掲載日:2019年10月31日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/小松 男
HUSQVARNA SVARTPILEN 701 STYLE
ハイパフォーマンスオフロードバイクを手掛けることで知られるハスクバーナだが、一般的なライダーにはまだ馴染みの浅いブランドだと言える。そのハスクバーナが、本格的なロードスポーツモデルに参入するために、昨年マーケットに送り出したのが、ヴィットピレンとスヴァルトピレンだ。当初、両車は基本コンポーネントを共通とする401モデルを持っていたが、排気量の大きい701モデルはヴィットピレンしかラインアップしていなかった。
そして遅れること約1年が経ち、今回テストを行うスヴァルトピレン701が加わった。セパレートハンドルの装備などにより、スポーティなカフェレーサースタイルとされたヴィットピレンに対し、スヴァルトピレンはどちらかというとトラッカー的なスタイリングだ。とはいえ、どちらのモデルも他に類を見ない独特なスタイリングを纏っており、街を走らせれば、皆振り返るインパクトを備えている。モーターサイクルでありながらアーティスティックさを感じさえる新時代のモデル、スヴァルトピレン701の魅力を紐解いてゆく。
我々日本が韓国や中国と並べられて語られることをイメージすると、語弊が生じるかもしれないことを承知で書き始めるとすれば、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランド等々の、北欧諸国は独自の文化を備えており、政治や生活保障では先進国として注目を浴び続けている。そんな北欧は商工業でもボルボ、ノキア、オーリンズと多くのビッグブランドを抱えている。共通する特徴は機能面を損なうことなく、高いデザイン性を持たせていることが挙げられるだろう。そんなブランドのひとつにハスクバーナも挙げることができる。すっかりバイクの話から逸れてしまっているが、まずハスクバーナというブランドを知ることをお願いしたいのである。
17世紀にスウェーデン王室の命により銃製造を開始したことが起源とされるハスクバーナ。日本で言えば江戸時代からその名は続いているということになり、その歴史の深さを感じさせる。1903年にバイクの製造を開始、その後、現在でも作り続けているチェーンソーや芝刈り機などを手掛けることになる。世界的に見るとハスクバーナと聞いて、農林造園機器、もしくは建設機械のメーカーを思い浮かべる人が大多数かもしれない。
一方バイク製造部門はというと、オフロードバイク製造に主軸を置き、様々なレースで好成績を上げていたが、1987年にイタリアのカジバに売却されることとなる。その際、分裂したスタッフが立ち上げたのがHusaberg(フサベル)だ。それからさらに20年が経った2007年にはBMW傘下となる。この頃、NUDA(ヌーダ)というロードバイクが作られているが、ヌーダもまた脳裏に焼き付くような独特なスタイリングを纏っていた。
そして2013年に、オーストリアのPierer Industries AG(ピエラ・インダストリーAG)に買収され現在に至る。なおこのタイミングでフサベルも同一傘下となっている。実はピエラ・インダストリーAGは、オフロードバイクの世界ではライバル関係であったKTMやWPも有している企業だが、両社は相乗効果によって成長を続けている。そのような深い歴史を持つハスクバーナの最新モデルがスヴァルトピレン701スタイルだ。
今回テストを行ったのは、スヴァルトピレン701から派生したスペシャルエディション、スヴァルトピレン701スタイルだ。スタンダードモデルとの違いは、特別仕様のカラーリング、ワイヤースポークホイールの採用、CNC加工されたフットペグ、ハンドルバーエンドミラーの装備などで、エンジンをはじめとしたスペック上の違いはない。よって後に記述する性能面に関してのインプレッションとしては、スタンダードなスヴァルトピレン701も同じと考えていただければよいだろう。先だって発売されていたヴィットピレン701は、数回テストライドを行ったことがあるので、多少それとの違いを交えながら進めて行こう。
スペック上、シート高は835mmとされており、これはライバルとなるミドルクラススポーツの中でも、若干高い数値となっているが、乾燥重量が158.5kgと驚くほど軽いため、取り回しは容易。ヴィットピレン701と比べ、サスペンションのストローク量が多く、沈み込みも柔らかく感じることもあり、さほど足つき性を問題とすることもないだろう。そうそうヴィットピレン701と言えば、セパレートハンドルを採用していることもあり、スポーティなポジションによって、自身のフィジカル面でのポテンシャルアップを要求される感があったのだが、このスヴァルトピレン701スタイルは、バーハンドル化されていることもあり、親しみやすさを感じさせる。
とはいえ、走り出せば過激そのもので、ボア105mm×ストローク80mm、692.7ccのビッグボアシングルエンジンは、低回転域から爆発にトルキーで、なおかつ高回転まで引っ張ってもパワー落ちを感じさせない優れたもの。フルアジャスタブルタイプのWP製サスペンションの動きも良く、コーナー進入の減速時から、スロットルを開けて抜けていくまで、しっかりと路面のトラクションを感じ取ることができる。パワフルで軽快、そして扱いやすい。スポーツライディングそのものを純粋に楽しめる一台に仕上がっていた。
スヴァルトピレンは、スウェーデン語で「黒の矢」を意味しており、1955年に登場した同社初のオフロード走行用モデル「SILVERPILEN(シルバーピレン・意味は銀の矢)」へのオマージュを捧げたネーミングでもある。そのためスヴァルトピレンのライディングポジションの打ち出し方や、サスペンションの動きなどからは、どこかしら”土”を匂わせる雰囲気が感じられる。スタイリングが独特すぎるため、何に似てるということは一概にたとえられないが、俯瞰してみればトラッカー的な要素は見受けれられることから、やはりオンとオフの中間を狙ったモデルなのだと推測できる。
弟モデルにあたるスヴァルトピレン401に備わっていた燃料タンク上のキャリアは、スヴァルトピレン701には装備されていないことや、後ろタイヤの半分くらいまで切り詰められたボディデザインなどから、積載性は低いと言うことができる。何泊もするようなロングツーリングを楽しむものではなく、ストリートや日帰りでのスポーツツーリングをする相棒として割り切って作られている。走りの面の性能の高さもさることながら、やはりどこに停めてもその場の雰囲気が変わるほどオリジナリティ溢れるスタイル。これこそオーナーの所有欲を満たすものなのかもしれない。
前衛的なデザインに目を奪われるスヴァルトピレン701だが、中でも特徴的なのはゼッケンプレートだろう。右側のみ装着されており、よく見ると「701」とロゴが入っていることが分かる。
系列ブランドとなったWP社のサスペンションをリンクを介して設置。サスペンションストローク量は前後とも150mmとされている。動きが良く、路面状況のインフォメーションも伝わりやすい。
独特なラインに有機的なイメージを連想させる燃料タンクは、ヴィットピレン701と共通のデザインで、容量は12Lとされている。今回テストしたスヴァルトピレン701スタイルは、特別カラーである。
ライダーとタンデマーでセパレートされたシート。ライダー側は滑りにくい素材が表皮に採用されている。シート下のパネルが左右に飛び出しており、これが若干足つき性をスポイルしている。
美しく組まれたクロームモリブデン鋼製のトラスフレームに、692.7cc水冷シングルエンジンを組み合わせる。最高出力は55kW(約75馬力)。軽量なため、数値以上にパワフルに感じられる。
スタンダードモデルはブラック鋳造ホイールを装備しているのに対し、スヴァルトピレン701スタイルはチューブレス仕様のワイヤースポークホイールを採用。フロント18インチ、リア17インチとされている。
スヴァルトピレン701スタイル専用のステップバーを採用。クラッチレバー操作をせずともシフトアップ/ダウンが可能なイージーシフトも装備。スリッパ―クラッチと相まってスムーズなシフトワークが可能だ。
ゼッケンプレートスタイルのヘッドライトベゼルをベースに、オーセンティックな丸型としたLEDヘッドライトをインサート。チューブLEDを採用したデイライトも印象的に目に映る。
シンプルなメーターパネル。円形デザインを上手く利用し、周囲にタコメーター、残燃料計、水温計を配置し、中央にスピードメーターを表示させるレイアウトとなっている。
高い自由度かつ、車体の抑えが利くライディングポジションをもたらすバーハンドル。バーエンドミラーはスヴァルトピレン701スタイル専用装備となる。フロントフォーク上端で、減衰量の調整が可能だ。
テールセクションは、ボディ後端がチョップされたような思い切ったデザインとなっている。タンデマー用のグラブバーは装着されず、代わりにベルトが備わっている。
ライセンスプレートホルダー、ウインカー、フェンダーのアッセンブリは、スイングアーム後端に装着されている。これにより、極端に短いボディラインが助長されている。
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