

掲載日:2014年11月06日 試乗インプレ・レビュー
取材・文/佐川 健太郎 写真/山家健一 動画/倉田昌幸 衣装協力/HYOD
新型ZX-6Rはフルモデルチェンジから1年以上が経つが、本格的に試乗したのは今回が初めて。気になっていたモデルだけに興味津々だ。まず見た目だが、従来型に比べるとより大柄になり見栄えがする。限定カラーということもあると思うが、グレード感が高まった印象だ。599ccだった従来モデルのコンパクトでエッジの効いた、いかにもロードゴーイングレーサー風の硬派なフォルムも、それはそれで好きだったが…。デザイン的にはZX-10Rに近くなったとも言えるが、それでも細部をよくよく見ていくと、ZX-10Rより前傾が緩く、フロントカウルやリアシートも大き目に作られているなど、街乗りやツーリングにも使えるワイドレンジのスポーツモデルとしての立ち位置が見えてくる。
実際に跨ってみると、それがさらによく分かる。ハンドル位置は比較的高めだし、一見すると高いシートも、初期作動が柔らかくストロークしてくれる前後サスペンションのおかげで、この手のモデルとしては足着きも悪くない。ハンドル切れ角もそこそこあるので、Uターンもさほど苦にならない。つまり、初対面でも緊張せずにすぐ打ち解けあえるスーパースポーツなのだ。
走りはどうだろう。たかが37cc、されど37cc。数値以上にその増量分の恩恵はあるようで、まず発進が楽になっている。低中速域のトルクが太ったおかげで、Uターンや渋滞路など低速バランス系での信頼性が高まった。車体が軽いので、グラッときてもいざとなれば足を出して堪えられるのもミドルクラスの良いところだ。
使い勝手の良さも魅力だが、やはりメインステージはワインディング。スロットルワイドオープンで高回転まで使い切った爽快な走りこそが、ZX-6Rの真骨頂である。軽量コンパクトで、曲がるための運動性能を突き詰めたスーパースポーツにおいて、129psというパワーは数値のイメージ以上に速い。その気になれば、絶叫にも似た金切り声を響かせながら一瞬のうちに16,000rpmにまで達する高精度なエンジンの気持ち良さは、他に例えようもないほど。ミドルクラスの直4サウンドは音質においても最高だ。まあ、現実的な話、公道ではそのポテンシャルの半分も発揮できないのがもどかしい。走りを追求したい派は、さっさとサーキットへ行くべきだ。
もう少し日常的なレベルとしては、大型バイクらしい楽しみ方もできる。従来型よりトルクに余裕があることもあり、市街地を流していてもストレスを感じないし、高速道路では忙しくシフトチェンジしなくても十分なペースを維持できる。大きめのスクリーンは極端に伏せなくても防風効果を発揮してくれるなどのプラスアルファがある。599ccの従来型に比べ、全域においてパワー、トルクとも上回る性能曲線のとおり、同じような走り方でもゆとりを持ってこなせる感じがするのだ。
足回りの進化も素晴らしい。サスペンションは従来型のやや硬めのカッチリ感とは一味違うソフトセッティングで乗り心地も快適。それでいてコーナリング中に深くストロークしたところでは荷重を受け止めてコシ感が立ち上がってくる。ハンドリングは基本的に軽いのだが過敏さはなく、高速域ではしっとりとした安定感も出てくるなど、よく作り込まれているも思う。フロントフォーク上部には左右別系統のアジャスターが装備されていて、簡単に素早く調整できる。
ブレーキは本気でかけると効き過ぎてしまうほどだが、そこは日本向けに標準装備されているKIBSがありがたい。スリッパ―クラッチと合わせて、ブレーキングやシフトダウンでのミスを補ってくれるため、安心してコーナーにアプローチすることができる。
トラクションコントロールも試してみたが、3モードとも介入度の違いが明確で分かりやすく、レース対応の精度を持つZX-10Rほどのキメ細やかさは無いものの、公道においてはむしろ実用的かもしれない。パワーモードも含めて、走行中でも左ハンドルスイッチで簡単に切り替え操作ができる点も秀逸。高機能が故に使い方が複雑化してしまった一部の高級モデルに比べると、むしろユーザビリティに優れていると言えるだろう。走りがウリではあるが、そこに一息つける懐の広さも持ち合わせた、爽快なモデルだ。
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