

掲載日:2013年03月28日 試乗インプレ・レビュー
取材・文/佐川 健太郎 写真・動画/MOTOCOM 衣装協力/HYOD
初めて対面するZ 250は、そのマッシブなボディが醸し出すパワーによって、排気量を超えた存在感をアピールしている。パーツひとつひとつにエッジが効いた彫りの深い外観や、多面体を駆使したレンズ類、華奢なほど薄肉化されたスポークホイールなど、ひと昔前の“ニーゴ―”とは比べ物にならないレベルの質感だ。エンジンと車体、タンクやシートまでニンジャ250と共通との情報を事前に得ていたこともあり、外装をはぎ取っただけの単なる廉価版という思いもあったが、実車を前にするとまったく別のマシンがそこにあった。あらためてデザインの力を感じた瞬間だ。
跨って地に足を着いて感じる、クラス相応の車体の軽さとスリムさ、沈み込むサスペンションによって、ようやくコレが250ccなのだと気付かされる。そしてエンジンを始動すると、細く控えめな“トコトコ…”というエンジン音。いつもはリッターオーバークラスの手強いマシンを相手にする機会が多いこともあり、ホッと安心する自分がいる。けっしてナメているわけではないが、メンタル的な重圧感が全然違う。何も考えずにスロットルを開けても、まったく怖くない。というより「もっと走れ」とばかりに、マシンに鞭をくれてやるような余裕さえある。開放的な気分でリラックスして乗れる。このクラスならではのメリットだろう。エンジンは当たり前だがニンジャ250と同じフィールで、排気量の割には低中速トルクに厚く、従来型『Ninja 250R』より出足がいいし、それでいてスムーズ。Uターンなどで気になった線の細さも解消されている。ハンドルがアップライトで切れ角も十分あるので、Uターンなどもかなり得意だ。
ハンドリングはクイックだ。軽量な車体ゆえ、ただでさえ動きは軽快なのだが、特に低速で車体を傾けていくとハンドルが“スパンッ”と切れる。ニンジャ250と比べてキャスター角が起き気味で、しかもステアリング周りにヘッドライトやビキニカウルなどの補器類がマウントされていることも影響していると思う。この特性を活かせば、混雑した街中などキビキビと抜けて行けるし、スラローム競技などもかなりイケるはずだ。ちなみにニンジャ250のほうが車重もあるせいか、車体の動きはゆったりと穏やかな感じだ。
エンジンはすっかり低中速寄りと思っていたが、回転数を上げていくとまた違った顔が現れる。7,000rpm辺りを境に排気音は“トコトコ”から“ギュイーン”へと変貌し、伸びやかな加速感とともに車速もぐんぐん伸びていく。高速道路では100km/hを超えても余裕でシフトアップしていける感じだ。この上昇感は並列2気筒のニンジャ系エンジンならでは。市街地走行から高速道路まで、近場を移動するならこれで十分じゃないかと思えるパフォーマンスだ。今回はワインディングを走る機会は無かったが、首都高速道路の高速コーナーなどでは車体がピタリと安定し、イメージどおりのラインをトレースすることができた。サスペンションはニンジャ250よりソフトなセッティングと聞いていたので、外乱に影響されるかとも思ったがその心配はまったくもっていらず。ニンジャでも定評のあるフレーム剛性の高さが効いているのだろう。車体の素性の良さを感じ取ることができた。いずれにしてもスポーツに軸足に置くとして、街乗り主体ならZ250の使い勝手の良さやライディングポジションの快適さが光るし、サーキットよりも高速域での運動性を求めるなら、ニンジャの空力やハンドリング特性によるメリットが出るだろう。
ライバルひしめく250ccクラスの中においても、Z250はおそらくトップクラスの走りを見せてくれるに違いない。そして、所有欲を満たすグレード感と都会的な風景にもよく似合うクールなスタイリングで、大人のライダーにも受け入れられそうな予感がする。エントリークラスというだけではなく、既存のビッグバイクユーザーでも興味をそそられる。そんな“スーパークォーターの時代到来”を感じさせてくれるモデルだ。
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