バイクの印象を大きく変える、エンジンの特性。排気量や気筒数、吸排気系などさまざまな要素が絡んでいくが、快調を維持するには、昔から言われている「よい燃料」「よい火花」「よい圧縮」に気を遣うことが今でも最良の方法だ。カスタム/チューニングの際にはエンジンを組み立てる時にこうしたことに配慮して作ればいい。だが、組み上がった後にできること、STDでもできることは、燃料と火花。燃料は今の日本、一般向けならば全国どこでもほぼ同じものが買えるから、新しいものを常に入れていけばいい。
そうなると残るカギは、火花=点火だ。ここにオカダプロジェクツが2014年10月から送り出したのが、「プラズマVプラス」という追加電装ユニット。ETC車載器の半分以下、横69.5×縦39×厚さ23.6mmという同系で世界最小レベルのサイズに本体ユニットをコンパクト化し、配線も点火(イグニッション)コイルへのプラス配線に割り込ませるだけ。電工ペンチでギボシをきちんとつぶせて、テスターでプラスマイナスが分かるならば自分でも作業が出来る簡便さも持っている。
このプラズマVプラスは、エンジンが作り出して点火のために使う電圧を高めて、安定させるアイテムだ。前者は12V車で13.5V近辺の電圧を15または16Vに高めて点火コイルへ送り込む。すると当然ながら点火コイルでプラグに点火するための2次電圧(2~3万V)も高まり、強い火花が飛ばせる。後者はプラズマVプラスを使うことで供給電圧が凹凸なく安定し、2次電圧の立ち上がり速度が速まる。立ち上がりが早まれば、エンジン設計時に想定された理想の点火タイミングに近づき、設計性能により近いパワーが期待できる。
CB400Fに装着して走ってみると、これまでどうしてもぬぐい去れなかった、発進時のトルクの細さが解消された印象。“付けたから”というプラシーボ効果か? とも当初は思ったが、装着日は装着前後ともゴーストップを繰り返すことが多かった。装着後に何度も行った発進でも、ガソリンスタンドに入るためのターンでも、スッと前に出る感覚が高まっていたし、Uターンも楽になっているから、きちんと燃料がパワーになっている、そう思える。
今回の装着対象車はCB400F。取り付けはオカダプロジェクツの伊藤和幸さん(上)に依頼した。点火コイルの位置と配線が分かればプラズマVプラスの取り付け自体は難しくはない
スリップオンEXから聞こえてくる2気筒の排気音も、ちょっと整流されてなだらかになった感じがある。もちろんひとつひとつの排気音なんて聞き分けられはしないが、全体としてそう聞こえるということは、燃焼に調子の良否が少なく安定しているのではないか。つまり電圧が強い上に、発生電圧そのままでなく、整流して変動が抑えられた結果だろう。排気音同様に、パワーの出方も滑らかになった感じもした。
カスタム/チューニング系パーツの多くは、マフラーや足まわりなど見た目が変わることでフィーリング変化も分かりやすい。一方で電気系のように見えないところは、実効果があるものを見いだすことも難しいし、見た目が変わらない難しさもある。
でもプラズマVプラスは、オカダプロジェクツが長年販売してきた電流安定/強化アイテムのプラズマブースターで培った2/4輪含めてのノウハウと実績がある。バイクの外観を変えないままに性能を高めたいという向きにも合っているだろう。
気にしてほしいのは、火花強化にともなって点火プラグほか点火系の消耗が少し早まること。でもこれは、まめにメンテナンスを行うライダーなら気にならないだろう。点火強化の恩恵をぜひ受けてほしい、そう思わせる一品だ。
プラズマVプラスがどんなことをしているかは、この3つの電圧グラフを見ると分かりやすい
STD時のイグニッション入力電圧。縦軸は電圧で、横軸は時間。エンジンが発生する電力ほぼそのままで、電圧の変動(細かいギザギザ)が大きく、ノイズ(ところどころにある大きな振れで見える)も発生しているのが分かる
プラズマVプラス装着時のイグニッション入力電圧。①に比べて小刻みな振れはなくなり=電圧が安定し、ノイズもなくなっている。さらに電圧自体も高く(グラフの上側に)なっている
2次電圧立ち上がり比較。黒はSTD、赤はプラズマVプラス装着時のもので、2次電圧立ち上がり時はグラフが下降しているところ。これが速いとそれだけプラグ電極間に早く電流を流せるため、理想に近い=設計値に近い点火タイミングが得られることになる
開発時や機種適合検討時はオシロスコープや電流計などでも波形や電流を確認。プラズマVプラスは5A以下適合で、オカダプロジェクツが展開するプラズマブースターとの併用も問題なく行える
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