
PEOのZERO POINT SHAFTは、手軽に交換できて確かな性能の変化を体感できると評判のアクスルシャフト。並外れたパフォーマンスの高さは、如何にして生み出されるものなのか? 開発者が設計思想を語り、プロフェッショナルライダーが走りの違いを解説。確かな技術力と、品質へのこだわりが満載のZERO POINT SHAFT。そのメカニズムと、ポテンシャルを究明してみよう。
左がPEO代表の水田信行さん。金属加工のプロフェッショナルで、その高い技術を活かしてZERO POINT SHAFTを開発。右は寺本自動車商会の寺本幸司さん。プロフェッショナルレーシングライダーとして活躍。内圧コントロールバルブT-REVの開発ライダーとしても知られる。
今、ライダーの間で大きな話題を呼んでいるパーツ。それがPEOのZERO POINT SHAFTだ。ZERO POINT SHAFTは、クロモリことクロームモリブデン鋼で製作されるアクスルシャフト。クロモリ製のアクスルシャフトは、珍しいパーツではないが、何故ZERO POINT SHAFTだけがこれほど高い評価を得ているのだろうか? PEO代表で、ZERO POINT SHAFTの開発者である水田信行さんに、開発の経緯と設計の狙いを聞いてみた。
「自分は、もともと金属加工を手がけていました。作っていたのはバイク用に比べてはるかに高い精度を求められる部品で、例えば新聞などを印刷する輪転機のパーツなどです。輪転機は1分間に2万回転ほど回り、2時間以上の連続運転させるのですが、それでも印刷がズレないような精度が求められます。そういったパーツと比べると、バイクのパーツは大雑把過ぎるように感じました。
アクスルシャフトはベアリングと組み合わせて使いますよね? 実は、日本製のベアリングの精度は非常に高く、素晴らしい品質の物なんです。ですが、アクスルシャフトの精度が低いと、ベアリング本来の性能が活かせない。シャフトが歪んでいるとベアリングの内側と外側の平行や適性なクリアランスがとれなくなり、大きなフリクションが生まれてしまいます。
全日本選手権や鈴鹿8耐に参戦している、水田さんが代表を務めるレーシングチーム Motorrad Rennsport。寺本さんは同チームのエースライダーだ。昨年の鈴鹿8耐では、完全なプライベートチームながら、17位完走という好成績を残している。
ですから、ZERO POINT SHAFTは精度を高め、ベアリングを理想の状態で回転させるためのパーツなんです。駆動系のフリクションが減ればパワーロスも減少しますし、効率が良いから燃費も上がる。スタート地点はそこです」。
ZERO POINT SHAFTは、ベアリングの性能を最大限に引き出すことで、走行時のロスを取り除くためのパーツであるわけだ。ユーザーの多くが口を揃える、取り回しの軽さなどの効果はそこから生み出されている。だが、メリットはそれだけではない。ハンドリングが向上すると絶賛されているのだ。その秘密を、レーシングライダー寺本幸司さんに語ってもらった。
「正直なところ計測機器で測るのでもなければ、フリクション低減を実感するのは難しいでしょう。自分でもキビシイです。(笑) ですが、操安性は誰にでも体感できるレベルで変わります。ブレーキングで車体の”しなり感”が、全然違いますから。走行中のバイクは、常に様々な荷重を受けています。車体のいろいろな場所が歪んだり、縮んだり伸びたりしているんです。この車体の”しなり”がライディングに悪影響を与えることがある。
ZERO POINT SHAFTのラインナップは膨大。対応車種はPEOのwebページの製品リストで確認できる。写真は、YZF-R1 ’15年~モデル対応品で、手前のフロントアクスル用が2万0000円、奥のリヤアクスル用が1万6500円。
分かりやすいのが、コーナー進入時にマシンをバンクさせながらブレーキングする時。怖さを感じることが多いですよね? これは、ブレーキングの荷重や遠心力など様々な方向からストレスがかかって、車体が歪むせいでステアリングが変に切れたりすることが原因のひとつです。
ZERO POINT SHAFTを装着すると車体が安定します。動きが鈍くなるのではなく、剛性が高いので歪みが抑えられてステアリング周りの動作が正確になるんです。サスペンションも安定しますから、路面追従性も上がるしブレーキコントロールもし易くなる。バイクが変な挙動をみせなくなるので、怖さがなくなる。マシンを信用して思い切り攻められるようになるんです。これは素晴らしいメリットです。
車体のしなりは、完全に取り去ることはできません。また、全くしならない車体も不都合が起きます。ZERO POINT SHAFTは、そのあたりのバランスが絶妙だと思います」。
PEOでは、全日本選手権や鈴鹿8耐などトップカテゴリーを戦うレーシングチームにZERO POINT SHAFTを供給。水田さん自身がレースの最前線に立ち、自ら収集したデータを即座に製品にフィードバックしているという。Peoのアクスルシャフトは常にアップデートが加えられ、進化し続けている。最高の技術を用いて作られる、最先端のアクスルシャフト。それがZERO POINT SHAFTなのだ。
一口にクロモリ鋼といっても様々な種類がある。ZERO POINT SHAFTの素材は、SCM435Hという鋼材が使用されている。クロモリ鋼は熱処理を加えることで特性が変わる。この熱処理を調質と呼ばれ、素材の特性は調質次第。PEOではアクスルシャフトの素材として、最適な特性となるように調質を行っているのだ。また、ZERO POINT SHAFTの表面処理は3層のメッキで仕上げられているが、ここにも秘密がある。ベアリングは他のパーツと組み合わせた時、設定された圧力がかからないと本来の性能が出せない。この圧力を予圧と呼ぶのだが、正確な予圧を発生させるポイントはベアリングとアクスルシャフトのクリアランスにある。ZERO POINT SHAFTは0.1ミクロン単位で厚みを設定できる特殊なメッキを用いて、超精密なクリアランス管理を行っているのだ。