掲載日:2024年07月10日 試乗インプレ・レビュー
取材協力/ポラリスジャパン
写真/インディアン モーターサイクル
取材・文/河野 正士
衣装協力/クシタニ、アルパインスターズ
INDIAN 101SCOUT
インディアン・モーターサイクル(以下インディアンMC)にとって「スカウト」というモデルは、1920年にデビューした歴史的なモデルであり、2013年にインディアンMCがポラリス・インダストリー傘下で活動を再開して以来、新生インディアンMCブランドを支えた重要なモデルである。2014年に発表した旧「スカウト」は徐々にモデルファミリーを増やしながら、今日までの10年間で約10万台を販売する中核モデルシリーズへと成長した。そのモデル・ファミリーがフルモデルチェンジするとあり、2024年4月に米国サンフランシスコで行われた報道機関向け発表会は過去最大規模となり、それはインディアンMCの気合いを感じるものであった。
その報道機関向け発表会では「スカウト」シリーズのユーザー特性も発表。それによると「スカウト」シリーズを購入するユーザーの93%は、「スカウト」が初めてのインディアンMCのプロダクトであり、さらにそのなかの28%は「スカウト」が初めてのバイクであるという。インディアンMCはその事実を重く受け止め、インディアンMCとバイク業界にとって大きな役割を果たす「スカウト」のフルモデルチェンジは、大きなチャレンジだったという。
もちろんインディアンMCが新型「スカウト」ファミリーに課した命はそれだけではない。それはミッドサイズクルーザー・マーケットのシェアリーダーになること。それは同時にクルーザーカテゴリー最大のマーケットでリーダーになることを意味し、クルーザーマーケットそのものを牽引する存在になると言うことだ。
そのために新型「スカウト」は、新型エンジンと新型フレームを開発し、デビューと同時にキャラクターが異なる5つのモデルを発表し、そのスタイリングとパフォーマンスにおいて昨年2023年に発表した新型「チーフ」シリーズと連携をとり、インディアンMCブランドの基礎となるモデルを再構築したのである。
エンジンは挟角60度のV型2気筒、水冷DOHC4バルブを踏襲しながら、ボアを広げて排気量を1133ccから1250ccに拡大。SpeedPlus(スピードプラス)というペットネームも与えられた。その新型エンジンは、外観はもちろん、大径バルブを採用したシリンダーヘッド周りやクラッチ周りなど構成パーツの8割を一新。出力もトルクも全域で10%以上も向上している(最高出力は17%、最大トルクは14%向上)。また大型バイク初心者やV型2気筒エンジン初心者にくわえ、ベテランライダーまでもが扱いやすいと感じる出力特性を考慮し、そのトルクは全域にわたってフラットにセッティングされている。そのなかで「101スカウト」だけは、ECUのマップを変更することで、他の「スカウト」モデルよりも6馬力アップの111馬力を発揮。最大トルクは、1Nmアップの109Nmへとわずかな変化だが、低中回転域でのトルクは平均して10%程度分厚くなっている。
またフレームも一新。旧「スカウト」シリーズはアルミフレームを採用していたのに対し、新型「スカウト」はスチール鋼管をメインチューブに使用。そのメインチューブと繋がる、ミッドフレームと呼ばれる、サイドパネルとスイングアームピボット周りを構成するフレームはアルミキャスト製フレーム。またリアフェンダー内に隠れているリアフレームもアルミキャスト製というハイブリッドフレームだ。
新型スカウト・シリーズは、ローダウンしたサスペンションを採用し1930年代に流行したスポーツスタイルをベースにした「スカウト・ボバー」、ディープフェンダーを採用しクラシカルでエレガントなスタイルを採用した「スカウト・クラシック」、1940年代のツーリングスタイルを再現した「スーパー・スカウト」という、前後16インチホイールを採用する3モデル。トレンドであるクラブスタイルを構築した「スポーツ・スカウト」、そして「101スカウト」というフロント19インチ/リア16インチホイールを採用する2モデル、合計5モデルで構成されている。
フラッグシップモデルである「101(ワンオーワン)スカウト」は、先に説明したとおりのハイパワー・エンジンセットアップを採用すると同時に、調整機能を追加し剛性や減衰力特性を高めた倒立タイプのフロントフォークやリアショックユニットを搭載。フロントにブレンボ製4ポットキャリパーをダブルでセットして制動力を大幅に高めている。
「101スカウト」は、他の「スカウト」ファミリーに対してわずかにパワーアップしているが、その違いは明確で、走り出した瞬間にそれを感じることができる。
そもそもSpeedPlusエンジンはフラットなトルク特性を信条としていて、低回転域からガツガツとトルクを感じ車体をグイグイ前に押し出していくフィーリングとは違っている。どちらかというとスムーズ、いやVツイン・エンジンと聞いて誰もが思い描く振動は皆無で、鼓動感はありながらウルトラ・スムーズ。そのまま一気に高回転までエンジンを回して、スポーツライディングや高速走行を楽しむようなイメージだ。それはすべての新型「スカウト」シリーズに搭載されるSpeedPlusエンジンに共通している。
SpeedPlusエンジンにはレイン/スタンダード/スポーツの、出力特性が異なる3つのライディングモードがセットされているが、とくにレイン/スタンダードの両モードでは、あえてVツインの鼓動感を抑えて、スムーズさを強調している。大排気量のVツインエンジンでは、ときに過度な爆発力がギクシャクとした乗り味となり、それがVツインに乗り慣れていないライダーにとって乗りにくさ、扱いにくさに繋がってしまう。先に述べたとおり、「スカウト」シリーズが多くのインディアンMC初心者/バイク初心者の受け皿的なプロダクトとなっていることを考えれば、このレインおよびスタンダードの、両モードの出力特性は理解できる。
もしVツインの出力特性に慣れているライダーであるなら、ライディングモードはスポーツの一択だ。低中回転域での鼓動感や力強さは一回り太くなり、高回転域でのパンチも力強くなる。アクセル操作に対するエンジンの反応も良くなることから、アクセル操作と車体の動きのシンクロ率が高まり、それによって「スカウト」シリーズはキビキビと走る。
「101スカウト」はECUチューニングによって最高出力を高めるとともに、低中回転域の出力トルクが向上していて、そのキビキビ感はさらに強くなる。また前後サスペンションの変更による効能は大きく、高速域での車体の安定感、ワインディングでのスポーツ性は一段と高まる。ブレンボ製キャリパーをダブルでセットし制動力を高めたことも、走りのグレードをワンランク高める要因となっている。
もちろん、高性能なサスペンションやブレーキをしっかりとワークさせるためには、それを支えるフレームがアップグレードしている証拠だ。
クルーザーモデルでは、エンジンの排気量やスタイリング、近年では豪華な装備が、そのプロダクトの価値となりつつあるが、ミッドサイズであることから多様なライダーの、多様な用途によって求められる、多様な価値を実現するため、新型「スカウト」シリーズは、その土台であるプラットフォームを磨き上げた。ハイスピードでワインディングを駆けた「101スカウト」の試乗で、そのことを強く感じたのだった。
101スカウト(身長170cm/体重65kg)
エンジンは挟角60度の排気量1250cc水冷4ストロークV型2気筒4バルブDOHC。旧モデルからボアを広げて排気量を拡大しているほか、エンジン構成パーツもスタイリングも大幅に変更を受けている。101スカウトのみECUのセッティング変更で111馬力を発揮する。
「101スカウト」および「スポーツ・スカウト」は、クウォーターフェアリングと呼ばれる、ハンドルマウントのカウルを装着。高い防風性を発揮するとともに、スポーティなスタイリングを造る重要なアイテムとなる。「101スカウト」のみLEDヘッドライトを標準装備。
「101」のロゴが入るサイトパネルは、ミッドフレームと呼ばれる、スイングアームピボットを兼ねたフレーム。アルミキャスティングで、そのフィニッシュもカラーリングも美しい。
短くカットされたリアフェンダー(スカウト・クラシックのみディープフェンダーを採用)の内側にアルミ製サブフレームを採用することで、タンデムやサイドケースにも対応する高い強度を持ちながら、フェンダー外側にフレームが見えないすっきりとしたリア周りのデザインを実現。
「101スカウト」は、フロントにインナーチューブ径43mmフルアジャスタブルタイプの倒立フォークをセット。切削加工が施された19インチフロントホイールに、ラジアルマウントタイプのブレンボ製4ポットキャリパーと320mm径ブレーキディスクをダブルでセット。
リアサスペンションもフルアジャスタブルのピギーバックショックユニットを採用。ストローク量は76mmだが、その乗り心地もスポーツライディング時のパフォーマンスも、他モデルよりも優れている。
直径101mmのタッチスクリーン式カラーディスプレイを採用。表示画面は2種類から選択可能で、ライディングモードなど各種セッティングも、グローブをしたまま画面をタッチして行うことができる。
「101スカウト」および「スポーツ・スカウト」は6インチライザーを標準装備。トップブリッジから伸びるハンドルライザーによって、ハンドルを高い位置にセットするトレンドのライディングスタイルを構築している。
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