オリジナルを気軽に、手軽に。ラッピングでカスタマイズを楽しむ。
取材協力/Smile-Canvas  取材・撮影・文/木村 圭吾  構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
掲載日/2015年1月21日
塗るのではなく“貼る”ことで外装のイメージを変化させるのがラッピングだ。出力したシートを用いることで、ペイントと比較して施工時間は大幅に短くなり、キャラクターの再現も得意分野だ。各方面からの需要の高まりで素材となるラッピングフィルムは著しい進化を続けており、バイクのカスタムパーツとしても優れた適正を持っているのだ。

INTERVIEW

手軽に簡単にヘルメットを彩る
ラッピングフィルムのキット化

広告やイベントなどの告知やプロモーションなどの目的で、電車やバスといった公共交通機関の外装に施されて目にする機会が大幅に増えたのがラッピングという手法である。日本語にすれば「包装」となり、ショップなどで「プレゼント用にラッピングしてください」などと日常的に使っている語句と同意義だ。バイクやクルマの個人ユーザーでも普及は進んでおり、中でも「痛車」が広まったのも、ラッピングが存在したからともいえる。外装のイメージを、さまざまに変えることが可能な手段なのだ。

 

同様の効果を得られる方法の筆頭としては、従来からあるペイントが思い浮かぶだろう。パターンは同じでも純正とは色の組み合わせを変えたり、あるいは完全なオリジナルなカラーリングにすれば、イメージを大きく変えることが可能だ。だが、そうするためには、それなりにコストと時間が掛かる。下図を作って、塗料を吹いて、乾燥させて研いで…ということが完成までに繰り返され、それがコストと時間が掛かる大きな要因ともなっている。DIYでとしても、塗装面にホコリや虫が付着しないためのスペース作りが必要であるし、溶剤から発生する臭気への対策も欠かすことができない。また一旦塗ってしまえば、変更は容易ではなく、改めて下地作りからとなってしまうなど、得られる効果も高いがハードルも高い側面を持っているのだ。

 

スマイルキャンパス代表の峯 健吾さん。専門学校在学中に漫画家としてデビューするも「バイクのレースが優先」として、イラストレーターに。現在はバイク、クルマのラッピングのスペシャリストのデザイナーとしても腕を奮っている。

ヘルメット用として企画・開発されたのラッピングフィルム。そのパターンは何種類か用意されており、また貼る場所も決められていないため、同じ物を用いてもオリジナリティを活かせるのも特色だ。

それに対して、さまざまなメリットを有しているのがラッピングだ。使われる素材は、裏側が粘着となっているシート、ラッピングフィルムだ。ステッカーなどと同様に裏紙を剥がして「貼る」から、下地作りは必要がく、乾燥や研ぎといった工程もないために、施工時間が短い。ラッピングフィルムは剥がすことが容易なため、カラーリングの変更も得意分野だ。施工されているレーシングマシンでは、レースごとに異なるラッピングフィルムを用意して、それぞれのスポンサーに対応したりとか、午前のフリー走行等で転倒しカウルが傷付いてもピットで剥がして新たに貼り直せば、午後からの決勝では見た目には元通り、予備外装の出番が無いほどなのである。

 

ラッピングフィルム自体の進化も著しく、平面であればド素人でも貼るのに失敗するのが難しいほどだ。携帯電話の画面保護フィルムを貼る方が遙かに難しいぐらいの印象だ。裏の糊面に細かな溝があり、中に空気が溜まらない仕組みになっているのである。試しに15cm四方ぐらいの大きさのフィルムを一気に裏紙を剥がして机の上に置き、適当に指で擦っても空気が入って膨らむということは全くなかったほどだった。

 

気軽に楽しめるカスタムパーツとして、ラッピングを広められないか? と考えたのがスマイルキャンパスの代表の峯 健吾さんである。

 

「カーボンヘルメットが登場したときに、その軽さを損なわないようなイメージチェンジの方法は無いか? と考えて辿り着いたのがラッピングでした。ペイントのような重量の増加はありませんし、飽きたら簡単に剥がして、他のにも変更できます。モーターサイクルショーに出展して、ラッピングを施したバイク以上に反響があったのがヘルメットでした。それは我々の想像以上で、男性の来場者もさることながら女性の方々から高い関心を示されました。お洒落心のあるヘルメットを被りたいけど、既製品では満足できない、でもペイントとなると敷居が高い。だから半ば仕方なくプレーンな単色にしているのだそうです。その声に応えるカタチで製品化したのが、グラフィックを施したヘルメット用のラッピングフィルムです。各ヘルメット専用品も開発中ですが、現在は主に汎用品として開発しており、フィルム上のパーツは貼る場所の指定はありません。ですから同じラッピングフィルムを使っても、貼る位置を変えたりすることでオリジナリティを発揮することも可能なのです。施工するスペースもヘルメットならば、それが載る大きさがあれば十分です。ペイントのような溶剤の臭気もありませんから、ダイニングテーブルのような場所でも全く問題はありません。飽きたらば剥がして他の柄に変更することも容易です。ネイルを変えるよう名感覚で、ヘルメットのグラフィックを楽しんでもらえたらと思っています。女性ライダーだけで集まって“ヘルメットラッピング女子会”なんかも面白いでしょうね」

向かって左はプレーン、右はラッピングフィルムを施したヘルメット。ベースは同じカーボンヘルメットだが、印象は大きく異なる。

PICKUP PRODUCTS

ヘルメットならば特殊な技術は不要。
ラッピングフィルムの貼り方を見てみよう。

スマイルキャンパスからリリースされているヘルメット用のラッピングフィルムは、施工の簡単さが特色の一つだ。果たして本当にそうなのか? と疑問に思う方も少なくないだろう。ここでは実際にを貼っていく過程を中心に見てみよう。必要となる道具も、ホームセンターなどで入手可能な物ばかりであり、設備投資が少ないのも大きなポイントだ。今回作業をされた方は、実はラッピングフィルムを貼るのは初めて。それでも何ら特に苦労した様子は見られず、これならば経験の無い我々でも難しくはなさそう。スマイルキャンパスでは、ヘルメット用の汎用品以外にも、バイク1台丸ごとといった完全なオリジナルデザインでの受注も可能だ。

 

ヘルメット用のような小さな物から、クルマ全体に至るまで、パソコン上でデザインが行われている。

デザインされたデータはラッピングフィルムに出力される。使われているプリンターは、ラッピングフィルムの幅(約1300mm)に対応するため、想像以上に大きい。

ヘルメットの施工に使う道具。左上から時計回りに、布、アルコールスプレー、ヘアードライヤー、カッターナイフ、色鉛筆(白)、スキージ(ヘラ)、マスキングテープ。

作業前に、布にアルコールスプレーを吹き付けて、貼る場所の脱脂を行なう。油分があると、ラッピングフィルムの貼付力が弱まる。

ラッピングフィルムには、グラフィック部分だけが裏紙から剥がれるように、あらかかじめカットされているが、それよりも少し大きめに切り出す。これは、はさみを用いても良い。

貼る場所を決めるために、マスキングテープを用いて借り留め。

場所が決まったら、白の色鉛筆を用いてマーキング。

ラッピングフィルムを裏紙から剥がす。剥がした後に粘着面同士がくっつかない様に注意。

白の色鉛筆でマーキングしたラインに沿って、ラッピングフィルムを貼り付ける。

10全体を貼り終えたら、指を使ってラッピングフィルムをヘルメットに密着させる。空気が溜まり難い構造となっているため、指で擦る程度で十分である。

11指では擦りにくい部分は、スキージ等を用いて密着させる。なお、画像のスキージは市販品にシートへの傷防止用にフェルトが貼り付けてある。

12貼り終えたら、余分な部分をカッターナイフで切り落とす。汎用品として、少し大きめに作られているのだ。

13貼り終えた状態。他の場所にも施工する場合は、これまでの作業を繰り返す。全て終了したら、ヘルメットに付いた指紋はアルコールスプレーを塗布した布で拭いて落としておこう。

14Rのキツイ部分では、ドライヤーでラッピングフィルムを暖めて柔らかくすると伸びて貼りやすくなる。

15貼り付けたラッピングフィルムは、簡単に剥がすことが可能で、糊残りもほとんどない。

16一般家庭のリビングのような場所でも、作業は全く問題がない。仲間同士集まって、貼り合って、張り合うのも楽しいかもしれない。

17スマイルキャンパスでは、バイク1台丸ごとラッピングといった完全なオリジナルデザインでの受注や、オリジナルのキャラクターのデザインも可能。

18タンクのような3次曲面にもラッピングは可能だが、このような場所には、また貼るための高度な技術が必要。そのような難しい場所への施工も受け付けている。尚、現状ではキャンディーカラーのような色合いは、ラッピングフィルムでの再現の不得意分野となっている。

BRAND INFORMATION

スマイルキャンバス

住所/大阪府大阪市港区市岡4丁目5-12 3F
TEL/06-7894-0942
営業時間/9:00?18:00
定休日/土、日、祝日

二輪、四輪のラッピングカスタムに特化しており、デザイン制作から施工までを一括して受注している。全日本選手権を始めとしたレーシングマシンのデザインサポートも行っており、オリジナルのキャラクターやロゴデザインも得意分野。少量生産にも対応しており、ショップオリジナルブランドとして1個からも製作が可能。