
取材協力/闇矢屋 取材・撮影・文/木村圭吾 構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
掲載日/2012年11月26日
国産ビッグバイクの先駆け的な存在が、ホンダ・ドリーム CB750 フォア(以下 CB750K )だ。大阪万博の前年である1969年にリリースされ、市販量産車初となる並列4気筒エンジンをパワートレインとして用い、フレームはホンダ初のダブルクレードル、そしてフロントブレーキには2輪車初となる油圧式ディスクブレーキと、高速時代に相応しい装備を持っていたのだ。それは性能的にも当時のトップクラスであり、国内のみならず、海外においても高い評価を得ることにも成功した、世界戦略車でもあった。その専門ショップが、愛知県名古屋市に店舗を構える『闇矢屋』(やみや)だ。なんともアヤシゲな屋号だが、それは創業当時、日暮れ頃からオープンして深夜まで営業していたことが由来となっている。現在は業務拡張により昼間からの営業となったが、慣れ親しまれているため店名はそのままになっているのだ。
闇矢屋の事業としては2本の柱がある。ひとつは車両の販売だ。店舗内のショースペースに並べられている車両は、いましがた工場からラインオフしてきたような輝きを放っている。バイクに詳しくない人が見たら「新車?」と思ってしまうほどの状態だと言っても、決して過言では無い。
「CB750Kシリーズの魅力は、4本マフラーの作り出すスタイルと、それが奏でるサウンドですね」とは闇矢屋代表の大江勝哉さん。言うまでもなく、自らが CB750K シリーズの大ファンであり、その思い入れがショップオープンにも繋がっている。そしてさらに「今でも乗って楽しめるバイクであることです。キチンと整備してあれば、ツーリング先などで壊れることはありません!」と言う。
闇矢屋での販売車両は、前述の通り外観的な綺麗さはもちろんのこと、見えなくなってしまう部分、たとえばタンク下のフレーム周り、あるいはエンジン内部などにも抜かりなく手が入れられている。それはベースとなっている車両が、いずれも生産から40年ほどの時間が経っているため、徹底的なレストアが必須事項となるためだ。パーツの1つひとつをチェックして可否が判断された上で組み立てられているのである。だから扱っている車両には絶対的な自信があり、これまで購入したユーザーからの満足度も高く、極上絶版車とも言えるクオリティの高さを持っている。
闇矢屋のもうひとつの柱が、パーツの販売だ。最終型の CB750K7 型でも 30 年以上、初期モデルならば 40 年以上経っており、既にメーカーで欠品となってしまった物も少なくない。そこでいちファンとして、多くのユーザーに乗り続けてもらいたいとの思いから、さまざまなパーツを復刻し、ニーズに応えている。外装セットやマフラーからボルト類まで、扱っているアイテム数は実に 1,000 点以上! 旧いバイクにつきまといがちなパーツの問題は、闇矢屋によって CB750K に限っては問題無いと言えるだろう。ユーザーにとって、極めて心強い存在のショップなのだ。
じつは CB750K の専門ショップとして、闇矢屋は日本国内はもとより、海外においても知られた存在となっている。当時はアメリカやヨーロッパを中心に盛んに輸出されていたため、現在でも国境を越えて多くのファンが存在し、闇矢屋のようなショップが必要とされているのだ。そして2012年10月には、遙々北欧はフィンランドから、ビンテージモーターサイクル協会のメンバー25人が来店。“本場” の専門ショップとして、そのスタンスや品揃えに目を見張ったとのことだ。
大モノから小モノまで、CB750Kシリーズに関する1,000点以上のアイテムを取り扱っている闇矢屋。それらは整然と管理されており、受注から発送までがスピーディーに行われている。
専門ショップとして取り扱っている車両の良さには自信アリ!タンクを載せてしまえば見えなくなってしまう部分にも抜かりはない。また必要に応じてハーネスも引き直される。
同じく組んでしまえば見えなくなってしまうエンジン内部にも惜しみなく手が掛けられている。そのあたりがキチンとやってあれば、不安無く走れるのがCB750Kシリーズの魅力のひとつだ。
CB750K は1969年にリリースされ(初期型は「K0(ケイゼロ)」と呼ばれている)、その後、基本構成は大きく変えずに改良を加えながらも1978年まで生産が続けられたバイクである。改良を受けたバージョンはK1(ケイワン)、K2(ケイツー)…と呼ばれており、K7まで存在している(K3、K5は輸出仕様)。ここでは国内仕様に的を絞って、おおよその違いを見てみよう。
初代モデルの『K0』は、大きく分けて2つのタイプがあり、初期はクランクケースが砂型で鋳造されており、後に生産量の増加に伴って金型に変更(こちらの方が鋳肌がなめらか)された経緯がある。マニア的に珍重されているのは砂型の方だが、現在ではまず出物が無く、あっても相当に高価。画像は取材時の闇矢屋の金型ストック車両(240万円)。
国内外で高評を得たK0だったが、何かと“荒削り”の部分も多々あり、市場からの声をフィードバックして改良を加えられたモデルが『K1』だ。以降もフレームなどは不変のため、外装パーツを他の年代に変更することも可能。こちらも取材時の闇矢屋ストック車両(190万円)。
K1の完成度をさらに高めた『K2』は、エンジンは前期モデルがK1と同様、後期モデルからはヘッドが小さくなっている。スピード/タコメーター前に各種警告灯を収めたボックスが追加されたり、テールランプの大型化、足着き性の向上を図ったシート形状など、K1との違いは結構多い。またマフラーの内部構造の変更によって騒音の低減も図られている。
外観での大きな変更点としては、タンクのグラフィックが挙げられる。このカラーリングは近年注目されてきており、その鮮やかさから密かな人気となっている。安全性の強化も図られ、例えばニュートラル以外ではエンジンの始動ができないようになっている。そのため電装系は大幅に変更されている。尚、1976年にはK6が発売されているが、台数は少ない。
カタログ上では最高出力と最大トルクが若干ダウンされ、外観上ではタンクやシートの形状が大きく変更された。さらにリアブレーキのディスク化やマフラーのプロテクターが無くなるなど、見た目のイメージはだいぶ異なる。1978年12月には4バルブDOHCエンジンを搭載したCB750Kが登場し、K0から続いたOHCエンジンの幕が閉じられた。
K0 無番エキゾーストマフラー後期型太芯タイプ
K0 復刻シートASSY(赤スポンジ)スタンダード
K0 外装5点セットキャンディルビーレッド
K1 外装4点セットキャンディブルーグリーン
K0、K1 スターターライティングキルスイッチ
K0 一本引きスターターライティング黒キルスイッチ
K0、K1 ウインカーホーンスイッチASSY
K0~K6/F1 キャブレターリペアキット
K0~K2 ワイヤーハーネス
レギュレーターレクチファイヤーステー付き
K0~K2 フロントフォークパイプセット
K3~K6 フロントフォークパイプセット/p>
K0 フロントフォークカバーセット(各種塗装有)
K0 初期2点留めエアークリーナーケースABS樹脂製(各種塗装有)
K0 フューエルタンクエンブレムセット