掲載日:2025年01月15日 試乗インプレ・レビュー
写真/川上 礁太 取材・文/小松 男
YAMAHA MT-09 Y-AMT vs YAMAHA MT-09
これまでに様々なセグメントのモデルを比較、検証してきたこの対決企画。今回乗り比べるのはMT-09とMT-09 Y-AMTです。この2車種は兄弟でもライバルでもなく、双子モデル。そもそもMT-09というモデルは、クロスプレーン(不等間隔燃焼)を用いて開発された並列3気筒エンジンを搭載し、2013年に発表されたモデルです。
ロードスポーツモデル全般を俯瞰してみると2000年代序盤頃まで日本メーカーの多くが4気筒エンジンを採用してきましたが、その後、小排気量モデルから徐々に2気筒化の波が押し寄せてきていました。
その中で登場したMT-09の3気筒エンジンは、単/2気筒エンジンのような低回転域でのトルク感と多気筒エンジンの魅力である伸びのある高回転、さらにそれらを上手く繋ぐ中回転域での扱いやすさというオールマイティかつエキサイティングなキャラクターで人気を博し、瞬く間にスターダムを駆け上がりました。
さらにヤマハはMT-09と共通のパワートレインや一部プラットフォームも同じとした派生モデルを次々とマーケットに投入。それらも幅広い層に支持されることとなりました。MT-09はこれまで何度か改良が行われており、2024年モデルでは大幅なフェイスリフトが行われた上、細部に手が加えられたマイナーチェンジを果たし現在に至ります。
そんな人気モデルのMT-09に新たに追加されたのがクラッチ操作不要のシステムを搭載した「MT-09 Y-AMT(ワイ エーエムティー)」で、これはクラッチレバーもシフトチェンジペダルも備えず、適切なタイミングに自動的にシフトアップ/ダウンがされるだけでなく、手元のボタンを操作することで任意でのシフトチェンジを行えるというものでした。スタンダードモデルと乗り比べ、その魅力的な部分や不得手と思えるトコロなどを探っていきます!
マイナーチェンジによりライディングポジションの変更やサスペンションのリセッティングなどが施された2024モデルをベースに新たなトランスミッション機構が与えられたMT-09 Y-AMT。ブルーを基調とした専用カラーリングとなっています。
スタンダードモデルとY-AMTモデルのシートは825mmで共通の高さ。ライダーによっては、やや高めに感じられるかもしれませんが、ステップ位置は割と低く膝の曲がりも少ないため楽ちん。
やはりもっとも大きな違いとなるのはクラッチレバー及びシフトチェンジペダルの有無です。昨今の2輪業界を見渡してみると”オートマ化”の波が押し寄せてきていることは歴然。今後もっとオートマモデルが増えることは必至なのです。
MT-09 Y-AMTではキーレスシステムが採用されています。これは上位モデルにあたるMT-09 SPと同様の装備です。この部分でもスタンダードモデルと見分けることができますね。
MT-09 Y-AMTはフルオートマのほか左側のスイッチボックスに備わるシフトアップ/ダウンボタンにより任意のシフトチェンジも可能です。超低回転で高いギアや、過剰なシフトダウンなどができないよう制御されています。
これまで2024年にマイナーチェンジを受けた現行MT-09には何度も乗る機会があり、そのたびに大絶賛してきました。エンジン、足まわり、ポジション、電子制御、すべてにおいて素晴らしい完成度なのです。
そのMT-09を追いかける形でブラッシュアップが図られたXSR900や80年代のGPレーサーをオマージュしたXSR900GP、足まわりのグレードアップにおいて上質な仕上げが施されたMT-09 SPなど派生モデルもすべて乗ったうえで、MT-09のスタンダードモデルは最高だと言える一台なのです。
他メーカーも新たなオートマシステムやオートマシステム搭載車両を次々とマーケットに送り込んできており、その話も踏まえるとMT-09というモデルに最初にオートマチックトランスミッションシステムであるY-AMTを搭載したことは必然的であると思っています。
今回MT-09 Y-AMTに初めて触れたのですが、ヤマハ・FJR1300ASに採用していたオートマシステムのYCC-Sがオートマチックトランスミッションを搭載していたのとは異なり、通常のマニュアルトランスミッションを基本としてアクチュエータなどを介してシフトチェンジを行うシステムとなっています。
それなので走り出しこそ、クラッチの繋がりに一瞬戸惑いましたが、自動制御の下でシフトアップ、ダウンが行われるギアチェンジ感は意外なほどスタンダードモデルに近いもので、むしろ、そのシフトチェンジが行われるスピードは自分の手でクラッチレバーを操作するよりも早いと思えます。
MT-09 Y-AMTはスタンダードモデルと同じかそれ以上にスポーティな走りを楽しめました。ただクラッチレバーを使って任意に半クラ状態を作ることはできないので、Uターンなどでは少々戸惑うことも!?
MT-09 Y-AMTにはシフトチェンジペダルがありません。この点はやや気になった部分で、個人的にはマニュアルモードの際、手元のボタン操作でシフトアップするよりも、シフトチェンジペダルを設けて、それでアップダウンを行いたいと思いました。
MT-09とMT-09 Y-AMTを何度も交互に乗り換えてテストを行ったのですが、バイクに乗り始めて早30数年の私は普段無意識のうちにタイミングを頭の中で算出し、シフトチェンジをしていることをしみじみと感じさせられる結果になりました。
それはMT-09 Y-AMTに乗り始めた当初、いつもの自分が行っているシフトアップ/ダウンとは異なるタイミングでシフトチェンジがされることに違和感があったからです。ただこれに関して言えば、「考えるな、身をゆだねろ!(Don't think! Feel.)」的なものであり、スロットル操作に集中しているだけで的確なギアに入れてくれるのです。
自分のしているシフトチェンジタイミングが間違っていたとは思いたくはないのですが、テストライダーや開発陣ら多数の意見が反映されているに違いないそのタイミングに体の方を適応させました。基本的な考えとしてMT-09の潜在的なスポーツバイクとしての素性を誰しもが体感できるようにしているということですので、ボタン操作でのシフトチェンジも率先して行うことも楽しめますが、ただ、どうも指でシフトチェンジするのはしっくりこないのは事実で、「足元のペダルで操作できるといいのになあ」と思っていました。さらに言えば、クラッチレバーは無いのですから、その左手部分にリアブレーキレバーを備えてくれれば言うことなし!!(あくまで小松男推奨仕様です)。
旧世紀ライダー的にはクラッチレバーのあるMT-09スタンダードモデルの方が扱いやすいと感じてしまいました。クイックシフターも備わっていたので、もはや発進時しかクラッチ操作をしませんでしたが……。
右手側のスイッチボックス上にオートマ/マニュアル切り替えボタンが備わっています。セッティング的にはAT固定よりも率先してMTモードで操作する方が良さそうだと思えました。
2024年はヤマハのY-AMTのほかにホンダE-ClutchやBMWモトラッドASAなど様々なオートマチック機構が登場しました。10年ほど前に電動バイクを手掛けるメーカーの発表会で「ライダーは任意でのシフトチェンジを求めている。だから無段階変速が多い電動バイクにもシフトチェンジ機構を設ける」と言っていたことを覚えているのですが、現在のATモデルの波が押し寄せる様子を見ると、とどの詰まり無いものねだり的なことなのかもしれないと思ってしまいました。
欧米ではATモデルのニーズが一定数あると聞いていますし、何よりもMT-09 Y-AMTのメリットはAT限定免許でも乗れることだと考えています。開発での意図とは異なるかもしれないですが、実際にMT-09とMT-09 Y-AMTを乗り比べてみたところ、どちらが良いという問題ではなくMT免許ならスタンダードモデル、AT限定免許ならMT-09 Y-AMTなのではないかと思った次第です!
排気量888cc、3気筒のCP3エンジン。これが最高に気持ちいいのです。AT限定免許だからと諦めていたライダーが乗れるようになるのはとても魅力的なことだと思います。
2024モデルでは細部のブラッシュアップが図られたマイナーチェンジが行われましたが、フェイスマスクが変更されたことにより大きく印象が変わっています。個人的には好みの顔つきです!
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