「諦めていた憧れのバイク」を「乗りやすい自分のパートナー」には
取材協力/ワークス・スポーツ・レーシング  取材・文/motortoon  撮影/若林 浩志
構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
掲載日/2014年7月2日

FEATURE

乗りたいバイク、憧れのバイクがあるにも関わらず、体格などの理由から諦めてしまったというシチュエーションは、それほど珍しいものではないのかもしれない。特に女性ライダーであれば、せっかく大型二輪免許を取得したにも関わらず、ハーレーやビッグバイクになかなか手を出しづらいというケースもあるだろう。

 

大阪の『ワークス・スポーツ・レーシング』では、憧れを諦めずに、乗りたいバイクを楽しんで欲しいという想いで、その人に合わせた入念なセッティングや、豊富な経験と技術力により無理なく大型バイクを楽しめるよう仕上げている。いわゆる高性能パーツによるパワーアップやドレスアップカスタムなどではなく、“オーダーメイド”感覚で、オーナーにとってもっとも乗りやすい、一生持ち続けることのできる1台を仕上げてくれる。そんなワークス・スポーツ・レーシングの哲学と、実際の女性ライダーの声を紹介しよう。

 

 

その人が乗りたいバイクに
楽しく乗れるようにするのが仕事

“女性でもビッグバイクを楽しめるように”と、多数のバイクを手がけてきたワークス・スポーツ・レーシングの森田社長。いわゆる旧車や絶版車など、男性的なスタイルを長年手掛けてきたからこそ、女性ライダーにももっとバイクを楽しんで欲しいというこだわりを持っている。

 

「まず、バイクというものに対してもっともっと女性にも進出して欲しいと考えています。うちはそのためのサポートを行っているという感じですね。例えば身長160センチ以下だけれどもナナハンに乗りたい、ハーレーに乗りたい、といった方のために、なんとか夢を実現させてあげたい。うちでは、よほど極端に大きなバイクを除いて、世の中のほぼ9割のバイクに対して、楽しんで乗れるよう仕上げることが出来ます。もちろん女性だけじゃなく、年配の方やリターンライダーの方に対しても、安全に楽しく、一生乗り続ける事の出来るバイクを作り上げていくようにしています」

 

 

性能だけじゃなく自分だけに馴染む
一生モノのバイク作りを

同店の女性のお客さんのなかから、カワサキ ゼファー750に乗る藤岡さん、ハーレーダビッドソン FXDLとゼファーを持つ馬場さんにご登場いただき、自分自身に合わせた乗りやすいバイク作り、そしてバイクへの想いをうかがってみた。

 

藤岡さん「19歳の頃にバンディットに乗っていたんですが、そこからだいぶブランクがありまして、ワークス・スポーツ・レーシングさんでホンダ マグナ250、それから今のゼファー750に乗るようになりました。乗る人自身のことを一番に考えてくれて、なんと言うか、バイクを乗り手に合わせてくれますね。ナナハンですが、おかげで乗りやすくて楽しいバイクです。女性ライダーだと、家族のことや経済面とか色々あるとは思うのですが、私の場合は一個人として、後悔せずに楽しみたいという想いで乗っています。もちろん一生乗っていきたいですね」

 

馬場さん「10代の頃からビッグバイクに憧れてたんですよ。それで、中型バイクを経てスポーツスター1200を購入したんですが、あんまり乗りやすくなくて。不安定だったんですよね。もともとダイナに乗りたかったんですけど、大き過ぎるからとスポーツスターにしたんですが…。そんなときワークスさんでダイナを見かけて、やっぱり乗りたい!と。しっかりと自分に合わせてもらったおかげで、足つきも良いですし、ステップも出しやすい。スポーツスターで感じた不安定さもなくて、すごく乗りやすいです。おかげでものすごく充実していて、楽しいですね。特にワークス・スポーツ・レーシングさんでは、不安な点もしっかりと、納得いくまで説明してくれるので、自信をもってお任せできるのが嬉しいですね」

 

森田社長「バイクっていうのは遊びのもの。だからこそ、楽しく安全に乗って欲しいんですよね。それこそ一生乗り続けることが出来るようにしていこうと思っています。そのための手法ですが、みんな“カスタム”っていう言葉をよく使われますけど、それは日本の造語であって、うちでは“トータルバランスをチューニングしていく”という考え方です。1人ひとりの体格などを考え、乗車バランスや車重とか、その人のためだけのコンプリートマシンを仕上げていく感じですね。速く走るためじゃなく、長く乗るため。女性の場合は特に、本物志向で自分自身でちゃんとモノを選ぶんですよ。したがって他人と同じモノを作っていたら駄目。そこがプレッシャーでもあり、やりがいを感じる部分でもあります。バイクを通じて、感性が豊かに、人生が楽しくなるお手伝いをできたら嬉しいですね」

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06-6904-5671

ワークス・スポーツ・レーシング社長 森田 尋(じん)氏

 

藤岡江里子さん

愛車はファイヤローズをテーマに作り上げられたゼファー750。教習所のCBよりも乗りやすいと語る通り、ワインディンやツーリングでも、750の車格を感じさせない乗りこなしを見せる。今後はブレーキの強化を検討中とのこと。

馬場かおりさん

身長155cmという小柄でありながら、ゼファー750やFXDローライダーをはじめ、何台ものバイクを乗りこなしている。特にワークス・スポーツ・レーシングで仕上げられたFXDは、以前乗っていたスポーツスターよりも乗りやすいという。

ハンドル、シート、ステップの三点バランスをオーナーの体格にあわせてセッティングすることで、大柄なダイナを乗りやすく仕上げている。大げさにコンパクトにするのではなく、オリジナルのシルエットを大事にもしているのだ。

サイドスタンドが出しにくいという不満を解消するために、エンド部分にワンオフのエクステンションを装着。これにより、大がかりな変更をすることなく、普段の使い勝手を大きく向上させているのだ。

長い経験や実績から、さまざまな歴史的車両の貴重な資料も蓄積されている。ロータリーを搭載したスズキ RE5のサービスマニュアルや、伝説の名車カワサキ KZ1000S1のパーツリストなども。

ギラギラと輝くZ1エンジンは、同店で「究極の磨き」と呼ぶ徹底したポリッシュ加工とダイヤモンドカット加工によって仕上げられたもの。あえてメッキを使わないことで、より一層の輝きを実現しているのだという。

PICK UP PRODUCTS

十人十色の女性の要望に応え
各自のこだわりを実現した車両達

モンキーからGLまで、ありとあらゆる車両を手がけるワークス・スポーツ・レーシング。丁寧に仕上げられた当時の空気を伝える旧車や、見たことのないような斬新なカスタムモデルまで、枚挙にいとまが無い。ここでは上記でお話をうかがったお2人の愛車を中心に、ワークス・スポーツ・レーシングが女性ライダーのために手掛けた車両を紹介していこう。これらはごく一部であり、他にもさまざまな女性ライダー向けに仕上げられた、特別な車両が存在するのだ。

 

一見するとノーマルのダイナにしか見えないが、オーナーである馬場さんの体格に合わせ、各部を無理なくセッティングしていくことで、楽しく走らせることが出来るように作り上げられている。

リアのサスペンションには、ガッツクロームのローダウンサスを使うことで、サスペンションの動きを阻害することのないよう、無理なく車高を下げている。

シートは体格に合わせて形状を変更し、さらに表皮も上品な仕上げに変更されている。特にシート形状は、小柄な人にとっては大きな要素であり、ただアンコを抜くだけでなくサイド部分の張り出しをおさえるなど工夫があるという。

フットコントロールはショートペダルにすることで使い勝手を向上させている。シンプルな形状をチョイスしながらも、さりげないフレアパターンの刻印がポイント。

そのままでは出しづらいサイドスタンドを、ワンオフのエクステンションを作ることで不安なく使えるものに。こうした部分の不安定さは立ちゴケにもつながるため、さりげない重要ポイント。

藤岡さんの愛車であるゼファー750。フロントサスペンションにオーリンズのスプリングを採用するなど、見えない部分まで丁寧に仕上げられている。一生乗れるバイクということで、細かい部分まで高品質に仕上げられているのだ。

フロント同様、リアサスペンションにもオーリンズをチョイス。週1でスポーティな走りも楽しむ、というスタイルに合わせて固めのセッティング。今後はブレーキやスイングアームもモディファイしていくという。

ファイヤローズをテーマにペイントされたタンク。ゼファーらしく火の玉カラーを基調にしながらも、ベース部分のペイントにこだわることで、大人の女性らしさを演出している。

テールカウルもタンク同様、多層的で凝ったカスタムペイントが施される。クリア層の厚みなど、高品質な仕上がりが見て取れる。

10サイドカバーはZ2を彷彿とさせるスタイルに変更。また、サイドカバー下部にはガゼットが入れられるなど、20カ所以上の補強がフレーム全体に施されている。

11タイガーカラーのゼファー750は、ダイナのオーナーである馬場さんが所有するもう1台のビッグバイク。ノーマルのシルエットを残したダイナとは違い、こちらは徹底的に走りのモディファイが施されている。

12ゲイルスピードのアルミホイールにカーボンフェンダーを組み合わせ、バネ下重量の軽減にも力を入れている。オーナーが小柄ということもあり、こうした部分の影響は小さくないだろう。

13ポイントカバーには、ワークス・スポーツ・レーーシング・オリジナルの削り出しカバーを装着。ビレットの輝きが車体のアクセントになっており、エンジンまわりの印象を引き締めている。

14シートは、削り過ぎず、かつ乗りやすいよう程良いバランスでアンコ抜きが施されている。ゼファーらしいスタイルを維持する上で、シート加工は必須と言えるだろう。

15リアサスペンションには『YSS』をチョイス。あえてダンパーレスにすることで、当時の雰囲気を感じさせる、すっきりとしたシルエットと高性能を両立させている。

16当時モノの稀少なパーツをふんだんに使用した、まさにタイムスリップしてきたようなホンダ 400FOUR。コンディションも素晴らしく、どこに出しても恥ずかしくない1台だ。なんと、この車両のオーナーも女性だという。

17当時のリアルな改造車というイメージで、エキゾーストにはヨシムラの手曲げ集合マフラーをチョイス。また、エンジン各部も徹底的に磨き上げられ、新車のような美しい仕上がりとなっている。

18リアショックには当時モノの『KONI(コニ)』を採用。タイヤハウスやフレームまで美しく作り上げられ、およそ40年近く前の車両とは思えないコンディション。オーナーの思い入れ、そしてショップの高い技術力がうかがえる。

19キャブレターはCRにネット付きのファンネルを組み合わせている。セッティングにはノウハウが求められるが、そうした部分はワークス・スポーツ・レーシングの得意分野と言える。

20ヘッドに使われるキャップボルトは、ステンレス製ではなくチタン製の逸品。チタンボルトは各所に使用されており、軽量化にも貢献している。

SHOP INFORMATION

WORKS SPORTS RACING

住所/大阪府門真市月出町7-17
電話/06-6904-5671
営業/11:00-20:00
定休/月曜

大阪府門真市にて、25年以上に渡って旧車はもとより、ありとあらゆるバイクを手掛けてきたワークス・スポーツ・レーシング。そこで蓄積されたノウハウにより、ユーザーからは絶対的な信頼を得ている。ブログfacebook についても積極的に取り組んでいるので、ぜひチェックして欲しい。