
気密性の高いフルフェイスヘルメットにとって、どうしても避けて通れない問題が、バイザーの曇りによる視界不良だろう。シールドを少し開けることで回復することもあるが、それではせっかくの気密性能、静音性能も無駄になってしまう。ヘルメットに取り付ける曇り止め対策製品が販売される中、金沢の新進メーカーであるウインズジャパンによって開発された『フォグウィン』は、これまでのアイテムのデメリットを入念に検討した上で、ライダーにとっての快適性を追求した新しいアプローチによる防曇製アイテムだ。同社のヘルメットに付属するフォグウィン。その性能への追求と、ヘルメットメーカーとしてのこだわりを紹介していきたい。
ユーザーの使い勝手を第一に考え
圧倒的な防曇性能と使いやすさを実現
フォグウィンのベース素材は、表面素材とコーティングにより最高級の防曇性能をもつもの。これを生かすために、独自の粘着材、ホールドテープ、さらにサイドに設けられた吸着盤によって高い気密性を保つことで、ダブルレンズ効果を発揮。雨だけでなく、雪や高温&多湿など、考え得るあらゆる過酷なシーンで快適な視界を確保してくれるのだ。一見するとシンプルな作りにも見えるが、素材の性能に加えてそれらを完全に発揮させるための形状、シールドへの吸着方法、さらにサイドに設けられた吸着盤によって高い気密性を保つことで、ダブルレンズ効果を発揮。高性能なアンチフォグアイテムとして成立させているのだ。また、いくら防曇性能が高くとも、視界の邪魔になってしまっては本末転倒ということで、シールドのギリギリまで有効視界を大きくとっている。これは自社専用品であり、ヘルメットごとに専用設計されたフォグウィンならでは。シールドから外しての再装着も容易で、それゆえに汚れや寒暖差による変化などにも対応。フォグウィンを必要としない場合は、サイドの吸盤部分も含めてすべて取り外すことが可能だ。
企画力、コンセプト
そして独創的なアイディアで勝負
代表取締役
片岡 匡史さん
「僕自身もレース活動をしてきたライダーなので、自社のヘルメットについても、静かにしたいとか、気密性を上げたいという欲求があったんです。一例をあげると、うちのほとんどの製品にチンカーテンを付けたりとか。ただ、そういうことを突き詰めていくと、どうしても曇るんですよね。雨の日や寒い日なんかは、シールドを閉めたいけれど、そうすると曇ってしまう。もちろん、既存の曇り止め製品も存在しますが、価格帯や弱点のような部分もあるわけです。ですので、『自社で開発しよう』と。最終的には開発メンバーと試行錯誤をしてフォグウィンを作り上げました。
フォグウィンだけでなく、ううちの企業理念として、『よりよいものを』ということがあるんですが、ただ単に安いだけではなく、価格に対してそれ以上の付加価値があるものを意識しています。例えば、カーボンヘルメットの A-FORCE は、価格を抑えながらも約 1,250g と、トップクラスの軽量さを実現し、MFJ に認定されています。また、新発売の FF-COMFORT に関しても、DAC(ダブルアクションクロージング=シールドを閉じるときに気密性を高くするシステム)を採用していますが、これも同クラスのヘルメットでは初めての採用だと思います。
日本には世界に誇る二大ヘルメットメーカーをはじめ、有名ブランドがいくつもあります。我々もヘルメットを中心とした総合メーカーとして、企画力、コンセプト、そしてうちならではの独創的なアイディアを武器に、追いかける立場として頑張っていきたいと思っています」
技術部長
石川 哲治さん
「フォグウィンの開発についてですが、僕たちのやっていることというのは、素材をいかにヘルメットのシールドに貼り付けるかというところにノウハウがあるんです。シールドは三次元なんだけど、それにこの平面の製品をいかに密着させ、高い気密性を保てるかっていうことですね。
一番の特長は、粘着材を使っていること。こうしたものに使われている両面テープというのは、普通は断面が四角いんですよ。それをシールドのような 3D のものに貼るとカドしか付かない。それに対して、うちのものは粘着材なので、断面が半円状なんですよね。それによって接着面積がより大きく取れるわけです。
また、粘着材の吐出量などにもノウハウがあり、例えばフチに余白があるとフォグウィンの端がシールドに当たってしまう。だから、ここをギリギリまで持ってくることで、密着性、そして視界にも好影響を出すんです。ヘルメットごとに専用設計を行うと、そうした部分に対して徹底した追い込みもできるわけです。製品化するまでは本当に試行錯誤の連続でした。自分が役員で、勤務時間の縛りがないことによって製品として完成させられたという側面もありますね。完成までは何日も泊まり込みましたよ(笑)」
システムヘルメットから MFJ 対応のレーシングヘルメットまで
あらゆるライディングシーンに対応する充実のラインナップ
ウインズのラインナップは、ハイエンドモデルであるレーシングヘルメット『A-FORCE』、最新のインナーバイザーフルフェイス『FF-COMFORT』、システムヘルメットである『MODIFY』および『MODIFY ADVANCE』、そして『MODIFY JET』。ジェットタイプの MODIFY JET を除いたすべてのアイテムにフォグウィンが標準で付属する。また、各シリーズに専用の内装パーツがリリースされているので、リペア面での安心感はもちろん、好みのサイズのインナーを購入することで、頭部形状に合わせたフィッティングの追求を行うことも可能だ。
ボタンひとつでフェイスガードを跳ね上げることができるシステムヘルメット。オプションのジェットベースキットおよびシールドを購入することで、ジェットヘルにすることも可能だ。
MODIFY 同様のシステムヘルメットだが、こちらはジェット並みの視界の広さと、チンガードを脱着できることが特長。チンガードを外すことで、ジェットヘルとしても楽しめる。
インナーバイザーをはじめ、DAC、メガネの着用も考慮された三次元デザインインナーなどを搭載した最新モデル。空力とすっきりとしたシルエットを実現したエアロ構造も魅力だ。
圧倒的な軽さを誇るカーボンヘルメット。カーボンや、高い強度&弾性のケブラーとグラスファイバーの6層ハイブリッド。MFJ の認定も受けている。グラフィックモデルも追加された。
ヘルメットおよび関連アイテムを提供する総合メーカー。グループ内にバイク販売店を持つことで、ユーザーからの素早いフィードバックを実現。その開発力と意欲的なアイディアで、ユーザーにとってよりよいものを開発し続けている。また、コンチネンタルタイヤなど海外の優れたアイテムを導入&商品展開し、今後もさらなる展開が期待される新興メーカーだ。
住所/石川県金沢市横川3-20
Tel/076-259-6560