

掲載日:2017年03月31日 試乗インプレ・レビュー
取材・文/佐川 健太郎 写真・動画/山家 健一 衣装協力/HYOD
GSX-R750は自分にとってとても懐かしさを感じるモデルだ。当時は2ストレプリカブームの真っ只中にあったが、その中で400に続いて発売された750は4ストマシンで戦う最高峰クラスのTT-F1レーサーそのままの姿で登場した。街で大型バイクを目にすることがまだ稀だった時代、油冷エンジンの粗野で図太いエキゾーストノートを轟かせながら2灯ヘッドライトで迫りくる様はさながら耐久レーサーを思わせた。古き良き時代の思い出だ。
翻って現在。かつてメジャーだった750ccクラスはレースカテゴリーとしては消滅したが、スズキは伝統のR750を今もこだわりを持って作り続けている。600ccのハンドリングと1000cのパワーを兼ね備えたベストバランスの排気量として、一部マニアの間では根強い人気を誇っているモデルだ。
エンジンは十分パワフルで公道では十分すぎるレベルと言っていい。試乗したのは欧州フルパワー仕様で150psの最高出力はリッター換算で200psに相当することからもパフォーマンスの高さは一線級だ。
肝心の出力特性だが、全域フラットでとても扱いやすい。特に素晴らしいのはボリューミーな低中速トルクで、6速2000rpm程度のトップスローからでもノッキングすることなくスムーズに吹け上がっていく。S-DMSは2段階でAモードがフルパワー、Bモードが点火制御によってマイルドな特性にしているが、基本的にどちらも扱いやすさに変わりはない。
サウンドも素晴らしい。回転数を上げるに従ってワイルドな重低音からレーシーな高周波へとオクターブを超えていくエキゾーストノートは、街を流しているだけでも気分が高揚してくる。
今回は公道での試乗につき、ハンドリングについては日常域での話になるが、全体的にしっとりと安定感があるものだ。ステップや体重移動に対する車体の動きは非常にレスポンシブだが、そこに怖さがない。倒し込みの感覚がニュートラルで、どこかでフラっと倒れてしまいそうな不安がない。どんなライダーでも馴染みやすい味付けだと思う。かつてサーキットで試乗したこともあるが、きっと同じ感覚だったと思う。
ブレーキは特にフロントが良くできていて、効くのはもちろんだが微妙な速度コントロールもしやすい。BPFのお蔭もあると思うが、コーナー進入時におけるマシンの姿勢制御がとても自然にできる感じだ。つまり、曲げやすいのだ。
もうひとつ特筆したいのが乗り心地の良さ。GSX-Rシリーズに共通するキャラクターなのだが、サスペンションがソフトで路面の凸凹を美しく吸収してくれる。SSと言うと、高荷重設定ガチガチの足まわりと思われがちだが、GSX-Rはその逆でしなやかさが際立つ。BPFの特性もあると思うが、街乗りレベルでも硬さを感じないところがいい。跨っただけでスッと沈み込む前後サスと、810㎜というSSとしては極めて低いシート高も相まって、足着きが抜群に良いこともメリットだ。
トラコンやABS、電子制御サスペンションなどの最新デバイスは入っていないが、逆にシンプルが故にスーパースポーツとしての素性の良さが分かりやすいとも言えるかも。熟成されたエンジンとハンドリングの完成度も高く、ハンドル切れ角が十分あって足着きも良くUターンもしやすいなど、ビギナーでも気持ちよく操れる懐の広さも魅力だ。GSX-Rが好きでナナハンにこだわりがある人には是非おすすめしたいモデルである。
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