
オーヴァーレーシングのスイングアーム開発の歴史は古い。遡ること30年、1980年代後半のことだ。当時、ほとんどのバイクのスイングアームはスチール製であったが、レーシングマシンや一部のスーパースポーツモデルはアルミ製スイングアームを採用していた。
積極的にレース活動を行ってきたオーヴァーレーシングでは、既にアルミ製スイングアームの優位性を確信しており、ストリートカスタムでの、そのメリットを活かすべくアルミ製スイングアームの製品化に至ったというわけだ。
スイングアームをはじめ、数々のオーヴァーレーシング製スペシャルパーツを装着したZ900RS。セパレートハンドルやマフラーなど、注目のパーツ満載だ。詳しくはZ900RS専用パーツ特集ページでチエック。
当初はビッグバイク向けの製品が中心だったが、様々なモデル向けにラインナップを拡大。スイングアームの構造や素材も、年を重ねることに進化を続けてきた。アルミ製スイングアームがスチール製に勝る最大のポイントは軽さだ。同じ強度であれば圧倒的に軽く作ることができる。バネ下重量の軽量化は、足周りの高性能化に絶大な効果をもたらす。原理については省くが、体感できる一番の効果は路面追従性の向上。バイクが路面と接するのはタイヤの接地面のみ。その面積は名刺2枚分に満たないと言われる。そのわずかな面積を常に最大限に利用できるとしたら? そう考えれば効果を想像するのはたやすいだろう。
また、素材が軽量なため、同じ重量で製作するなら強度や剛性を格段に上げることができる。高荷重を強いられるスポーツライディングの世界では、見逃せないメリットなのだ。
今回試乗したのは、大人気のネイキッドモデルZ900RS。純正のスイングアームも設計が最新なだけあり、素材にアルミが使用されている。実は単純に重量だけを比べるのなら、オーヴァーレーシング製とも大差ないそうだ。だが、オーヴァーレーシングのスイングアームには強固なスタビライザーが追加され、強度と剛性が圧倒的に高められているのだ。
違いは、走ってみればすぐにわかる。高速域での急加速時、高速巡航時の直進安定性が明らかに向上している。ワインディングでは、リアタイヤが路面に食いついている感触が伝わってくる。リアの安定感が強いので、安心感が高い。だから、思い切った攻めの走りができる。これは楽しい!
また、ロードインフォメーションが格段に多いのもポイントが高い。だが、ゴツゴツと固い感触ではなく、路面状況は正確に把握できるがショック自体は小さいというもの。こうした特性は、独自の目の字断面構造のメインパイプが持つ、“しなり”が生み出すものなのだろう。実に楽しいテストライドだった。
Z900RSに装着されているスイングアームはTYPE-11(Z900RS用 価格19万5,480円・税込)、オーヴァーレーシング製スイングアームの最新スペックを誇るモデルだ。メインパイプには、ビッグバイクの大パワーにも対応する、高剛性な目の字断面構造を採用。溶接しても素材の強度が落ちにくい、7N01アルミ材を使用している。
チェーン引きは、整備性に優れ正確なアライメント調整が可能な“コの字”型チェーン引きを採用。ブロックはスタビライザーの根元と一体構造として、補強効果向上を狙っている。
ピポットのベアリングは作動性に優れるニードルローラーベアリングとボールベアリングを採用。
ピポットパイプにオーヴァーレーシングのロゴが刻まれている。車両に装着してしまえば、そうそう目にする部分ではないのだが、こうしたこだわりが、カスタムパーツには嬉しいところ。
TYPE-11と同じ目の字断面構造のメインパイプを使用するTYPE-10(Z900RS用 価格19万5,480円・税込)。スタビライザーはオーセンティックな後付け構造となる。
TYPE-11、TYPE-10と基本設計を同じくしながら、スタビライザーを持たず軽量さを活かしたTYPE-9(Z900RS用 価格15万3,360円・税込)。シンプルなスタイリングも魅力だ。
オーヴァーレーシングのスイングアームは、全て車種別専用のボルトオン設計。装着するマシンに最適なスペックを考えて作られており、車種により設定されるタイプは異なる。ここでは。各タイプの特徴を紹介する。
写真一番左はTYPE-1、2、3のメインパイプに使用される、60×40mmの角パイプ。その隣はTYPE-4、5で使用される45×35mmの楕円パイプ。その右側の楕円パイプはTYPE-6用の60×40mm極太楕円パイプ。中央にクロス状の補強が入る「田の字」断面構造を採用。一番右がTYPE7、8、9、10、11用の80×40mmの「目の字」断面パイプ。強度と剛性、適度な“しなり”を併せ持つ最新スペックの素材だ。これらのパイプは、全てオーヴァーレーシングのオリジナル。金属メーカーにオーダーして作られた、スペシャルな素材なのだ。
チェーン引きブロックの形状も、使用用途に合わせて複数の異なる形状が用意される。「コの字」タイプのチェーン引きを採用したTYPE-9、10用。左はチェーン引きのブロックとスタビライザーの根元を一体化し剛性を向上させたTYPE-11専用品。右はTYPE-4、5、6、7、8用、コンベンショナルなOWタイプのチェーン引き。TYPE-1、2、3は純正タイプのチェーン引きを採用している。パーツは共通化した方が、コスト面では有利になる。だが、スイングアームを装着するバイクに最適な機能を考えれば、自ずと形は変わってくる。オーヴァーレーシングの物作りは機能優先、性能最重視。コスト問題での妥協は許さないのだ。
オーヴァーレーシング製スイングアームのスタンダードモデルであるTYPE-1。1970~1980年代の車両への装着を前提に、剛性バランスを設定している。対応モデルは旧車中心。スタビライザーを追加したものがTYPE-2。
TYPE-2のチェーン引きを、高強度で正確なアライメント調整が可能なOWタイプにモディファイしたのがTYPE-3。対応モデルは旧車が中心となる。
オーヴァーレーシングらしい楕円パイプを使用し、特徴的なトラス構造を持たせたTYPE-4。ピポット部分のボックスは、オイルキャッチタンク機能を持ち、剛性メンバとしても活用。1990年代~現代までのビッグネイキッドなどに対応。ワイドホイール仕様のTYPE-5もラインナップ。
TYPE-4、5と同じコンセプトのトラス構造を持つが、パイプ径を拡大して剛性と強度を大幅にアップしたTYPE-6。スリックタイヤ装着までを視野に入れた、ネイキッドレース対応パーツ。
オーヴァーレーシング製スイングアームを象徴する目の字断面構造パイプを初採用したTYPE-7。80×40mmの極太パイプが、高い強度と剛性を実現。現代のビッグネイキッドモデルにマッチしたスペック。
TYPE-7にスタビライザーを追加したのがTYPE-8。ハイパワーなカスタムマシンに対応する、タフなスイングアームだ。
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