

掲載日:2014年12月17日 試乗インプレ・レビュー
レポート/中村 友彦 写真/富樫 秀明 記事提供/ロードライダー編集部
※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『New Model Impression』を再編集したものです
2014年も終わろうかという時期にこんなことを言うのも何だけれど、実は僕は2013年にフルモデルチェンジを受けたニンジャ250(以下ニンジャ)に、一度も試乗したことがなかった。そのうちチャンスが巡ってくるだろうと思っていたら、細部を刷新した2015年型が発表されてしまったわけだが、幸いなことに2015年型の基本設計は、2013/2014年型と同じである。その事実を確認したうえで、最新のニンジャと数日を共にした僕が、何を感じたかというと……。「こんなにも変わっていたのか!」だった。もちろん、このあたりはニンジャの進化を熟知した人には何を今さらの話だが、現在のニンジャには、2008~2012年の初代で感じた牧歌的な雰囲気がほとんどない。僕の印象だと初代のキャラクターは、アグレッシブな見た目とは裏腹に、ベーシックなオールラウンダーだったのだ。一方で、エンジンがビュンビュン回り(特に8.000rpmからの吹け上がりは絶品)、シャシーが乗り手の操作に忠実に反応してくれるこの最新型は、紛れもなくスーパースポーツ。ここまで来るとZX-25Rと名乗るべきじゃないかと思えるほどに、スポーツライディングが楽しめる乗り味になっていたのである。
カワサキがこういったキャラクターに舵を切った背景には、2013年型ニンジャがネイキッドのZ250と同時開発されたという事情があるのだろう。とはいえ、万人受けを前提とする現代の250ccモデルで、よくぞここまで思い切ったなあというのが、初代しか知らなかった僕の現行ニンジャに対する印象なのだ。
さて、そんなニンジャの2015年型で注目すべき要素は、タイヤがIRCのRX-01からダンロップTT900GPに変更されたことと、クラッチにスリッパー機構が導入されたことである。まずはタイヤに関する印象を述べたいところだが、2013/2014年型を体験していない僕には、残念ながら銘柄での差異は分からない。
とはいえ、現行ニンジャとTT900GPの相性は抜群で、僕はグリップや乗り心地に一切の不満を感じなかったし、2013年型の登場時に何人かのテスターが“サスペンションに硬さを感じる”、“兄弟車の300に的を絞って開発されたのではないか”などと言っていたことを考えると、2015年型はそのあたりがきっちり対策されているような気がする。
一方のスリッパークラッチに関しては、試乗前の僕がそうだったように、多くの人が“パワーが31psしかない250ccにそんなものがいるのか?”と感じていることだろう。確かに、スリッパークラッチはミドルクラス以上の高出力車向けと言われるパーツだから、ニンジャにとってマストとは言い難い。だが、現在の僕は、このパーツはニンジャのような250ccでも十分に効能を体感できる、と思っているのだ。
スリッパークラッチの役割は、シフトダウン時のエンジンブレーキの緩和である。そのこと自体は読者の皆さんにとっては周知のことだと思うけれど、エンジンブレーキの緩和が車体の安定化につながり、結果的にコーナリング中に、バンクさせながらのシフトダウンが気軽にできることや、臆することなく2速落としが可能になること(しかも、クラッチを切って意図的にエンジン回転数を上げる必要はまったくない)を、読者の皆様はご存知だろうか。いや、そう書いている僕自身が、恥ずかしながら今回の試乗でその事実を初めてハッキリ認識したのだ。いずれにしてもスリッパークラッチは、ニンジャのスポーツ性を格段に高めてくれるパーツだったのである。
余談だが、ニンジャが9月のタイミングで仕様変更を受けた背景には、日本でも12月に発売となるヤマハYZF-R25を牽制しようという意識があると思う。ちなみにR25は、ニンジャを凌駕するパワーウェイトレシオを公表しているものの、6年に渡って熟成を続けてきたニンジャを超えるのは、容易なことではないはずだ。早く2台を比較試乗したい。
スタンダードのニンジャ250はシンプルなソリッドカラーだが(ホワイトとライムグリーンが存在)、今回試乗したスペシャルエディションは専用色のブルー×エボニーを採用したモデル。なおABS仕様にはグレー×エボニーとライムグリーン×ホワイトの2種が設定されている
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