まで特にバランスの良いモデルとして高い人気を誇ってきた。

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その要因としてはMT-09、MT-10などと比べ軽量コンパクトな車体構成であること、MT-25、MT-03から格段に引き上げられたパフォーマンス、それらが上手く纏め上げられているからであり、それが結果として、幅広いライディングスキル、体格のライダーに訴求できるのである。

2025モデルのMT-07は従来モデルから大幅にブラッシュアップが図られた。その内容を探ってみると、まずは昨年のMT-09に続き、フロントマスクが変更され、従来のムキダシ的顔つきから能面を連想させるフェイスマスクが装備され大きく印象が変わった。

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フレームとスイングアームも新設計となり、重量は従来と同等を維持しながら剛性を約13%も引き上げている。それ以外にもフロントサスが倒立フォークに変更されたほか、ブレーキには初の4ピストンラジアルマウントキャリパーを採用するなど、フルモデルチェンジといえるほどの改良が行われた。

さらにはCP2エンジン搭載モデルとして初めて電子制御スロットルを採用し、スロットルレスポンスの向上などが図られている。そんなMT-07は、操ることの楽しさが凝縮されたスポーツモデルであるわけだが、この度オートマチックトランスミッションバージョンであるMT-07 Y-AMTが追加されたのだ。

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オートマ化によってライダーが操る楽しさはスポイルされてはいないだろうか。興味を持った私は今回あえてMT-07 Y-AMTを選び、2025モデルでの進化具合、さらにY-AMTとの相性やパフォーマンスを探ることにした。

ヤマハ MT-07 Y-AMT 試乗インプレッション

この上なく素晴らしい爽快感
皆Y-AMTを選ぶようになる

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今からちょうど1年ほど前のこと。当時新型としてモデルチェンジを受けたMT-09に触れた際に、新たなフロントマスクを見て”近い将来MTシリーズのフェイスデザインはこれに準ずるだろう”と予想していたように、2025モデルのMT-07の顔つきもMT-09のような能面デザインに変更された。賛否両論あるだろうが個人的には好みであり、実車の前に立ち、その見た目からして”これは良い”と感じたものである。

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エンジンを始動した後、ミッションを”D”レンジにセットしてスロットルを少しひねると、極めてスムーズかつ滑りだすようにMT-07 Y-AMTは走り始めた。

オートマチックシフトのDレンジには”D”と”D+”の2種類のライディングモードが用意されており、後者はより強力かつスポーティな味付けとなっているのだが、スタンダードなDレンジでもかなり快活で、スロットルをガバッと開くと6000回転程度までしっかりと引っ張ってからシフトアップが行われる。

D+はなるべく幅広い回転数を使うようなセッティングとされ、スポーティなライディングをオートマチックで楽しめるのだが、それならば左手のスイッチボックスに備わるシフトアップ/ダウンボタンを駆使してシフト操作を行う方が楽しい。

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実はCP2エンジンを搭載するモデル全般で感じていたのだが、左足のシフトレバー操作でのフィーリングが渋い。少なくともMT-07 Y-AMTでは足元のシフトレバー操作が不要なのでおのずとその渋さも無い。これがMT-07に搭載するY-AMTの第一印象。

しかし市街地、高速道路、ワインディングと様々なステージを走らせるにつれ、Y-AMTの設定、さらにMT-07というキャラクターにおけるトータル的なバランスの考えが節々から伝わってくるのだった。

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実は2025モデルのMT-07ではライディングポジションが見直されている。具体的にはハンドルのセット位置が18mmワイドに、22mm低く、9.3mm後方に配置されており、ステップバーも10mm低く設定された。従来モデルでは若干オフロードバイクのようなポジションだったのに対して、ロードスポーツモデルとして車体の抑えが効くようになったというわけだ。

走らせてみると交差点一つ曲がるだけでもその違いはわかり、高速道路では自然と上体が伏せるようになり、ワインディングなどでスポーツライディングをする際にも、無駄な部分に力を入れずに済む。これまでもライダーの意のままに操ることができる基本的なセッティングに長けていたMT-07だが、その良さがさらに引き上げられたのだ。

高速道路の話がでたので、一つ追記しておくと、MT-07 Y-AMTにはスタンダードモデルにないクルーズコントロールが標準で装備されている。これは長時間の高速移動時にとても快適に使うことができた。

ここでMT-07のスタンダードモデルでも共通して言えることを書き記すと、倒立フォーク、ラジアルマウントキャリパーの採用、フレームなどの剛性アップは、走りの素質を大きく変化させている。

特に高い速度でスポーツライディングをする際のことだが、強力な制動力を発揮する新たなブレーキシステムで速度を落とす際に、倒立フォークにつながるトリプルツリーやフレームのネック部分に強いストレスがかかってもしっかりと受け止めてくれる。フロント周りの剛性、接地感がしっかりとライダーに伝わるために、コーナーへの進入から脱出まで一連のラインを思い通りに組み立てることができるのだ。一方で、通常走行速度域で、ライダーに伝わってくる路面の突き上げピッチングは多少強めにも感じられた。

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MT-07は特有の人車一体感、つまりライダーの思いのまま操ることができるキャラクターにファンがついていると言え、はたしてそれが、オートマチックトランスミッションであるY-AMTを装備したことでスポイルされるのではないかという疑問もあったが、それは杞憂だった。

オートマチックモードのDレンジの制御はとても優秀であるし、マニュアルモードにすれば発進時のフロントアップも楽しめるうえ、左手のスイッチで行うシフトチェンジは、マニュアルミッションモデルと同等、いや、クラッチレバーとチェンジペダルを操作するよりも俊敏なシフトチェンジが可能だ。左手の親指でシフトダウン、ホーン、ターンシグナルを操作しなければならず、押し間違えることがあったが、それは慣れの問題で解決できる。

MT-07が出た当初は、できるだけコストを抑えつつ超軽量でまとめたスポーツバイクというコンセプトが見て取れたが、新型では装備を充実させ、走りに磨きをかける方向にシフトしていると感じられる。ここ最近、他メーカーも合わせてオートマチックトランスミッションモデルに触れる機会が増えたのだが、どれも良くできており、もはや皆がオートマモデルを選ぶようになるのは時間の問題だと思っている。その中でMT-07 Y-AMTというのは間違いの無い選択の一つとなるだろう。

ヤマハ MT-07 Y-AMT 詳細写真

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ボア・ストローク80×68.6㎜の689cc並列2気筒エンジンで、73馬力の最高出力や68Nmの最大トルクなど、数値的には従来モデルを踏襲している。しかしCP2エンジンでは初の電子制御スロットルを採用しており、ライディングモードの選択やレスポンスの向上などが行われている。

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正立フォークからφ41㎜の倒立フォークへと変更。フロント周りの剛性力が向上した上に、ブレーキシステムには4ポッドラジアルマウントキャリパーを合わせ、高いコントロール性を発揮している。

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初代モデルから継続されてきたスイングアームは今回一新されている。上面を削ったデザインとしているほか、倒立フォークの採用やメインフレームの変更に伴い剛性を適正化している。

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カラーリングはMT-07とMT-07 Y-AMT共通で、マットライトグレー、ブルー、マットダークグレーの3色が用意された。燃料タンク容量は13Lでレギュラーガソリン仕様。試乗テスト時に満タン法で計測したMT-07 Y-AMTの燃費は、およそ28km/L。

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シートは従来通りライダーとパッセンジャーがセパレートした2ピースタイプ。805mmのシート高も従来の数値と同じだ。車体がスリムで軽量なために、足つき性の問題は薄く、取り回しもしやすい。

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LCDディスプレイから5インチフルカラーTFTディスプレイへと変更された。大型で視認性が良く、インフォメーションは伝わりやすい。スマートフォンの専用アプリY-Connectと連動するとさらに利便性は高くなる。

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MT-07 Y-AMTの左側スイッチボックスには、シフトアップ/ダウンスイッチやオートクルーズボタンなどが備わっている。各種設定を行う十字ボタンの操作感も良い。クラッチレバーがないことが新鮮だ。

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右側スイッチボックスを見ると上部にオートマチックとマニュアルミッションを切り替えるスイッチがレイアウトされている。ライディングモードは、オートマチックモードでDとD+、マニュアルミッションモードでスポーツ、ストリート、カスタムが用意されている。

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テールセクションも再設計されており、シートカウルやリアフェンダーとの一体感が高められているほか、空力性能も最適化された。LEDテールランプのデザインも一新しており、点灯時には縦長に発光、ライダーの背中と直線でつながる演出がなされている。

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昨年登場した現行のMT-09に続き、意匠に変化がもたらされたフロントマスク。シンプルかつ個性的であり、個人的には好みの顔つきである。今後他のMTシリーズも続くか気になるところだ。

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MT-07 Y-AMTには足で操作するシフトチェンジペダルがない。ステップ位置は従来モデルと比べて10mm低くセットされており、膝の曲がりが多少緩くなっている。

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パッセンジャーシート下には多少のユーティリティスペースが用意されている。ただETC2.0車載器を収めるとほぼ余裕はなさそうだ。車載工具を使いライダー側のシートも外すことができる。

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