【F.Bモンディアル PAGANI300 試乗記事】かつてWGPを席巻したイタリアの古豪が、フルカウルスポーツモデルをリリース

掲載日:2020年01月20日 試乗インプレ・レビュー    

取材協力/Chops
写真/海保 研(フォトスペースRS) 取材、文/淺倉 恵介

かつてWGPを席巻したイタリアの古豪が、フルカウルスポーツモデルをリリース の画像

F.B Mondial PAGANI300

エキゾチックなデザインが魅力的な、イタリアンメーカーのF.Bモンディアル。主力モデルであるネオクラシック系ネイキッドのHPS300/125に加え、新たにフルカウルスポーツのPAGANI 300/125が登場。待望の国内導入を果たした。F.Bモンディアルらしい、レトロフューチャー感溢れる、PAGANIの魅力に迫る。

F.Bモンディアル PAGANI300 特徴

セパレートハンドル化でスポーティなポジションを獲得
“走り”をイメージさせるフルカウルスポーツ

1948年創業と、歴史と伝統を誇るイタリアのF.Bモンディアル。2019年夏、フルカウルスポーツのPAGANI300と同125の2モデルが新たにラインナップに追加された。PAGANIは、先行してリリースされているHPS125/300をセパレートハンドル化&フルカウル化したモデルと考えてよく、車体の多くの部分を共有している。モデル名の後ろの数字は排気量を表し125はそのまま、300の排気量は249ccなのでカテゴリーとしては250ccクラスに該当する。

F.Bモンディアルは、1950年代WGPで数多くの勝利を手にし、世界チャンピオン獲得などレースの世界で実績を積み重ねてきたメーカー。フルカウルを装備するスポーツモデルのPAGANIは、メーカーのイメージとマッチする待望のマシンといえるだろう。スポーツモデルといえば、性能優先の味気のないデザインを想像しがちだが、そこはF.Bモンディアル。クラシカルなテイストと、現代的なデザインが見事なさじ加減で融合させている。設計とデザインはイタリアのF.Bモンディアルで行い、生産は中国のゾンシェン・アプリリアが担当。ゾンシェン・アプリリアは、アプリリアの小排気量モデルを生産する他、自社ブランドでバイクの製造・販売を行うメーカーだ。

今回は、現在のF.Bモンディアルのラインナップ中、最大排気量となるPAGANI300を、輸入バイクを数多く取り扱ってきたChopsの協力でテストライドする。

F.Bモンディアル PAGANI300 試乗インプレッション

軽快なハンドリングと回して楽しいエンジン
ワインディングに向かいたくなる!!

PAGANI300のハンドリングは、ニュートラルでクセがない。すごく軽快なのだけれど、適度な手応えが感じられる。これは、クイックなハンドリングが持ち味の、ベースマシンであるHPSとは違ったキャラクター。セパレートハンドル化によって、前輪荷重が大きくなったことが理由だろう。そのせいか、高速道路でフロントホイールがギャップを踏んだ時にフロントの突き上げ感を強く感じた。リヤホイールが同じギャップを通過する時には、あまり気にならなかったのでサスペンションの調整に鍵があるかもしれない。

フルカウルのウインドプロテクション性についてだが、スクリーンは低いもののライダーの前傾も強いので、高速道路などでは効果を体感できる。ダブルバブルチックなスクリーン形状も凝っている。なお、バックミラーの視認性はHPSに比べると大きく落ちている。

手応えのあるハンドリングではあるが、鈍重では決してない。コーナーではヒラヒラと向きを変えてくれる。これは面白い。けれど、上りと下りで感触が変わる。上りのコーナリングは実に爽快なのだけれど、下りとなるとフロントタイヤの存在感が頼りなくなる。要はリヤに荷重してトラクションがしっかりかかっていれば良いのだが、フロントに荷重した時に不安定さが顔を出すということ。常に"開け開け"でいけば問題ないともいえるのだが、それを万人に求めるのは酷だろう。マニアックな乗り味という言葉でごまかしたくはない。なにしろ、上りコーナーの楽しさは特筆ものだからだ。

また、どうしても褒められない部分もある。PAGANIは右側2本出しのアップタイプマフラーを採用している。これが、実にスタイリッシュで、F.Bモンディアルを象徴する意匠となっているのだが、エキゾーストパイプのヒートガードが右側に張り出し、右脚と干渉してしまう。だから、右コーナーでハングオンすると具合がよろしいが、左コーナーでは外足のホールドが今ひとつ。また、同じ理由で775mmという低めのシート高のワリに足つき性は良くない。スタイルを崩さず、ヒートガードの張り出しを抑えることは出来ないものだろうか?

右ステップを外側にオフセットする社外パーツは存在しているそうだし、そのパーツを使用すればホールド性は改善するかもしれない。だが、足つき性には変化はないハズ。軽量で取り回し性は良好なのだから足つき性さえ改善すれば、ビギナーや小柄なライダーにも無理なく扱えるはず。ちなみに化学繊維のライディングパンツがヒートガードに接触しても、溶けて穴が開くことはなかった。ヒートガードはしっかりとマージンをとって設計されているようだ。もっとも、そのせいで張り出しが大きいのだろうが……。

エンジンのトルク特性はフラットで、加速感は250ccシングルとしては一般的なレベル。パワーバンドは6,000回転から上、そのままレブリミッターの効く10,000回転までパワーがタレることなく盛り上がる。その領域ではレスポンスも向上する、高回転を使ってこそ真価を発揮するエンジンだ。だが、高回転型といっても、難しさは感じない。スロットル開閉によるトルク変動が小さくパーシャルが出しやすいので、パワーバンドを思う存分使い倒すことができるのだ。

面白いのが、低中回転域ではエンジンノイズが賑やかで振動もそれなりに出ているのが、6,000回転を境に振動が収束していくこと。パルスの間隔が短くなり、振動のツブも揃ってくるので、ほとんど気にならなくなる。6,000回転以下が使えないエンジンではないが、やはり高回転まで回してこそ楽しいエンジンだ。気になったのは、シフトが若干しぶくニュートラルが出しにくいところ。まだ走行距離が少ないため、ミッションにアタリが出ていないのかもしれない。これは、走り込んでみなければわからない部分。一応、追記しておくと、走行中にシフトが入りきらず、ギヤ抜けを起こしたりすることはなかった。

重箱の隅を突けば、他にも気になる部分が出てこなくはない。例えば、フロントブレーキの制動力を上げたい……etc。だが、そうした不満を吹き飛ばしてあまりある魅力がPAGANI300にはある。ワインディングでひとしきり走りを楽しんだ後、お気に入りのカフェに立ち寄り愛車を眺めながらコーヒーを飲む。PAGANIにはそうした風景が良く似合う。スポーツライディングは楽しみたい、でもスタイリッシュに走りたい。ならば、PAGANIこそ求めているマシンだろう。

F.Bモンディアル PAGANI300 詳細写真

エンジンは排気量249cc水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ。シリンダーボアは77mmでストロークは53.6mmだから、オーバースクエアの高回転型エンジン。吸気システムはインジェクション。

フロントフォークは倒立タイプで、フロントブレーキキャリパーは対抗4ピストンラジアルマウントタイプと豪華。

ブレーキディスクは前後共ペータル形状を採用。ブレーキホースはステンメッシュホースを標準装備している。

リヤブレーキマスターはマスターシリンダー一体型。細部にまでデザインへのこだわりが見て取れる形状が嬉しい。

プログレッシブ効果を狙ったか、リヤショックユニットはかなりレイダウンさせたマウント。リヤショックのプリロードは、ダブルナット式の無段階調整。

ナンバープレートホルダーは、スイングアームのエンド部からステーで支持する、最新デザインを取り入れている。

メーターは一眼式のフルLCD。車速、バーグラフ式タコメーター、水温、ガソリン残量、時計、ギヤポジションを常時表示。オドメーター、トリップメーター、デジタルタコメーターのいずれかを選択表示できる。

フューエルタンクの形状は、おそらくHPS系と共通。ネイキッドをベースにフルカウル化したモデルにも関わらず、これほどデザインに不自然さがないのはさすが。

シートが固め、かつ角を残した形状のため、足つき性は良くない。レーシングマシン的なシートで、ライダーの荷重移動はやりやすい。

シングルシート的なカバーを外せば二名乗車が可能だが、タンデムシートは小さく形状も後ろ下がりで居住性は良くない。テールランプはLED。

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