【ハスクバーナ ヴィットピレン801 試乗記】“日常を越える”スポーツ性能

掲載日:2025年02月13日 試乗インプレ・レビュー    

取材協力/ハスクバーナ モーターサイクルズ KTM JAPAN 写真/Sebas Romero、Marco Campelli
取材・文/河野 正士 衣装協力/KUSHITANI アルパインスターズ

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HUSQVARNA VITPILEN 801

ハスクバーナは801シリーズに新型車「Vitpilen 801」を追加した。先に発売したSvartpilen 801で初のツインエンジンを搭載し、フレームや外装類など前身となる701シリーズからすべてを一新。その兄弟モデルとプラットフォームを共有しながらディテールを変更してロードスターに仕上げた。Disrupting the ordinary=平凡な日常を跳び越える、をキャッチフレーズとする、そのニューモデルを紹介する。

痛快無比なロードスター

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ハスクバーナが発表した新型ロードスター「Vitpilen 801(ヴィットピレン・ハチマルイチ)」は、ハスクバーナというブランドがどうあるべきかという新たな方向性とビジョンを体現したモデルであると感じた。オフロードレースにブランドのルーツを持ちながらもパフォーマンスを過剰に追求することなく、未来志向のデザインやテクノロジーを取り入れることで、ライダーに新しいバイクの価値を提供することを目指しているのではないか。「ヴィットピレン801」を走らせると、そう感じる。

ハスクバーナのヴィットピレン・シリーズは、アヴァンギャルドな車体デザインにセパレートハンドルを採用した、モダンなカフェレーサーとしてデビュー。排気量373cc単気筒エンジンを搭載した「ヴィットピレン401」を2018年に、排気量692.7cc単気筒エンジンを搭載した「ヴィットピレン701」を2019年に市場投入した。

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また2024年春に、ハスクバーナは401シリーズをフルモデルチェンジ。その際に「ヴィットピレン401」はバーハンドルを採用し、カフェレーサーからロードスターへとスタイルを変更したのだ。

そして2024年初夏に、701シリーズの後継となる801シリーズを発表。その第一弾となった新型「Svartpilen 801(スヴァルトピレン・ハチマルイチ)」は、シリーズ初の並列2気筒エンジンを、新レイアウトのフレームに搭載した。

新たにラインナップに加わった「ヴィットピレン801」は、「スバルトピレン801」とエンジンやフレーム、さらには車体デザインや前後サスペンションを共有しながら、ディテールを変更してロードスターとして生まれ変わったモデルである。

ハスクバーナ モーターサイクルズ ヴィットピレン801 特徴

基本コンポーネンツを共有しながら
専用セッティングで個性を演出

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ハスクバーナの801シリーズは、LC8cプラットフォームと名付けられた、75度位相クランクを採用する排気量799cc水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブエンジンと、そのエンジンをフレームの一部として使用しながら、新開発したクロームモリブデン鋼チューブラーフレームのコンビを共有。エンジンは、中国のトップブランドCF MOTOとKTMとのジョイントベンチャーによって開発および製造。そのエンジンをオーストリアの本社工場に送り、車体が組み立てられているという。

そのLC8cエンジンはクランクシャフト前方、およびシリンダーヘッドにある2本のカムシャフトの間にバランサーをセットし、振動低減が図られている。またライダーのアクセル操作を電子信号でEMS(エンジン・マネージメント・システム)に送るライド・バイ・ワイヤー・スロットルを採用。EMSは2つのシリンダーおよび吸気系をモニタリングし、それぞれのシリンダーの燃焼や吸気を個別にマネージメントしている。

エンジンはレイン/スタンダード/スポーツの3つのライディングモードに加え、オプションのダイナミックパックを選択すると、4つ目のライディングモード/ダイナミックが追加される。このライディングモードごとの出力特性は、801シリーズ共通だ。また試乗車に装着されていたイージーシフト(クイックシフター)もオプション設定となっている。

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前後サスペンションは、801シリーズ共通。フロントはインナーチューブ径43mmのWP製APEX倒立フォークを、リアは直押し式で、ショックユニットはWP製APEXを採用。それにスポーツツーリングタイヤ/ミシュラン・ロード6タイヤの装着している。

トップブリッジやアンダーブラケットは801シリーズで共通だが、ハンドルバーを変更。幅広く、また低いグリップ位置を採用。ステップ周りに変更はないが、このハンドル周りの変更でやや前傾したライディングポジションを造り上げている。

そのポジション変更とタイヤの変更に合わせて、前後サスペンションのセッティングも変更されている。またシート高やシート形状に変更はないが、シートフォームの素材を変更。やや硬めの素材とし、前傾が増したライディングポジションに対応した。

もっとも特徴的なのは、フロントフェイスだろう。ライトユニット前面を覆う、いわゆるヘッドライトレンスを持たないこのシステムは、リング状のLEDデイタイムランニングライトと、Bi-LEDプロジェクター・ヘッドライトで構成されている。佇む姿もちろん、対向車線やバックミラー越しにやって来る姿はじつに個性的で、ひと目で「ヴィットピレン801」だと理解できるほどだ。

ハスクバーナ モーターサイクルズ ヴィットピレン801 試乗インプレ

スポーツが楽しい
ダイナミックロードスター

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先導するインストラクターに引っぱられ、跨がってワインディングで「ヴィットピレン801」のスポーツライディングを大いに楽しむことができた。75度位相クランクのパラレルツインエンジンの小気味良い排気音に包まれながら、しかし2つのバランサーでエンジンの振動をキャンセルしたことでエンジン回転の上昇はとてもシルキー。オプションのイージーシフトによってクラッチ操作無しでシフトアップ&ダウンをしてもシフトチェンジ時の衝撃が少なく、スリッパークラッチによってシフトダウン時に車体の挙動が乱れることもない。ちょっとラフにアクセルを開けてみると、ディスプレイにトラクションコントロールが介入したことを知らせるランプが付くが、視覚的にシステムの介入に気がついただけで、車体は何事もなかったように加速する。

開発陣が話していたように3〜4000回転付近のトルクが豊かで、高めのギアを維持したままコーナーでエンジン回転が落ちたときでも、そこからアクセルを開ければ力強く車体を前方に押し出してくれる。

そして高回転域でのエンジンの伸びも気持ちが良く、もっともアグレッシブな走行モード/ダイナミック・モードを選択すればその加速はさらに力強くなる。いや、フワッと浮遊感を伴うような加速感、という表現が近いかもしれない。

そんな風に、走行モードや自身の走り方を変更しながらワンディングを楽しむときでも、WP製のサスペンションがその走りをしっかりと支えてくれる。フロントフォークの減衰力調整ダイヤルはフォークトップにあり、走行中でも変更可能。走行モードや走り方に合わせて調整すれば、その変化をダイレクトに感じることができる。

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思いっきりスポーツ走行を楽しむことができるのに、「ヴィットピレン801」が、エンジンもフレームもスポーツバイクに起源を持っていない。そもそもハスクバーナにはスーパースポーツモデルをラインナップしていないから、それを起源にすることができないのだが。それなのに「ヴィットピレン801」でスポーツするのがとても楽しい。この楽しさの奥にはスポーツバイクとしての高いポテンシャルを秘めているからに他ならない。それでいて、開発陣がもっとも重要だと言っていたとおり、低中回転域でも扱いやすい。

このスポーツバイクに起源を持たない排気量1000cc以下モデルが、いま欧州のメインマーケットになっている。もちろん各メーカー、1000ccオーバーのフラッグシップモデルを各カテゴリーにラインナップしている。しかしそれらは高性能化および電化とともに高価格化も進んでいる。そんなかにあって価格を抑え、コンパクトで高性能な排気量1000cc以下モデルが注目を集めているのだ。「ヴィットピレン801」は、そんなレッドオーシャンでも存在感を発揮するに違いない。

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ヴィットピレン801(身長170cm/体重65kg)

ハスクバーナ モーターサイクルズ ヴィットピレン801 詳細写真

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リング状のLEDデイライトランニングライトとBi-LEDプロジェクターを組み合わせた新ヘッドライトシステム。ライトユニットそのものをやや車体前方に配置。スヴァルトピレン801で採用されていたミニスクリーンは廃止されている。

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トップブリッジやアンダーブラケット、ハンドルライザーもスヴァルトピレン801と共通だ。幅広でグリップ位置が低い新型ハンドルに合わせ、ハンドルライザーを上下入れ替えてセット。やや前傾のロードスター的ライディングポジションを造り上げる。

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排気量799ccの並列2気筒DOHC4バルブエンジン。2つのシリンダーおよび吸気系をモニタリングし、エンジンマネージメントシステムがそれぞれのシリンダーの燃焼や吸気をマネージメントしている。エンジン底部のスキットガード、ステップ周りのヒールガードはヴィットピレン801の専用デザイン。

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フレームはクローム・モリブデン鋼のチューブラー構造で、エンジンをストレスメンバーとして使用。シートは、シート高やシート形状に変化はないが、シートフォームを変更。やや固い素材として変更した足周りやポジションに対応している。

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フロントフォークはφ43mmのWP製APEX。ショックユニットはスヴァルトピレン801と共通だが、ヴィットピレン801専用セッティングを採用している。フロントフェンダーはヴィットピレン801専用形状。スペインのブランド/J.Juan製のブレーキシステムを採用する。

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インナータンクを覆うようにデザインされた2分割式のタンクカバーも兄弟モデルスヴァルトピレン801と共通。ラジエターカバーはヴィットピレン専用のデザインを採用している。メーターディスプレイ下にUSB-Cコネクターが見える。

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シートレールとリアフレームを兼ねるシートカウル、それに跳ね上がったサイレンサーはスヴァルトピレン801と共通だが、ブラックアウトしてアグレッシブさを強調。リアショックユニットはWP製APEX。リンク機構を持たない直押しタイプ。

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フォークトップのダイヤルによって伸側/圧側ともに5段階で減衰力調整が可能。左側フォークの白いダイヤルが圧側、右側フォークの赤いダイヤルが伸び側を調整できる。

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5インチTFTディスプレイは801シリーズ共通。専用アプリを使用すればスマートフォンを接続可能で各種機能を拡張できる。

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左グリップ周りにあるスイッチボックス。右側矢印が決定ボタン、上下矢印が選択ボタン、左側の戻り矢印が戻るボタン。

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