カワサキ ニンジャ1000 (Z1000SX)
カワサキ ニンジャ1000 (Z1000SX)

カワサキ ニンジャ1000 (Z1000SX) – 現代の「Ninja」が示す新たな方向性

掲載日:2011年01月27日 試乗インプレ・レビュー    

カワサキ ニンジャ1000の試乗インプレッション

カワサキ ニンジャ1000の画像

懐の深さに安堵する
万能型スポーツ選手

今年はカワサキが熱い。排気量を拡大して蘇った W800 に ZX-10R のフルチェンジ、そしてニンジャ1000ときた。それにしても大胆な名前をつけたものだ。欧州では Z1000SX としてリリースされていて、その素性が分かりやすいのだが、こちらは「Ninja」である。

ニンジャと言えば、我々の世代ではやはり「GPZ900R Ninja」のことを思い浮かべる人も多いのではないだろうか。最近は国内でもニンジャ 250R や 400R などの手頃なスポーツモデルが出ているが、私的にはちょっと斜に構えて見ていたところもある。乗ればいいマシンなのだが、「あまり軽々しくNinjaを名乗ってほしくない」と思ったからだ。それほど、かつての GPZ900R は輝かしいマシンだった。もちろん時代は違うのだが、「Ninja」という名前には、その重みを背負うだけの責任があるのだ。なにせ、欧米では「Ninja=スーパーマン」なのだから。

さて、今回のニンジャ1000である。見た目はちょっと大柄で丸っこい ZX-10R みたいだな、という印象。つり目2灯のフルカウル仕様で、シートも前後で段差のついたセパレートタイプだし、マフラーの造形も似ている。そんなこともあり、ぱっと見はベースになった Z1000 よりむしろスーパースポーツ ZX-10R に近い感じなのだ。それこそ、狙いどおりなのかもしれない。メーカーとしては新生ニンジャを「ツーリングも出来るスーパースポーツ」として位置付けているからだ。

カワサキ ニンジャ1000の画像

跨ってみるとシート高とステップ位置は高めで、それだけでスポーツモデルであることが分かる。ただ、ハンドルだけは幅広かつアップタイプのネイキッド的ポジションで、走り出すとこれが楽なのだ。エンジンは極低速から十分な粘りがあり、発進はとてもイージー。アイドリングだけで楽にスタート出来るほどだ。ハンドル切れ角も前傾モデルのスーパースポーツに比べるとかなり多めで、豊かな低速トルクと合わせてUターンなども安心してこなせる。普通に街中を流すのであれば、ほとんど何も気遣いがいらないバイクだ。

なんとなくキャラが分かってきたところで試しにスロットルを大きく開けてみると、聞き覚えのある直4サウンドに乗せて 228kg の車体は猛然と加速を始める。湿り気を帯びた独特の重低音…やはり直4はカワサキだな、と嬉しくなる瞬間だ。だいたい 7,000rpm 辺りからトルクバンドに入り、さらにスロットルを開け続けるとフロントが高々と宙に舞い上がる。「リッタークラスのトルク感じゃないな…」と思い、あらためてデータを見てみると排気量は 1,043cc! そうだ、ベースの Z1000 は昨年のフルチェンジで排気量がデカくなっていたんだっけ。ライバルと思わしき FZ1 フェーザーなどに比べて明らかにトルクの太さが際立つのはそのためかも。厳密に言うとクラス違いだったのだ。

ハンドリングも素直で軽快。ハンドリングを作り込まれたスーパースポーツなどは、モデルによってはバンキング中にグラッと倒れ込んだり、逆に「立ち」が強すぎるなど、操舵を意識しなければ曲がらないバイクもあるが、ニンジャ1000は極めてニュートラル。倒し込み初期からフルバンクに至るまで、何の抵抗もクセもなくスムーズに車体の傾きに応じて舵角が入ってくる。ベースになった Z1000 に似てはいるが、スマートな外観そのままに、エンジンとハンドリングもより穏やかな方向へリファインされていると感じた。ヒザまわりがスリムなのでステップワークしやすい点もいい。通常のエンジン横をメインフレームが通るツインスパータイプだと、股の広がり感だけでマシンの大きさというか、本能的に手強さを感じてしまうが、バックボーンタイプなので大柄に見えて実はコンパクトなのだ。

カワサキ ニンジャ1000の画像

サスペンションもストローク感たっぷりで、スロットル操作に応じて自然に車体姿勢を作ってくれるので気持ちよく曲がれる。ちなみに前後フルアジャスタブル装備だが、特にセッティング出しは必要なかった。

ブレーキも強力かつ幅広い速度域でコントローラブル。いろいろな意味で余裕があり、いつでも安心感に包まれて走れる感じがする。

ニンジャ1000の特徴的なフィーチャーである調整式スクリーンの効果は意外に大きく、コンパクトながら十分に防風効果を発揮してくれるものだった。特にスクリーンを立てた状態にすると 60km/h ぐらいから効いてきて、上半身に当たる風が和らぐのを感じる。高速巡航では両肩を除いて顔面から上体の広い部分をプロテクトしてくれるため、寒風にもだいぶ立ち向かうことが出来ると感じた。スクリーンの高さ調整も、手動ながらボタンひとつで簡単に操作出来るので実用性は高いと思う。

最初は名前負けしないか心配だったが、1日走ってみてそれは取り越し苦労であることが分かった。GPZ の再来ではないが、単なるフルカウル版ネイキッドではないし、もちろん ZX-10R とも違う。街乗りからスポーツツーリング、趣味のサーキット走行までワイドレンジでこなせる、懐の深いスポーツマインドが、ニンジャ1000の魅力だ。まさに万能型スポーツとしての新境地を切り開く「新時代のNinja」と言えよう。

カワサキ ニンジャ1000の詳細写真は次ページにて

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