
サブコン『BAZZAZ』(バザース)。これを使えばEFI(電子制御燃料噴射)のセッティングが愛車の仕様に合わせてカンタンに行える。マフラーやカムを換えたなんていう場合は、本当に便利で強い味方になる。PCを普通に操作すれば、手も汚れず、何度でもできる。ヨシムラから販売されるBAZZAZには、日本語の取扱い説明書も同梱されているので安心。これは、ちょっとオモシロイ大人のツールだ。
※本品はクローズドサーキット専用部品です。
そもそも“サブコン”って何?
『BAZZAZ』(バザース)はサブコン(サブコンピュータ)で、バイク本体のメインECUに割り込み、STDの燃料噴射マップを補正するもの。つまりエンジン回転数とスロットル開度などに合わせて燃料噴射量を設定してあるSTDマップに「ここは少し濃く」とか「薄く」という補正を加えられるのだ。キャブレターで言えばジェット交換やスクリュー調整のようなもの。これをPC上で行えるわけだ。
ところで、なぜ補正が必要なのか? というと、市販マフラーやカムはバイクのSTD状態に合わせて製作されているとはいえ、最良の性能を発揮させるには、やはり燃料調整を行ってみた方が良いからだ。さらにバイクは新車でも若干の個体差があって、まして少し乗り込んだ状態だと、その差はSTD状態とは明らかに異なる。だから、現状の愛車に合わせて燃料を調整した方が、より良くなるというわけだ。
さらに、コースレイアウトや天候によって走りは違ってくるから、異なるマップを用意しておけるのは、サブコンの大きなメリットだ。現場ではもちろん微調整して、そのときの最適マップを簡単に作成できる。
また、マップ切り替えスイッチを装備しておけば、走行中でも2通りのマップを使い分け可能になる。
STDは80点 補正マップは90~95点
STDマップは誰が乗っても不満がない。でも、排ガス・音量規制や、間違った使い方をしてもエンジンが壊れないように安全マージンを大きく取ってあるなど、部分的に大人の事情で本来の性能やフィーリングを落としているのも事実。さらに個体差もある。したがってSTDマップが最良の場合もあれば、そうでない場合もある。そこを補正してやるのだ。
大雑把に言えば補正後とSTDの差は、点数で言えば万人向けのSTDが80点で、補正後は90~95点といった所だろうか。もちろん、どちらも悪くはない。
実際に使ってみると…意外にカンタン!!
BAZZAZの使い方はとてもカンタンだ。PCとUSBケーブルで接続して、BAZZAZのソフトを立ち上げればエクセルのようなマップが出てくる。このマス目に補正したい数値を入れればいいだけだ。オンロードモデル用にはSTD仕様の『Z Fi』と、トラクションコントロールなども設定できる『Z Fi TC』があるが、後者の方が何かと便利で、楽しみの幅が広い。
と言っても、よほど経験のある人でないと、実走してどこをどうイジればいいのか、わからないだろう。そこで便利なのが、走行データ(シャーシダイナモ上のデータでもいい)を記録し、狙う空燃比(空気と燃料の重量比。AFR:エアフューエルレシオ)に対しての補正値を教えてくれるのが、オプションの『Z AFM』だ。このセルフマッピング機能を使えば、走ってデータを収集し、それをマップに反映させればいいだけ。これを繰り返していけば、自分仕様のマップが出来上がるのだ。
Z Fi TC のセット内容は、本体、専用ハーネス、オートシフター(高感度ひずみゲージ、アンプなど)、PC接続用USBケーブルなど。これがあればフューエルマップ補正、トラクションコントロール、クイックシフトの使用が可能になる。
取り付け作業は、大雑把に言えばイグニッションコイル、クランク角度センサー、インジェクターなどに専用ハーネスを繋ぎ、BAZZAZをECUとの間に割り込ませるだけ。コネクターをパチパチ繋いでいくだけなので難しくはない。その他にはテールライトに延びる+コードから電源を取るぐらいだ。ただ、タンクを上げ、エアクリーナーボックスを外し、増えたハーネスをキレイにまとめなければいけないなど手間はかかる。整備に自信がなければプロに頼んだ方がラクである。
補正マップを作るのはけっこうオモシロイ!!
Z-AFMを使った実走サンプリングは意外にカンタンだ。レーシングマシンで使うデータロガーと基本的には同じ。そしてデータをマップに反映するだけで補正マップが作れる。これを繰り返していけばマップの精度が上がる。つまり、愛車と自分に合った補正マップが出来上がるのだ。
作業はキャブレターのように工具もいらず、手を汚すこともない。走ってPCにUSBケーブルで接続して呼び出すだけ。マップは何枚も保存できる。気に入らなければ元に戻せばいい。季節や走り方が変われば、新しいマップを作ればいい。可能性は無限大だ。補正はメインマップの他に、例えば「1、2速は+1(濃いめ)に」という具合に、各ギアでも±できる。
セルフマッピングで現行マップに走行データを移す前に、念のために現行マップを保存しておく(事前にマップ専用のフォルダーを作成しておく)。そして走行データを現行マップに移して生かす(APPLY ALLスイッチを使う)。これで新しいマップが完成する。(これも名前を付けて保存)。マップはいくつでも保存できるので、必ず保存してくこと。
本当は走行前にシャーシダイナモに載せて、パワー計測しながらセルフマッピングして基準マップを作成すると話が早い。実走ではなかなか取りにくい高回転高開度域までサンプリングできるからだ。そして実走データを重ねていけば全域で補正値を得られる。ただし、シャーシダイナモは実走とは違うので、シャーシダイナモのデータそのままでは不十分。
トラコンも自分仕様にセッティング
Z Fi TCはトラクションコントロール(トラコン:TC)の設定も可能。設定は感知レベルとカットレベル度の2つ。感知レベルはタイヤが空転してからの効きの時間(早く・遅く)のレベルで、カットレベルは点火カットのレベル。
知っての通り、トラコンは滑ると失火させてトラクションを回復させる機能だ。レベルはいずれも0(トラコンなし)と1~10。感度はPC上と手元スイッチの両方で調整できる。また、スロットル開度、エンジン回転数に加え、各ギアでも調整可能だ。
※手元スイッチはオプションパーツとして販売
クイックシフターは街乗りでも便利
クラッチ操作なしでシフトアップが可能になるクイックシフター。レースでは必須の装備で、最近はSTDでも装備されている車両もある。BAZZAZでは感知レベル、点火カット時間、各ギアチェンジでの調整が可能だ(Z Fi TCまたはZ Fi+QS4USB)。最新のシフタースイッチはストロークスイッチではなく、レーシングマシンと同様の高感度ひずみゲージを採用しているので、シフトフィーリングがとてもダイレクトで、タイムラグがない。
ここが使いこなしのポイント
正直言って「BAZZAZはハマる!!」。ちょっとレーシングライダー兼電子制御担当エンジニアになった気分になる。EFIも使いこなす時代。自分仕様をカンタンにセッティングできるし「もっと良くならないのかな?」という追求心も旺盛になる。で、使いこなすポイントをいくつか。約4年間使ってみての個人的感想なので参考になれば…。
Z Fi(税抜価格4万6,100円~)
フューエルマップ補正が可能なベーシックなサブコンで、各ギアでの調整も可能。操作はPC上(USB接続)。停止時・シャーシダイナモ上ではリアルタイム表示(空燃比など)も可能。手元スイッチを追加すれば車上で2枚のマップを切り替えられる。
Z Fi TC(税抜価格11万円~)
フューエルマップ補正に加え、トラクションコントロールの調整(別途手元スイッチがあればさらに10段階調可能)ができるサブコン。オートシフターもセット。PC上で失火時間調整も可能。Z Fiとともに対応機種は大型国産・外車を中心に豊富。
Z Fi MX(税抜価格3万7,600円)
モトクロス用だがBMW F800GS (2008-2013年式)やKTM990アドベンチャー(2007-2013年式)、990スーパーデューク(2006-2012年式)など人気のアドベンチャーモデルにも対応するから嬉しい。機能はZ Fiに準ずる。
Z AFM(税抜価格4万円)
走行中の空燃比を測定して記録し、そのデータをマップに生かすことが可能なセルフマッピングアクセサリー。フューエルマップ製作には非常に便利(超お薦め)。Z Fi、Z Fi TC、Z Fi MXに対応。A/Fセンサー取り付けはヨシムラや販売店などに相談を。
QS4 USB(税抜価格5万1,400円)
オートシフター機能を楽しむためのキットで、Z Fiにも追加が可能。高感度ひずみゲージ(シフトスイッチ)、感度レベル調整用アンプ、ハーネスなどが付属。