【インディアン チーフテン・パワープラス 試乗記】モダンな装備を受け継いだクラシック・バガー

掲載日:2025年03月18日 試乗インプレ・レビュー    

取材協力/ポラリスジャパン
写真/インディアン モーターサイクル
取材・文/河野 正士
衣装協力/クシタニアルパインスターズ

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INDIAN Chieftain Powerplus

インディアン・モーターサイクルは、水冷V型2気筒OHCエンジンPowerplus(パワープラス)をアップデート。排気量を拡大し、エンジン名もPowerplus112とした。その新型エンジンを「Challenger(チャレンジャー)」や「Pursuit(パースート)」に搭載。さらには、これまで空冷V型2気筒OHVエンジンThunderstroke(サンダーストローク)116を搭載していたChieftainやRoadmasterはPowerplus112エンジンとともに、ChallengerやPursuitと同じアルミフレームを採用。「Chieftain Powerplus(チーフテン・パワープラス)」および「Roadmaster Powerplus(ロードマスター・パワープラス)」へとモデルチェンジした。ここでは米国ラスベガスで開催されたPowerplus112ラインナップの発表会で試乗した「Chieftain Powerplus」を通して進化したアメリカンクルーザーを解説する。

Powerplus112エンジンをアルミフレームに搭載した
新型Chieftain Powerplus

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インディアン・モーターサイクル(以下インディアンMC)は1月下旬、新型Powerplus112(パワープラス)エンジンをオンラインで発表。その新型エンジンの搭載とともに、定評あるアルミフレームのPowerplusプラットフォームを採用した「Chieftain Powerplus」と「Roadmaster Powerplus」を新たにPowerplusファミリーにくわえた。これによってインディアンMCは、プラットフォームおよびラインナップの再編を進め、自社バガー・カテゴリーおよびツーリング・カテゴリーのモデルラインナップを強化した。

挟角60度V型2気筒の水冷OHC4バルブエンジン/Powerplusエンジンと、そのエンジンをフレームメンバーとする、アルミ製のバックボーンフレームを中心にいくつかのセクションに分かれたアルミ鋳造フレームで構成されたPowerplusプラットフォームを採用したChallengerがデビューしたのは2019年。インディアンMCいわく、Powerplusプラットフォームは、まさにゲームチェンジャーであったという。それ以前、ヘビー級クルーザーカテゴリーでは長い間、大きな性能向上が見られず、テクノロジーを求めるライダーもほとんど居なかったという。しかし高性能なエンジン&シャシーにくわえ、ボッシュ製6軸IMUの搭載で走行状況を的確に把握し、そのデータを元にトラクションコントロールやABSを作動させるSmart Learn Technologyを搭載したChallengerの登場で、ヘビー級クルーザーカテゴリーにおいてもパフォーマンスとテクノロジーが注目されるようになった。

また同時期にスタートした、大型カウルとサイドバッグを装着したクルーザーモデル/バガーによって争われるロードレースKing of the Baggers(キング・オブ・ザ・バガーズ)の開催や、そこでのライバルブランドとの苛烈なチャンピオン争い、およびパフォーマンス争いによって、ベースモデルのパフォーマンスにくわえ、チューニングパーツやカスタムパーツにも注目が高まった。

2021年には新型Chief(チーフ)シリーズを発表。インディアンMCが復活した際に開発した挟角49度V型2気筒の空冷OHV3カム2バルブのThanderstroke111(サンダーストローク) エンジンは、その後に排気量を拡大しThanderstroke116へと進化。新型ChiefはそのThanderstroke116エンジンを、オーセンティックなスチールパイプをメインフレームに使用した新型フレームに搭載。1940年代から現在至るまで、アメリカンクルーザーシーンのトレンドとなった、カスタムバイクのスタイルからインスピレーションを受けた5モデルをラインナップした(2025年モデルとして「SPORT CHIF RT」をラインナップにくわえたため6モデルとなった)。

そして2024年にはScout(スカウト)シリーズをフルモデルチェンジ。挟角60度V型2気筒の水冷DOHC4バルブエンジンは排気量を1250ccへと拡大。あらたにSpeedplusエンジンと名付けられた。また新たにスチールパイプとアルミキャスティングパーツをミックスしたハイブリッドフレームを開発。のちに排気量999ccの「Scout Sixty(スカウト・シックスティ)」シリーズの2モデルをくわえ、全7モデルをラインナップしている。

この流れを見ると、今回発表した新しいPowerplus112エンジンの発表や、「Chieftain Powerplus」と「Roadmaster Powerplus」を追加したことによるPowerplusプラットフォームの強化によって、インディアンMCはブランド復活以来初となるモデル再編が完了したと言えるだろう。

インディアン チーフテン・パワープラス 特徴

先進的なテクノロジーが詰まった
Challengerのプラットフォームを継承

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「Chieftain Powerplus」の特徴は、Chieftainからプラットフォームを変更したことだろう。Chieftainは新型Chiefシリーズにも採用されているThanderstroke116エンジンを搭載しているので、そのエンジンがPowerplus112に変更になったことの違いは大きい。またChieftainもアルミ製バックボーン・フレームを採用し、エンジンをフレームの一部として使用していた。しかし「Chieftain Powerplus」は、よりハイパワー&ハイトルクなPowerplusエンジン用に開発された、Challengerと同じ新しいアルミ製バックボーンフレームを採用。そのフレームは、さらなるエンジンのパワーアップと、ハイスペックな前後サスペンション&ハイグリップタイヤの装着によって速度域を大幅に高めたKing of the Baggersレースにそのまま使用され(レギュレーションによってスタンダードフレームの使用が義務づけられている)、低重心かつ高剛性が証明されている。そのエンジンとフレームで構成される車体プラットフォームの性能向上は、「Chieftain Powerplus」というモデルキャラクターを大きく進化させた。

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また「Chieftain Powerplus」は、Challengerと同じボッシュ製6軸IMUから得たデータを元にしたSmart Learn Technologyを採用。出力特性が異なる3つのライディングモードやリアシリンダー停止機能も搭載している。そして新たに、ボッシュ製ミリ波レーダーをリアに搭載。左右後方の死角に車両が入ったことをライダーに警告する「ブラインドスポット・ワーニング」や、後方車両の接近をライダーに知らせる「テールゲート・ワーニング」、衝突の可能性が検出されると、リアケース・ライトで後方接近車両に警告する「リア・コリジョン・ワーニング」などライダー支援機能も追加した。

そして「Chieftain Powerplus」のデザイン的特徴である、フロントフォークにマウントした大型フロントカウルも新しくなった。燃料タンクやサイドバッグ、リアフェンダーはChallengerと共通だが、このフロントカウルは「Chieftain Powerplus」と、プラットフォームを共有しリアトップケースなど豪華装備の「Roadmaster Powerplus」用に新たにデザインされた専用アイテムだ。このデザインディテールは、空冷エンジンを搭載したChieftainと、水冷エンジン搭載のChallengerの両車からインスピレーションを受けている。

インディアン チーフテン・パワープラス 試乗インプレッション

スムーズかつパワフル
ワープのような強烈な加速

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なんとも不思議なパワフルさである。排気量1834ccのVツインと言えば、アイドリングでも感じる強烈な鼓動感と振動を想像するだろう。また排気量の拡大とともに最大トルクは181.4Nmにまで増大し、それは3800回転で発生すると聞けば、不用意にアクセルを開ければ、振り落とされそうな加速感を想像する。しかし実際に跨がりエンジンを掛けた「Chieftain Powerplus」はじつに紳士的だ。Chiefシリーズが搭載する空冷エンジン/Thanderstroke116エンジンは、走行モードをSPORTに変更するだけでエンジンのパフォーマンスが変化。アイドリング時も排気音や振動が荒々しく変化した。しかし「Chieftain Powerplus」が搭載する水冷のPowerplus112は、どの走行モードを選んでもエンジンの呼吸は変わらない。クラッチを繋ぎ、スルスルと走り出したときも穏やかで、交通量の多い市街地で前車について走る時は、エンジンが低回転域でも力強く、でも滑らかでじつに扱いやすい。Powerplusファミリー最軽量でありながら、車重360kgという数字は走らせるのに緊張感を伴うが、その扱いやすさですぐにそれを忘れてしまったほどだ。

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しかし前方が開けたタイミングを見計らって大きめにアクセルを開けると、巨体がワープするように強烈に加速する。シリンダー内の爆発とエンジンから伝わる振動がリンクする、誰もがイメージするVツインらしい加速感とは違い、そこから振動をキャンセルしたようなPowerplus112エンジンの加速は、だからこそワープしたような感覚に陥るのだ。不思議なパワフルさの理由はそこだ。

そしてエンジン回転が4000回転付近からターボが掛かったように60度Vツインのビート感が高まり、これ1800ccオーバーのVツインなの!? と思うほどの強烈な加速がレブリミットに近い6000回転付近まで続く。この領域をテストできたのは、ルート内にあった砂漠を縫う幅広い道路でのみ。スロットルレスポンスが鋭くなるSPORTモードで高回転域を試すことができたのは、ごく僅かであった。

開発陣は、高回転域における最高出力とパンチ力を求めて水冷化やOHCのバルブ駆動システムを採用したが、同時に最大トルクが発止する3800回転まで緩やかにトルクが上昇し、その後は長く分厚いトルクが発生するフラットなトルク特性を求めたという。それによって低中回転域の扱いやすさと、高回転域での伸びとパワーを手に入れることができるから、と語っていた。

そんな状況であっても、シャシーはじつに落ち着いていた。積極的にハンドルを操作すれば巨体はいとも容易く向きを変えるし、そのときにサスペンションが余計な動きをすることもない。前後どちらのブレーキを操作しても、そのときの走行状況に合わせて前後ブレーキ配分を最適化するエレクトロリック・コンバインド・ブレーキシステムによって、ヘビー級クルーザーの操作のセオリーである、リア強めのブレーキ配分を忘れてしまっても高い制動力を得ることができる。

近年のクルーザーの進化のスピードは速く、個性的なモデルが市場に溢れている。そのなかでインディアンMCは先進的なテクノロジーと自社の歴史を吟味し、それとミックスしながら個性的なモデルを生み出す名人だ。最新モデルである「Chieftain Powerplus」は、現在のところ、その最適解である。この楽しさは、バイクファンであれば誰もが感じることができるだろう。

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チーフテン・パワープラス 足つき(身長170cm/体重65kg)

インディアン チーフテン・パワープラス 詳細写真

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新型「Powerplus112」エンジン。Challengerに搭載されていた挟角60度V型2気筒OHC4バルブエンジンをベースに、ボアを2mm広げることで排気量を1834ccに拡大。そのエンジン開発はKing of the Baggersの現場で行われた。

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「Chieftain Powerplus」「Roadmaster Powerplus」に採用された新しいフォークマウント・フェアリング。ライトユニット上部のエアダクトや両サイドのキャラクターラインはChallengerのカウルがモチーフとなっている。

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インディアンMCでは、デザイン開発において積極的にクレイ(造形用粘土)を使用している。3D-CADなどデジタルツールも使用するが、それはあくまでもデザイナーを補助するツールであり、人間の手でしか生み出せないボディ表面を強く意識しているという。

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178mmのフルカラー・タッチスクリーンディスプレイには、走行モードや各種機能など、さまざまな項目の設定が可能。リアレーダーによる後方視界の警告などもこのディスプレイにも表示される。可動式電動スクリーンも装備する。

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両ミラー内側のインジケーター。左右後方の死角に車両が入ったことをライダーに警告する「ブラインドスポット・ワーニング」と、後方車両の接近をライダーに知らせる「テールゲート・ワーニング」はメインディスプレイのほか、このインジケーターが光って警告する。

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SHOWA製倒立フォークに、ラジアルマウントのブレンボ製4ポットキャリパーをダブルで装着。リアショックユニットはFOX製だ。燃料タンクやリアケース、リアフェンダーはChallengerと共有。

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左右のサイドバックにはリモートロックシステムを採用。ふたつのバックの総容量は68リットルを超える。バッグとフロントカウル内側には防水仕様のスピーカーを装備。ラジオはもちろん、携帯電話とリンクできるRIDE COMMAND機能を使ってストリーミング再生で音楽を楽しむことができる。

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テールライト上に設置されたボッシュ製ミリ波レーダー。これで読み取った後方の車両状況を元に「ブラインドスポット・ワーニング」「テールゲート・ワーニング」「リア・コリジョン・ワーニング」を稼働。インディアンのクルーザーモデルの多くは、走行状況や車体姿勢を把握するための6軸IMUを装備しているが、それもボッシュ製である。

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「Chieftain Powerplus」とエンジンやフレームなどプラットフォームを共有する新型「Roadmaster Powerplus」。トップケースやロアカウルなど、豪華装備を誇る(写真はオプション装着車)。

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