
トレンドなスタイリングと乗りやすさ、そしてパフォーマンスで、国内外から高評価を受けているスズキGSX-S1000/F。その魅力を引き出すどころか、むしろ「最初からコレありきだったのでは?」と思うほど似合っているのが、ヨシムラのSlip-On R-11サイクロン EXPORT SPEC政府認証(ヒートガード付属)だ。スタイリングの収まりの良さ、豊かな音質、性能が、高次元でバランスした、魅力あふれる逸品だ。
GSX-Sにベストマッチのスタイリングと重厚で品の良いエキゾーストノート
エキゾーストノート、スタイリング、パフォーマンスは、マフラーを交換する上での3大要素だ。わざわざSTDからアフターマーケット製にするのだから、これらのどれかひとつでも不満があったら、やっぱり交換は思いとどまるだろう。ただ、車両が最新モデルとなると、3大要素のレベルはグンと高くなる。なぜなら最新モデルは、STDでどの要素もかなり高いレベルで完成されているからだ。
それでもヨシムラ製だと、やっぱり交換してみたくなる。スズキGSX-S1000/F用Slip-On R-11 サイクロン EXPORT SPECの場合、まずスタイリングがいい。まるでこの車種専用でデザインされたかのような収まり方なのだ。サイレンサーはGSX-R1000用などで高い支持を受けているR-11で、これは元々スーパーバイク/JSB1000レーサー用としてスタートしたもの。これをGSX-S1000/F専用にスリップオンとした。
R-11は、装着するとSTDよりも少し長く、ボリュームも増しているのが分かる。これがイイ。マフラーのテーパーが車体デザインの線(流れや角度)に本当に良く合っているし、マフラー自体が程良く存在感を増している。もちろん最高のスタイリングになるよう、ヨシムラで角度や位置を検討してこのデザインに至っている。
また、STDのシルバーからブラックに換えられた専用ヒートガードは、程良い存在感でカスタム心をくすぐる。さらにそれだけではなく、車体下部の整流効果も高めていると言う。別売りのラエジエターコアガードも威張り過ぎず、イイ感じだ。
走り出すと、エキゾーストノートの心地良さにニヤリとさせられる。STDよりも重低音が効いていて、落着きと力強さを感じる。特に4,000~4,500rpm以上での音の良さは格別。STDだと、この中回転域以上では高音域主体の音になるのだが、R-11はそれよりも重厚感がある。個人的には“大人の音”だと思う。ヘルメットを被った耳にも、この音質はSTDとは明白な違いがある。まさに五感に心地良く響いてくるのだ。そしてアイドリングや低回転域ではジェントル。これなら住宅地でも気が引けることはない。
体感的に、力強さは全域で増しているように思う。顕著なのは7,000rpm以上で、レスポンスとパワーの盛り上がりは確実にSTDより上。ヨシムラで計測されたパワーカーブでは数PSアップ程度なのだが、音質の良さもあって感じるのはそれ以上なのだ。加速は気持ちが良いし、高速道路での一定速走行では落着きがあり、減速時もスムーズでギクシャク感は一切なし。
このように、このR-11は広い回転域でエンジンにマッチしているマフラーで、これはスラッシュカットされたエンドピースも効いているようだ。一般的に、マフラーエンドの形状は直角よりも斜めの方が、より広い回転域で脈動に合うとされているが、このR-11の出来栄えは、まさにそれだ。
チタンカバー/チタンブルーカバーで1.8kg、ステンレスカバー/メタルマジックカバーで2.0kgとSTDの2.3kgより軽量化されている。その効果は、ごく普通に走った街中のハンドリングでも、スポーツ的に左右へクイックな切り返しや、中高回転域で深いバンク角に持ち込む時などにも明らかに車体の反応が良いし、軽快感がある。パワー同様、数値では僅かな差なのだが、肝心の重心から遠い車体後部でのことなので、効果が大きいのだろう。もちろん、極力車体に近付けてマウントされていることも軽快感や一体感を生む要因で、スポーツライディング時のバンク角も十分確保されている。
本当にGSX-S1000/Fのオーナーならば一考の価値ありだし、非オーナーとっては、この車両に魅かれるきっかけにもなる(これなら欲しいと思わせるのだ)。手軽なスリップオンでここまで雰囲気も音も性能も変わる。これこそヨシムラマジックだ。
音質の良さと隙間の無い収まりは見事
装着時の収まりの良さは格別だ。無駄な隙間が無く、車体に極力近付けているのがよく分かる。じつは、アフターマーケット製だとこうした隙無く装着出来るマフラーは意外と少ない。エキゾーストノートは耳に心地好い重厚なもの。回転を上げていってもイヤな高音も無く、気持ち良くスロットルを開けていける。時として高回転高出力型エンジンでは、この高回転域の高音がライダーを威圧したりストレスになることがあって、そのせいで開けるのをためらってしまうこともあるが、これはそんなことはない。スロットルを開ける楽しさや快感に、乗り手を誘ってくれる音質だ。ストレート構造なので良質な音になるのだろう。本当はマイクで拾った音をスピーカーで聴くより実機の生の音はずっと良い。音量は近接排気騒音92dB/5,000rpmで、加速排気騒音80dB(いずれもヨシムラ計測)。政府認証なので車検もOKだ。
細部にこだわるからこの全体感が生まれる
素晴らしい仕上がりを見せるGSX-S1000/F用のR-11。車体に見事にマッチしたスタイリングは、さすがヨシムラだ。主役はマフラー本体なのだが、それを装着した時の全体感を構築しているのは、細部にまでこだわった仕事振りによるもの。溶接、リベット、取り付けスプリング、取り付けステーなどの脇役たちも、隙無しの仕上がりだからこそなのだ。そして最近のヨシムラマフラーは、開発においてとにかくスタイリングが重要要件になっている。「角度や細部のパーツまでカッコ良く」なのだ。アフターマーケット製(つまり後付け)の場合、なにかと制約が多くなるものだが、それを理由にしていたのではカッコ良くはならない。だから、製品を選ぶ際は細部までチェックして欲しい。そうすれば、そのアフターマーケットサプライヤーの姿勢や資質が分かる。また、スリップオンだからリーズナブルであることも大切。こうしたすべての要素を満たしたこのR-11サイクロンのような製品は、そんなに多くはないと思う。